06
「カズヤちゃん。お疲れさん。」
ほんと今回の戦いは疲れたゼ。
「ただいまです。」
「こ、今度、指名するから・・・」
そう言って、ギャルは足早に去っていく。
「あらっ?また指名のお約束?」
「無理してない?大丈夫?」
何が??
まあ、こみ上げてくる妄想との葛藤が疲れるが・・・
「大丈夫ですよ。」
「さすがカズヤさんっ!」
いや、君らとは今日がほぼ初顔合わせみたいなもんなんだが・・・
A君よ。いや、B君だっけ?
「僕は、ああいうタイプの女性は特に苦手で、会話が弾まないんですよね。」
C君か、いや、B君か?
お前、ボーイだろ。頑張れよ。
うん。わかってる。俺もだ。
「繋ぎの時ってどうしても顔に出ちゃうんですよね・・・」
「カズヤさんは、繋ぎ経験ありますか?」
繋ぎ・・・
恐らく手を繋ぐ事を言っているのだろうが・・・
そういや、この3人は手を繋ぐまではOKとか言ってたような?
ここは素直に言った方がいいのだろうか・・・?
「ま、まあ一応、何度かは・・・あるかな?」
「おおーっ!」
三つ子かっ!
息ぴったりだな、こいつら!
「そうなのっ!! じゃあ次から繋ぎまでOKって事でいいかしら?」
「べ、別に構いませんよ」
「やったーっ!!」
そんなに喜ぶ事なのだろうか・・・
「そんなに嬉しい事なんですか?」
「当たり前でしょっ!!」
「他で繋まで許してるとこ何て殆ど無いんだからっ!」
ここだけかよ・・・
違法?とかじゃないよね?
「そ、そうなんですね。」
「それでは、僕らはこれで失礼します!」
だから、三つ子かっ!
って、えっ?? もう帰るの??
しかも、3人一緒に?
「お疲れさまぁ~」
「お、お疲れ様です・・・」
三つ子は帰った。
「え、えーっと・・・3人はもう帰るんですか?」
「ええ、あの子達は、繋ぎをする代わりに1日一人までって約束だからね」
1日一人って・・・よくやってこれたなこの店は・・・
「いつもなら、ここで閉店にする所なんだけどー・・・」
いつも午前中で終わりだったのかよー・・・
この店の経営状態が心配でしゃーない・・・
「カズヤちゃん、まだ行けるかしら?」
おいっ!
俺の事心配してたんじゃなかったのかよっ!
ま、まあ別に、大丈夫だけど・・・
「大丈夫ですよ。」
「今はまだ客が来てないから、それまでゆっくり休んでてね。」
せっかくの機会だから、現在の状況をちょっと整理してみるか。
まず、男・・・何か知らんが女性に触れられるのを極端に嫌がってる感じだ。
男は将来結婚するであろう女性とだけ愛し合うみたいな事を言ってたような。
だから結婚するまでは他の女性と接触をしたがらない、と・・・
しかし、若い子とかは、お金の為に仕方なく手を繋ぐ位はする・・・と・・・?
我慢したら普通に手を繋ぐ位はできるってことか?
他の殆どの店では手を繋ぐのはNGみたいな事も言ってた気もするが。
結局の所、何かよくわからんな。
そして、女性は・・・もっとよくわからんな・・・
何か以前と、あんま変わってないような気もするが。
積極的ってわけでもなさそうだし、男は容姿は関係ないとも言ってたし。
しかし、それって、あのマスター基準なのでは?とも思うし。
でも今の所、こんなおっさんでも手を握っても嫌がられないし。
それどころか、ちょっと嬉しそうに感じたし。
まあ・・・まだ二人だけだからサンプル不足は否めないが。
いや、ちょっと待てよ・・・
そう言えば男が女との接触を拒むって話はこの店の人にしか聞いてないのでは?
しかし、他の店では云々って話もあったし・・・
いや、しかし、それにしても・・・
「ねぇ~」
うわっ! なっ、なんだいきなり。
「ど、どうしました?」
「さっきから、ずっと黙り込んじゃってたから、どうしちゃったのかって思ってね。」
「いや、ちょっと、考え事を・・・」
「なぁ~に~、あたしで良ければ、いくらでも相談に乗るわよ?」
う~む・・・当てにはならんが、一応聞いてみるか。
「お、男にとって、女性ってどんな存在なんですかね?」
「敵よっ」
はい。当てになりませんでした。
うん、これはもうアレだな、知り合いも居なくなった感じだし、聞く相手がいない・・・
仕方ない、この件は徐々に・・・
「あっ、お客が来たみたいよ?」
まあ、来るよなあ・・・
しかし、デートするだけと聞いて安請け合いしたが、中々どうして・・・
この仕事は話術が巧みな人や話題が豊富な人じゃないとダメなのでは?
かと言って、他にすぐ出来そうな仕事も、住む所もなかったし・・・
やはり、当面はここで頑張るしか・・・
「じゃあ、カズヤちゃんお願いね。」
「は、はい。」
こうして、まだ見ぬ3人目の客とデートする事になる。