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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

死にたがり女と、振り回される男。

作者: 沖田 楽十

 その女は、突発的に、ぶっ飛んだ事をしようとする。



「!? っ……」


「アハハッ! なんって、表情かお


「………お前なっ! 危うく死に--」

「死なないよ」



 だって貴方が居るからね? と、ニヘラ、という効果音が合いそうな憎たらしい笑みを浮かべて、馬鹿女は言った。



「………チッ…」



 じゃあ俺が居なかったら如何なってたと思うんだ!? とか、急に3階の窓から飛び降りようとすんなっ!!! とか、言いたい事が山程あったが、どれも言葉にならない。


 こんな煩わしいやり取りの始まりもそうだった。


 電車が間もなく通り過ぎる事をしらせる、耳障りな警告音とともに降りようとする遮断桿しゃだんかんよりも先に、線路に飛び出そうとする馬鹿女の身体を咄嗟に抱き留め押さえ付けたと同時に、遮断桿が目の前へと降り、電車が流れる様に走行しているを見ながら、ホッと胸を撫で下ろす。



『馬鹿っ!!! なにやってんだ、てめぇは! 死にてぇのか!? 』


『……助けるんだ…』


『はあぁ!?!! 』


『………うん。採用』


『……………は…? 』



 いや、なんの? ってか、注意してる途中なんですけど…の言葉は無理矢理飲み込むしかなかった。


 そんなわけで、こういった死にたがりの行為に走る彼女を止めているのは日常茶飯事なのだが、それも今日までだ。



「………辞める? 」


「あぁ。職場ここ辞めるから、もう、俺を困らせたみたいに、周りを困らせるなよ? 」


「っ……なんで…? 」


「あー……漸く結婚までこぎつけた彼女とのこれからがあるから、此処より給料の良い所に転職するんだ」


「! 彼女……」



 俺には、数年前から付き合ってる彼女がいる。現在いま、目の前にいる馬鹿女よりは短い付き合いだが、何回目かのデートの時、このコと結婚したいなぁ、と思ってからは、この時を待ってたぐらいにベタ惚れな女性だ。

 本人には、恥ずかしくて言えない事だが…。



「………彼女いたのに、私に抱き付いたのね? 」



 ハッ、と馬鹿にした様に、鼻で笑う馬鹿女に、カチンときた。

 俺がいつ、お前に抱き付いたってよ!? と文句を言いたかったが、それを訊いたら面倒くさい事になりそうな気がして、話題を変えようと頭をフル回転させる。…が、良い話題が思い付かず、コイツから離れる事が一番だと考え、サッサと会話を終了する事にした。



「じゃ……まっ…そーゆう事だから」



 言って、馬鹿女に背を向けた直後、「責任、取ってよ…」と人聞きの悪い事を言われ、思わず振り返った。

 ……それが、悪かった。


 ジッと、俺を見つめるそいつの顔は、瞳を潤ませてて、頬は紅く色付いてて、まるでアレを…じゃなくて!!!


 ……駄目だ。


 早く、此処から立ち去れ!

 馬鹿女に耳を傾けるなッ!!!


 脳内で警告する俺の心の声が響き渡る。

 でも、床に足が縫い付けられたかの様に、動かない。



「………貴方の前でだけだよ? あんな、ヤバい行動に出るの」


「っっ…へっ…へえぇ…。じゃあ、第二の俺が出る前に、注意して正解だったな? 」



 早く、足を動かして、その場から離れねぇと……。



「はぐらかさないでよっっっ!!!!! 」

「!?」



 急な怒鳴り声に、ビクッと肩が跳ね上がる。



「っ………おっ…おい? 」


「私は、貴方の事をとてつもなく、気に入ってる。これから先、そういった男性ひとと出会える自信は、ない! 」


「はっ…ははっ……ちゃ…ちゃんと、周りを見てねぇからじゃ、ねぇの? 」



 早く…早く……



「あの時…如何して、私を助けたの? 」

「!」


「私を助けた……私の事、好きだったからじゃないの? 」


「………は……はあぁ?!?!! 」



 あの時って、遮断桿での件だよな?

 ってか、さっきの抱き付いたって、あの状況の事かよ!?

 あれで抱き留めなきゃ、お前、ほんっっとうに死ぬ所だったんだぞ!?

 それを、俺がお前の事が好きとか……どっからそーゆう発想に行き着くんだよ!?



「……お前…恋愛経験は? 」


「…レディにそんな事聞くなんて、失礼だと思わない?」


「………じゃあ、恋愛経験がなかったか、もしくは今まで良くなかったか判らねぇが、あーゆう場面で、自分しか助ける奴が居なくて、且つ助けられる自信があるなら、大抵の男は助ける」


「それは…貴方の意見よね? 助けない奴もいるわ」


「………あぁ、そうだ。一般的な男の意見って言い方だが、実際は俺偏見の、男のイメージと俺の意見。だから、お前に気を持たせる言動だと勘違いさせた事は詫びる、すまん。でも、俺が好きなのは彼女だけで、結婚する予定だから」



 此処でキッパリ断らなかったら、俺や、俺に色目を使って落とそうとする馬鹿女の為にならない気がした。



「でも、貴方は助けた。だから--」

「くどいッ!!! 俺にもし彼女が居ない状態であの時、俺以外にお前の事を助ける奴が居なかったら、やっぱり助けてたし、彼女の事関係なく、これからも、俺がお前の事を“女”として好きになる事は、ないッ! 」


「………っ」



 心臓が、震える。

 言葉にした途端、馬鹿女を刺激し過ぎた事に気付いたからだ。


 此処で、死んでやる! ってなったら…?

 いや、もしくは、貴方が手に入らないなら貴方を殺して私も死ぬ! って俺まで道連れにされたら…? と考えると、恐怖におののく。

 しかし、先程の色っぽい目元は何処へやら。虚な目で俺を見てるのか如何か焦点が定まらない双眼を此方に向けた侭、馬鹿女の瞳からは、ツーっと涙が流れ、「そう…」と、絞り出した様な声で、それだけが返ってきた。


 俺は、気付いたら逃げ出す様にその場から立ち去って、愛する彼女へと連絡を入れ、これから会いたい、と告げ、彼女の返事も待たずに電話を切る。


 馬鹿女の涙に、思わず手を伸ばしそうになった。

 抱き締めそうになった。


 ……でも、其処で抱き締めたら終わりだって、理性の俺がささやいて、踵を返して、このモヤモヤする気持ちを消したくて、愛する彼女の元へと急ぐ。

 早く、この気持ちの悪い感情を、消す為に…。




【死にたがり女と、振り回される男。】


 同情を誘うのが上手い女と、情にほだされ、本命じゃないのに、前述の女と一緒に時間を長く過ごしたが為に、曖昧な関係を続けてしまった男の、代償と罪悪感の話。











後書き

絶対共感出来ない!!!…程ではないケド、恋の応援は出来ないかもしれないなぁ…の女性をメインヒロインにした内容を、初めて書いた気がします。。(←⁉️)

……いや…昔、一度だけ書いた気も……うーん…( ;´Д`)(←………。)


書き始めた当初は、二人ともくっ付くの!?くっ付かないの!?とモヤモヤさせる、純愛っぽいのにするつもりだったのに、何故こうなった∑(゜Д゜)(←……ಠ_ಠ)




P.S

明日と明後日の猫の日も、小説をあげる予定です(`・ω・´)


明日は、私が推しになり易いヒロインっぽく仕上がってればいいなぁ、で、、

明後日は過去にあげた猫に関する短めの話

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