04
そして次の日、出勤。
昨日は軽く挨拶をする程度だったので改めて自己紹介。
マスターと若い男が3名か・・・少なっ!
ちなみに、この店では店員の男を一応ボーイと言うらしいが
客の呼び方は特に無いらしい。ここでボーイと言ってる人もいないが・・・
ここは小さい店なので、その辺は結構曖昧っぽい。
「それじゃ、カズヤちゃん、改めて自己紹介よろしくね。」
「今日から正式に働く事になったカズヤです。」
「至らぬ点は多々ありますが、宜しくお願いします。」
「こちらこそ、宜しくお願いします。」
ボーイ3名が同時に挨拶をした。
若いのに見た目通り礼儀正しい。
もっとチャラいのを想像していたが、
何か「チュィーッス」とか言いそうな・・・
「あたしは、この店のマスターね。あなた達も自己紹介して。」
3人が順番に挨拶をした。
礼儀正しい子達なので人間関係は問題なさそうだ。
昨日は何も聞けなかったが、一応ルール等の説明は聞いておこう。
「えっと、ここでのルールとかあったら教えて下さい。」
「特に無いわね。昨日の通りよ。」
えぇー。無いのかよぉ・・・
ダメだ、マスターは当てにならん。ならばここは・・・
「で、では、先輩の方々にボーイとしてのアドバイスとかあればご教示ください。」
「昨日は初日にもかかわらず、指名を取るほどの腕前と聞きました。カズヤさんなら大丈夫です!」
いやいや、昨日はたまたま共通の話題があっただけだし・・・
えーっと、彼の名前は確か・・・よしっ!彼をA君と名付けよう!
「それとカズヤさん。僕たちに敬語は不要ですよ。」
と、B君が言う。
ならば次はC君か!
「僕たちもカズヤさんを見て勉強させて頂きます!」
やっぱりC君きたーっ!!
何なの、この子達ったら・・・どんだけ評価高いの俺っ!
無様を晒して恥をかきそうで、不安しかない・・・
「あらっ?お客さんがきたわ」
早っ!!
午前中に作戦会議したかったのにー・・・
とにかく俺の出番が来るまで、何とか有益な情報を聞き出さねば・・・
「ねぇー、あなた達、今日予約ある子いるかしら?」
3人しかいないんだから把握しとけよっ!
適当かっ!
「はいっ、あります!」
3人が同時に言う。
この辺はライバル店がめちゃ多いのに3人とも予約ありか・・・
ふっ・・・なかなかやりおるわ。
ん?・・・
3人共、予約・・・あり・・・だと?・・・・
まさか・・・いや・・・そんな・・・馬鹿な事が・・・
「カズヤちゃ~ん、お客様よ~」
はぅぁ・・・
やっぱりかーい!
全く心の準備が出来ていない・・・
仕方ない・・・ここは相手を見てから作戦を立てるとするか・・・
「はいっ、只今参ります。」
足早に向かう。
「オプ無しの120分コースね。」
「わかりました。」
返事をしてからゆっくりと客を見た。
・・・うそ・・・だろ・・・
・・・これは・・・ヤバイ・・・ヤバすぎる・・・
俺はこの生物を知っている・・・
いや、正確には、存在を知っている、が正しい。
この生物は、こちらのあらゆる能力を無効化する能力 アビリティーインバリッド を保有する史上最強の生物。
生後間もない子供が魔王に挑むようなもの・・・
2人目の客がラスボスとか・・・俺の命運も尽きたか・・・
母上、今まで育ててくれてありがとう・・・
「マジちょーウケるんですケどぉ~」
ギャルが現れた。
「お待たせしました。お嬢さん。」
「キャハハッ」
何か知らんが、笑っとる・・・魔王の貫禄か・・・
無理だ・・・無理ゲーだ、こんなもん・・・
相手を見てから策を練るとか、考えが甘かった・・・
しかし、な、何か策を・・・いや、ダメだ。
奴にはアビリティーインバリッドがある。
ならばどうする・・・
・・・はっ! そうか・・・奴の能力はこちらの能力無効化・・・
ならばこちらは能力無効化能力を無効にすれば・・・或いは・・・
お、落ち着け、俺・・・
よくよく考えてみたら、お互いそんな能力は持ち合わせてはいないではないか・・・
なるほど・・・どうやら俺は既に奴の術中に嵌っていたって事か・・・
「お客様ぁ、接触行為はしないでちょうだいね。」
そこは厳しいんだなあ・・・
「何それチョーウケるんですケどー、待ち合わせまで暇だしー、」
「それまでの時間潰しだしー」
いやいやっ!
ただの時間潰しにお金かけてデートするなよっ!!
勿体ない何かが出るぞっ!
奴の精神攻撃ハンパないな! おいっ。
さて・・・腹をくくろう・・・
「それでは、参りましょうか、お嬢さん。」
こうして、史上最強の生物 ギャル とデートする事になった。