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「ただいまです。」
「カズヤちゃん、お疲れさまー」
「芸能人が相手なら心配よね・・・」
いやいや、あんたが・・・いや、もういいや。
「いえ、大丈夫でしたよ。」
「そう? ならいいんだけど。」
とか、何やかんやしている内に1か月が経過していた。
「近頃カズヤちゃん、すごい人気ね。予約が無い日がないわね。」
それは俺が、誰かれ構わずホールドハンズをしまくったからだろう。
無料で手を繋いでるのは、まだマスターにはバレてないようだ。
最近はちょっと慣れてきたせいか、脳内会議量もかなり少なくなってきた。
「マスター! 大変です!」
こいつら居たのか。
何が大変なんだか・・・
「どうしたの?そんなに慌てて。」
「か、彼女が、帰ってきたらしいです!」
彼女・・・誰?
「ま、まさかっ!」
マスターも珍しく驚いてるな。
「か、彼女とは誰ですか?」
「カズヤちゃんには言ってなかったわね・・・」
え、何?
「ええ、聞いてませんね。多分・・・」
「クイーンよ。」
いや、わからん。今聞いたけど、全くわからん。女王様?外国の人?
「え、えーっと、外国の方・・・とか、ですか?」
「違うわよっ!」
えーっ。何でそんなに引っ張るの?さっさと言って・・・
「クイーンは以前この辺りの店を荒らし周ったドSのメス豚よ。」
う~ん・・・
「それで、何故彼女が帰ってきたら、大変なんです?」
「クイーンのせいで、この仕事を辞めた男子が多いからよ。」
あー・・・
レイナちゃんみたいに、オプ無しなのに手を握ってくるとか、それ系か?
まあ、今の男じゃ、発狂案件だからな・・・
ならば、俺なら何の問題も無いのでは?
「えーっと・・・ちなみに、どんな事をされたんですか?」
「接触行為が禁止な店なのに、手を握ってきたり、体をくっつけてきたりするのよっ! 何ておぞましいっ!」
・・・デートなんだし、別にそれくらいは、いいだろうに・・・
想像以上にしょぼいな今の男って・・・何か今の女の方が逆に可愛そうに思えてくるわ。
三つ子は手を握るのをOK出しているが大丈夫なのだろうか?
「三人は、そのクイーンとやらが相手でも大丈夫なの?」
「絶対に無理です!」
うん。息ピッタリ。
「えーっと・・・確か過度な接触行為は罰金なのでは?」
「クイーンはかなりの資産家だから、罰金何て問題にすらならないわ。」
さすがクイーンだ。なるほど、クイーンと言われるだけの事はあるのか。
「大丈夫よ。あなた達は、あたしが守るから!」
いや、どーやってさ・・・クイーンはお断りとか書いとくの?
この店はまだ被害にあって無いっぽいし、出禁とかできるの?よくわからんけど。
「えーっと・・・どうやって、守って頂けるんですか?」
「ふふっ、罰金の値段を10倍にしとくのよっ!」
いや、それ、全く意味が無いのでは?
薄々感じてたけど・・・ひょっとしてマスターって・・・アホ?
まあ・・・話を聞く限りでは、俺には全く実害があるとは思えないが・・・
「マスター! 大変です!」
またかっ!今度はなんだ!
「どうしたの!」
「近くの店のボーイがぼろ雑巾のように・・・」
えっ?あれ?お前ら店に居たんじゃ・・・?
っていうか・・・ぼろ雑巾って・・・・何?
「何てこと・・・また、か弱い男子が犠牲に・・・」
何か、相当こっぴどく暴行を受けたってイメージなんだけど・・・
どうせまた、大袈裟に言ってるだけだとは思うが・・・一応聞いてみるか。
「ぼろ雑巾って、そんなに酷い感じだったの?」
「号泣してました!」
泣いてただけかよ・・・
思ってた以上に大袈裟だったな・・・
しかし、クイーンとやらを一度見てみたいもんだな。
この店に来ないかなー?
来たら来たで、こいつら大騒ぎしそうだが・・・
「それで、クイーンは?」
マスターもクイーンとやらの動向が気になるのか。
まあ、この辺りじゃ、この店って一番小さいから相手にもされないだろうけど。
「今は他の店に居るみたいです。」
クイーン暇だな。
「今日はもうお店、終わりにしようかしら?」
「賛成です!」
こいつら・・・
「僕はこれから予約があるので。」
「あら?そうなのね?じゃあ、貴方達は今日は帰りなさいね。」
「はい!」
三人は帰って行った。
「大丈夫かしら?」
「えっ、何がですか?」
「クイーンよ!」
まだその話してたんだ。
「いや、大丈夫なんじゃ、ないですか?」
「どうして、そう思うのよ?」
俺的には来た所で問題は無いし。むしろ、ちょっと興味あるし。
「いや、なんとなく、ですけどね?」
「あら?お客が来たわね。カズヤちゃーん。」
「はいはい。只今っ!」
そして、デートに行って戻ってきた。
「カズヤちゃん、お疲れ様。」
「ただいまです。」
「じゃあ今日はもう、終わりにいましょうか?」
いやいや、そろそろ予約の時間なんですけど?
