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龍神様はムべの香りがお好き   作者: 鈴音あき
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人の中から、火に近づこうとする者が出てきた。


そして獲ってきた自分の食べる分の骨付き肉を手に持ち炎に近づけた。


いつもはそのまま齧りついているのに、その人は猪の骨に着いている肉を炎で炙っている。


何故そんなことをしているのだろうか、龍は湖から顔を半分だけ出してじっと見守った。


火に近づけて暫くすると、肉が焼け、肉についている油が溶けて滴り落ち、その油が炎の中に入ると火が大きくなった。


大きくなった炎に皆驚き、驚いた分だけ炎から後退る。


火が大きくなると人も熱いのか、飛び退いている者もいた。


猪肉を持って火に炙っていた者は平気な顔で離れない。


また炎が落ち着き元の大きさに戻ると、人は自分が安全だと思う元の距離まで戻ってきた。


若しくは更に近づく者もいる。


龍は湖の中から、やはり自分だけでなく人も火が熱い恐いと感じるのだと分かった。


そしてその熱さや怖さにある程度の経験をすると慣れる生き物だと理解した。


龍は湖から出てきて、山の中腹あたりから微かに漂ってきたムゲの花の香を楽しんでからまた湖の中に潜り込み、また暫くしたら人の様子を見てみようと考え休んだ。



薄く割った石で器用に獲物の皮を剥いでいく者がいた。


そして皮、骨、肉に分けていき、どんどんと肉が小さく剞まれていく。


切られた肉は人の拳くらいの大きさにされたが、狩った獲物が大きな牡鹿だったのでたくさんの肉の塊が出来た。


今度は何が始まるのか、湖から出てきた龍は目が離せない。


人の群れの中に入っていき、肉を切っている男のすぐ横まで近づいた。


「焼いて食ってみよう。火に近づけたらいい匂いなんだ。きっと美味い」


火の近くにいた大人の男が、木の枝を削り肉に刺している。


「わしは干した肉でも充分に美味いのだがな。ほれ、こんな感じで良いか?」


枝に刺した肉を、焼いて食うのだと言った男に渡してやりながら保存していた干し肉を齧った。

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