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ミラクルジョッキー  作者: 秋山如雪
第15章 プリンセスの戦い
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第60話 無敗の連勝

 ミラクルプリンセスにとって、次の大レースを決めるための、登竜門でもあるレース、それは4月末に行われる、スイートピーステークスに決まった。


 このレースは、いわゆる「リステッド競争」と呼ばれるレースで、2着までに優駿牝馬オークスの優先出走権が与えられる。


 私個人としては、ミラクルプリンセスの実力は想像以上にあると見ていたから、どちらかというと、その前に行われる、オークスのトライアルレース、フローラステークス(GⅡ)に出走することを望んでいたが、陣営の玉縄厩舎はそう判断せずに、慎重に、強敵を避けるように、スイートピーステークスを選んでいた。


 2046年4月22日(日)、東京競馬場、11R(レース)、芝1800メートル、スイートピーステークス。


 天候は晴れで、馬場は「良」。


 ここの競馬場では何度も戦っているし、500メートルを越える長い直線や高低差2メートルはある急坂があるのも熟知している。


 唯一、不安なのは、本番のオークスと同じ競馬場とはいえ、距離が全然違うことくらいだった。


 つまり、オークスの距離は2400メートルと長い。おまけにミラクルプリンセスは、デビュー以来、一度も2000メートル以上の距離を走っていない。

 仮にここに勝ったとしても、いきなり次が2400メートルはハードルが高い、と見ていた。


 だが、競馬ファンからの期待は高いのか、単勝2.0倍の1番人気に押されていた。2番人気の馬は、単勝7.2倍だったので圧倒的だ。

 頭数は、16頭立て。


 4枠7番に入った。


 リステッド競争とはいえ、どちらかというと注目を浴びにくい、静かな出発となった。


 スタートからは、中団を追走し、そのまま進行。やがて、第3コーナー、つまり最終コーナーから進出。

 最後の長い直線に入る。


 私は、彼女に鞭を打ち、大外から一気に追い上げた。


 実際、反応はよく、するすると馬群を抜け出し、ハナに立つ。後は末脚を使い、大外からまとめて他馬をすべて差し切り、2着に半馬身差をつけて勝っていた。


 これで、デビューの新馬戦、1勝クラスに続き、無傷の3連勝となっていた。


 レース後、玉縄調教師に報告に行く。


「想像以上に、強いですね。オークスでも、勝てる気がしてきました」

 私のその自信に満ちたような発言が、予想外だったのか、玉縄調教師は目を丸くしていた。


「マジでか。俺はてっきり、オークスは参戦するのが目的やろ、くらいに思っとったわ」

 どうやら、この辺りが、乗り役、つまり騎手と、調教師の認識のズレになっていたようだったが、彼もまた私が詳しく、彼女の強さを説明すると、納得してくれるのだった。


「ほんなら、本戦も期待してええんやな?」

「はい」


 かつての、自信がなかった私では、恐らく言えなかった一言だっただろう。


 だが、今の私にはこの「自信」と、そして、「ミラクルフライトの仔を勝たせる」という目的意識が強く働いていた。その上で、ミラクルプリンセスの強さも加味している。


 勝てる、と踏んでいた。


 そして、牝馬クラシック戦線において、私にとって初めての大勝負が始まる。

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