「いや、これから予約が・・・」
「あら、そうだったわね。」
さっき言ったの、もう忘れてるのかよー・・・
そして、予約のデートに行って戻ってきた。
「カズヤちゃん、お疲れ様。」
「ただいまです。それでクイーンとやらは来ました?」
「来てないわね。」
やっぱりクイーン的な人来なかったのかよーっ・・・
ここは普通来る流れだろ・・・
数日後。
「おはようございます。」
「カズヤちゃんおはよ。」
「あれ?三人は?」
「今日はお休みよ。」
えー・・・
所で、クイーン的な人は、ここ数日色々な店に出入りしているらしい。
何でも一度入った店にはもう行かないとか。
なので、一度来た店の人は次はもう来ないという安心・・・
「あら、お客さん。いらっしゃ・・・」
「小さい店ですね。」
「くっ、クイーン!」
「変な風に呼ばないで下さい。」
な、なんだと・・・このタイミングで?
いや~、ついに来たか~、待ってましたよ、クイーンさん。
どれどれ、早速どんな人なのか拝見拝見っと。
おおー!めっちゃ美人だー!
清楚なお嬢様って感じの・・・おっと、挨拶せねば。
「初めまして、カズヤです。」
「あなただけですか?」
ガーン!
落胆していらっしゃる・・・だと・・・
おっさん、いや、年上には興味ないですかー
「ほ、外に三名おりますが、あいにく今日はお休みでして。」
「そうですか・・・」
う~ん、強引に接触してきたりするようには見えないんだがなあ・・・
あれ?これ・・・ひょっとして・・・他の店に行っちゃう流れとか・・・
こんな美人なら、こっちがお金払ってでもデートしたい・・・
「所であなた。」
えっ?俺?だよね・・・
「はい、なんでしょうか?」
「あなたは何故、目を逸らさないのかしら?」
ええーっ!目を逸らすのが礼儀的なアレなのかな?
現状なら十分ありえるかもしれんが、今の男ってアレだし・・・
しかし、クイーンすげーな。ちゃんと男の視線のアレとか見てるんだな。
他の女性にそんな事、言われた事もないわ。
だが・・・めっちゃ美人だし、見ちゃうよね普通・・・
「美人なので、見惚れていました。」
おっと、つい本音が出てしまった・・・
「なっ・・・。と、所であなたは、おいくつかしら?」
ちょっと動揺してらっしゃる?
「28です。」
「珍しいわね・・・お店を変えようかと思っていたけれど・・・いいわ。」
やっぱり店変えようとしてたんかーっ!
「年上とデートをした事がなかったから丁度いいわ。あなたにするわ。」
しかし、見た目といい、しゃべり方といい、ほんとお嬢様にしか見えんな。
まあ、お嬢様って生き物を実際に見た事無いから想像上のアレではあるが・・・
「それは光栄です。」
「その余裕が何時まで続くかしら?」
ふふっ・・・これは、久々に中々骨のありそうな相手だぜ。
彼女は他の女性より上のステージに立っている存在。正にクイーン。
ならば、こちらも、それ相応の・・・
「あなたなら120分でも大丈夫かしら?」
はっ!
他の店では60分だったらしい。何故なら、男がダメダメだからだ。
ふふ、120分か・・・俺なら短いな!ここは・・・
「120分でいいのですか?」
軽くジャブを繰り出し、相手の様子を伺ってみた。
「な、中々言いますわね。では180分にしましょう。」
ふふ、ちょっと動揺したな。俺はその一瞬の隙も見逃さない。
これはもう・・・あれ?何だろう、この気持ちは・・・
この俺が・・・ワクワクしてる・・・だと・・・?
何か俺、普通に楽しめそうな気がする。
「それでは参りましょうか、お嬢さん。」
「今までの子達の様に、泣き出さないで下さいね。」
いいだろう・・・俺がこの1か月で編み出した必殺技・・・えーっと・・・良い名前が浮かばんからいいや。
こうして、期待に胸を膨らませ、クイーンとデートする事になった。
終わり




