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「巫女さまー」
以前、ムベの実を供えた子供がカンノに呼びかけた。
鬱蒼と茂る木立の間でカンノが一人佇んでいた。
「どうしましたか?」
「捜しましたー。また山の中に入ってる。よく躓きませんね」
地面には木々の根が張って足場が悪いのだが。
「大丈夫ですよ。それで、何か私に用事ですか?」
「はい!頭が呼んでます」
「分かりました。そろそろ戻らねばなりません。直に雨が降りますからね」
「え、雨?」
木漏れ日の隙間から見てみるが、雲は高く雨が降りそうには見えない。
「先に帰って下さい。濡れたら困るものがあれば早く仕舞うように皆さんに教えてあげてください」
「はーい、分かりました!」
村の中で良いことがあったのか、龍が恵みの雨を降らせたいとカンノに報せたのだ。