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ちょっとナニかが違う世界  作者: 須美音
3/13

03

「カズヤちゃん、お客様よ。」


うわー、ほんとに若くて普通の子だなあ。

逆に、こんなおっさんが相手で大丈夫なのだろうか・・・


「か、カズヤです。よろしくお願いします。」


「こ、こ、こちらこそ、よ、宜しくお願いしま・・・す・・・」


おっさんが相手だから緊張しているのだろうか?


「カズヤちゃん、120分コースね。」


短っ!!って制限時間ありかよー・・・って、まあ普通はあるか・・・


「はい、これ時計ね。」


「わかりました。」


って、全くわかってないのでマスターに耳打ちをする。


「120分でどうすればいいんですかっ?」


「テキトーにその辺をブラついて120分以内に店に戻ってくればいいわ。」


な、なるほど。

しかし・・・デート自体はした事はあるのだが・・・

初対面の、しかも若い子といきなりデートとは・・・

とにかく、ここは相手も緊張してるみたいだし、こちらがリードせねば。


「では、行きましょうか。お嬢さん。」


執事かっ!!

いや、執事ならお嬢様か・・・

やばい・・・完全に出だしを間違えた気がする・・・恥ずかしい・・・


「はっ、はい・・・」


店をでる。


なんだろう・・・さっきからずっと下を向いているなあ。

マスターの話を聞く限り女性はかなり積極的って思っていたのだが・・・

普通の照れ屋な女の子だよなあ・・・

しかし、今はこの120分をどう乗り切るかが問題だ。

とりあえずマスターの言葉を信じてその辺のカフェにでも入るとするか。


「あそこのカフェで何か飲みながら話でもしませんか?」


「は、はい・・・」


店に入りドリンクを注文した。


とにかく話をしなければ・・・


「デートクラブの利用は初めてですか?」


「はい・・・」


俺もデートクラブは初めてです・・・

しかしさっきから、はい しか言っていないような・・・

う~む、困った・・・話が続かない・・・

そうだ、これは仕事とはいえデートなんだから名前で呼んだ方がいいのでは?


「そう言えばまだ名前を聞いていなかったね。僕はカズヤ。君の名前を聞いてもいいかな?」


う~ん・・・キザだ・・・めっちゃキザな気がする。


「・・・です。」


全く聞こえない・・・


「え、えーっと・・・よく聞こえなかったんだけど・・・」


「マリ・・・です・・・」


やっと聞こえた。


「マリちゃん、ね。」


余り根掘り葉掘り聞くのはダメなのだろうか・・・

年齢とか学生なのかとか聞いてみたいのだが・・・

う~ん・・・ルールが全くわからない・・・

わからない以上詮索するのは得策ではないな。

ならば、ここは自虐プレイで・・・


「マリちゃんは・・・こんなおじさんが相手じゃガッカリさせちゃったかな?」


「・・・そんな事は・・・無い・・・です・・・」


んー、その最初の沈黙はガッカリしたって言ったようなもんだよ・・・

20代後半のおっさん店員て殆どいないって言ってたし、

そりゃ指名無しでも若い男が来るって思うか。ごめんねマリちゃん、おっさんで。


それより今は会話だ。とりあえず趣味とかその辺りから会話を膨らせてみるか。


「所でマリちゃんは趣味とか好きな事とかはあるかな?」


下手糞かっ!

慣れてないのバレバレなのかなあ・・・

う~ん、しかし正解がわからない以上このままいくしか・・・


「ど、読書とか・・・」


くっ、ぬかったか・・・

自分から振っておきながら本とか全くわからん・・・

ダメだ・・・完全に相手の術中にハマってる・・・

な、何か、相手の策を上回る何かカード的な何かは無いのか・・・

カードか・・・頭にチラっとカードバトル物のアニメを思い出す

相手の土俵で戦っても俺に勝ち目は無い。

ならばいっその事こちらの土俵で勝負をするか・・・一か八かの賭けだが・・・


「あ、あのぅ・・・」


しまった。妄想モードになっていたか。


「ああ、ちょっと、最近何か読んだかなーって」


先手を打たれたぁー!!

