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龍神様はムべの香りがお好き   作者: 鈴音あき
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7

敵に見つかったとき、その生き物は後足だけで立っているので前足を器用に石を摑んで襲ってきた敵に向かって投げつけていた。


飛んできた硬い石が獣の身体にぶつかって思わぬ攻撃に驚いて逃げていく。


また別の日にも襲われたが、今度は石を掴んだまま相手の顔に何度もぶつけて撃退して、生き延びることができた。


龍はなんて面白い行動をするのだろうかと驚いた。


今まで見ていた獣たちは攻撃は噛みついたり引っ掻いたりして獲物を獲っていたが、この不思議生き物は道具を使って反撃するのだ。


もっと見ていようと思った。



そうか、あの生き物が後足だけで動くのは前足でいつでも石や木の枝で反撃出来るようにしているのだろう、と気づいた。


二本足で歩く者を見かける回数が少しずつ増えていく。


龍は時間の流れを感じることがないので、どれだけの年月が経つのか数えることはなかった。


ムベの花が何度も咲き、実が生り、虫や鳥たちが食べにやって来て、龍の大好きな香りに包まれ、そのたびに嬉しくなった龍は気持ちのままに雨を降らせていた。



あの生き物は、何処かに行ってしまう者がいたり、やってくる者がいる。


ずっとこの湖の畔で暮らす者もいる。


老いて死んでいく者、新たに生まれてくる者、どんどん目まぐるしく世代交替が繰り返される。


それはどの生き物とも同じなのだが。


花が咲けば頭や身体に巻いた毛皮に色とりどりの花をくっつけていた。


汚れたら毛皮を脱いで別の毛皮を身体に巻いた。


湖が凍る季節にはいくつもの毛皮を繋げて巻き付けていた。


龍には本当に不思議なのだ。


あの生き物には何故毛皮が無いのだろうか。


白い毛皮や黒の毛皮を着けたり外したりしているのを眺めているのも楽しい。


少しずつ小さな群が増えていくその者たちは、洞穴に隠れるように住み着いていたのだが、数が増えて洞穴に入りきらなくなった。

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