3月25日 準備
ユニフォーム、スパイク、グローブ、タオルなど次々とカバンの中に入れていく。本当に、明日からちゃんと生活しているのかだろうか?姉としては、不安でしかなかった。また、同じようになってしまうんじゃないか?そう思うと、もどかしくて仕方がない。優聖は、明日から合宿で、その準備で忙しそうにしていたのだった。2泊3日だし、楽しそうだ。お母さんやお父さんは、優聖に対してとても甘かった。まぁ、長男だし仕方ないと言えばそれまでだけど。野球部を辞めた時も、やりたいようにすればいいと二人とも前向きだった。優聖自身も、野球部を辞めた後いろいろ考えていたみたいだから、私も厳しいことは言わなかった。でも、ラストチャンスだからこそ、無駄にはしてほしくなかった。そこには、健太郎たちの想いもあった。
本当は、聖徳高校の野球部でも十分やれたのに。自らしんどい方にいくなんて私には考えられなかった。聖徳高校に入ってから、いきなり試合に出れた優聖だったが、同学年とは上手くなじめてないことを健太郎からは聞いていた。それは、1年なのに試合に出たことに対しての嫉妬や僻みみたいなモノも少なからずあっただろう。でも、それだけではないと思った。優聖のことだから、態度が悪かったのだろう。健太郎や山里は、可愛がってくれていたみたいだけど一部の2年や1年とはトラブルがあったことも聞いていた。当然、可愛がってくれていた健太郎たちが抜けると、居心地も悪くなるだろう。野球は一人ではできないことを優聖が一番よく知っているはずなのに。
辞める決定打になったのは、トラブル後に起きた監督の采配だった。健太郎が言うには、その日試合が予定されており、いつものようにアップをしていた。しかし、同学年の生徒が優聖のグローブを触って遊んでいたみたいなことがあり、怒ってしまったとか。そんな優聖を見ていた監督は、当初先発ピッチャーとして試合に出てもらう予定だったが、とてもじゃないけど出れる状態じゃなかったらしい。しかし、ピッチャーとして出場する準備をしていた優聖は納得いかなかった様だ。私からしたら、本当にくだらない理由だった。優聖にとっても、野球部にとっても、いい話し合いはできていない。
逃げるようにして優聖は、野球部から出ていったのだ。気持ちがわからなくはないけど、このまま辞めて本当によかったのだろうか?今は、ただ優聖を信じることしかできなかった。