次はこっちのターンのはず。

俺に考える隙を与えぬその手腕・・・できる・・・

は、早くこちらも何か仕掛けなければ・・・

ヤらねばヤられる・・・


「か、カズヤさんは・・・どんな・・・ご趣味・・・ですか・・・」


3ヒットコンボきたーっ!!

つ、強い・・・完全に手玉に取られている

大人しそうな外見とは裏腹に連続攻撃を仕掛けてくるその・・・って

俺の趣味か・・・妄想モードは一旦封印しておこう・・・

やはりここは・・・


「趣味って程ではないけど、アニメが好きでよく観るくらいかな?」


さあ・・・乗ってくるか・・・


「わ、私も・・・アニメ・・・観ます・・・」


乗ってきたーっ!!

ふふっ、凄まじい戦いだった・・・が・・・策士策に溺れる・・・

彼女はその智謀ゆえ策を弄しすぎたな。

結果、俺の勝利に終わったが・・・封印封印っと。


「い、以外です・・・カズヤさんは・・・そういうの観ないと思っていたので・・・」


「おじさんだからとか?」


ちょっと冗談っぽく言ってみた。


「ちちちち、違いますっ!」


うん。今日一番の大きな声だ。


「冗談冗談。しかしやっと共通の話題が見つかって良かった。」


それから時間まで彼女とアニメの話で盛り上がったのは言うまでもない・・・

・・・

・・・

何気に時計をみてみる。

・・・って、ヤバっ!!!

時間10分過ぎとるっ!!


「ちょっと時間過ぎちゃったから巻きで戻ろっか・・・」


「あっ。ごめんなさい。延長料払いますので・・・」


「いや、僕のミスだからそれはいいよ。」


マスター許してくれるかな?


しかし、巻きで戻ろうと言いはしたが、走ったら何か格好が悪い気がする。

ここは、落ち着いてそして可憐に且つ優雅に・・・

彼女の手を取って堂々と凱旋するとしよう。


「ひゃあああーっ」


今日二番目に大きな声で悲鳴を上げた。


「ご、ごめん。嫌だった?」


「い、嫌じゃ・・無いです・・けど・・・」


「ん?」


「お、オプション代払ってないので・・・」


ああー・・・

そういやそんなのあったなあ・・・

手を繋ぐだけで料金発生するとか・・・


「大丈夫!サービスって事で無料だよ。」


「で、でも・・・」


「どうしても嫌と言うなら止めるけど」


「嫌じゃないです・・・」


「では、このまま戻るとしますか。」


更に、手の繋ぎ方を恋人繋ぎにしてみた。


「ぅぅぅっ・・・」


「この繋ぎ方も平気?」


「はい・・・」


そのまま無言で店に到着。


「あら?カズヤちゃん遅かったわね・・・」


「すみませんマスター、僕のミスで時間遅れてしまいました。」


「なので、延長料は無しでお願いします。」


「そう、カズヤちゃんがそう言うなら問題ないわ。お疲れ様ね。」


「きょ、今日は有難うございました。」


「こ、今度来るときは・・・指名させてください・・・」


彼女は会釈をして帰っていった。


「あら?気に入られたみたいね。」


「社交辞令的なアレでは?」


「それより、どうだった?」


「正直な所、結構疲れました。」


相手との心理戦・・・最終的には俺が勝利したが・・・

なかなか手強い相手だった・・・ふふっ


「じゃあやっぱり・・・この仕事は無理かしら?」


「いえ、初めてだったので勝手が分からない事が多かっただけで」


「その辺は経験で何とかなるだろうし、問題は無いかと。」


「えっ!? それじゃー、引き続きやってくれるのね?」


「は、はい・・しかし一つ問題が・・・」


「何かしら?」


「住む所が無いです・・・」


「そう言えばそうね、でも大丈夫よ。」


「ちょうど解約しようとしていた部屋があるの、そこを使って」


「それは非常にありがたいです。」


「ただし、家賃や光熱費は自腹でね!」


「わかりました。」


これで何とか生活基盤は整ったかな?


「後で部屋に案内するわ。明日から仕事よろしくね!」


こうして、デートクラブで働く事になった。


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