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カンノが目に見えない何かと交流していることは群の皆が知っている。
目が見えないのに何がどこにあって誰がそこにいるのかがわかっている。
どこを歩いても躓くこともなければ、誰が何を持っているのかも知っている。
やっぱり巫女様は特別な力があるのだと、敬う。
カンノが山から戻ったのを見届けると龍は雨を降らせた。
恵みの雨。
群ではもう雨が降ることを知らされていたので、カンノが戻るまでに濡れては困る物は全て片付けられていた。
「巫女様ー。どうして雨が降るってわかるの?」
雨が降るのを皆に教えに先に山行ってくれた子供が、まだ止んでいないのにカンノの住まいに聞きに来た。
「ユヒ。外はまだ雨でしょう。少し濡れてますね。」
気配を感じて、物音と声で誰が来たのかカンノはすぐに分かった。
「ちょっとだけだから大丈夫。巫女様の所に行ってこれを届けてって。木の実だよ。はい、どうぞ」
ユヒと呼ばれた子供は、鹿の皮をなめして作った袋にいろんな種類の木の実を入れて持って来てくれた。
「ありがとう。カカさまにいつもありがとうございますと伝えてくださいね」
カンノは微笑んで受け取り、ユヒの頭を撫でた。
「うん。わかった」
ユヒはニコリと笑顔になり、家族の役に立つ喜びを感じている。
「それでね、巫女様はどうしていつも雨が降るってわかるの?」
不思議そうに尋ねた。
「ユヒは何でも知りたがるのですね。ふふ」
「うん。だって、不思議なんだもん」
「教えてあげてもいいですよ」
「本当?」
ユヒの目がキラリと輝いた。
「はい。でも話しても分からないかもしれないですよ?それでも良いですか?」
「うん!」
大きく頷いて満面の笑みでカンノを見つめる。
「では、座ってお話しましょう」