3月23日 円谷俊介
素振りを終えた優聖は、バットを持ちながら部屋に入ってきた。
私 「優聖!」
優聖「ん?」
また、言われると思ったのかすぐバットを直しに行った。
優聖「悪い、悪い」
バットを直した優聖は、戻ってきた。
優聖「そういえば、どうだったの?大学は?」
私 「人が多かったかな」
よかったも、よくなかったもなかった。
優聖「なんだよそれ」
私 「それ以外感想ないよ」
相変わらず、野球に真っしぐらな優聖がどこか羨ましかった。
優聖「そうか?俺、もうすぐ合宿いくんだ」
私 「合宿いくの?」
もうすぐ4月になるというのに、合宿なんてあるんだ。
優聖「うん。合宿だったら、試合たくさんやれるしね
私 「なるほど、出番あるの?」
優聖「たぶんね」
試合に出れるんだったら、行く意味はありそうだ。高校も、そろそろ春休みになるだろうし、いい休みを過ごせるみたいだ。
私 「そりゃあ、楽しみだね」
優聖「先輩たち、めちゃくちゃ上手い人いてさ」
私 「そうなの?」
また、野球の話が始まった。
優聖「うん、ピッチャーなんだけどね」
私 「なんていう人?」
優聖「円谷っていう人」
私 「そんな人いるんだ」
全く知らない。けど、優聖は友だちも少ないし、ちゃんと聞いてあげるか。野球部を辞めた優聖が、野球部の人たちと上手くやれているはずがない。
優聖「俺たちのチームにいたんだ。しかも、お姉ちゃんの大学にいくんだよ」
私 「えっ、そうなの?」
私みたいな大学に行く野球部がいるんだ。それ自体が驚きだった。優聖みたいな野球が好きで上手い選手は、私がいくような大学には来ないと思っていた。
優聖「そうだよ。だから、今回の合宿が一応最後になるのよ」
私 「最後なの?」
どういうこと?
優聖「最後っていうわけじゃないけど、大学の野球に入るからな」
私 「あー、なるほど。そういうことか」
大学野球が中心になるということか。クラブチームは、空いた時間に来る感じなんだろう。
優聖「もし、見かけたら話してみてよ」
私 「どんな人か知らないしな」
優聖「面白いよ」
私 「そんなに?」
今年から大学生ということは、私と同じ年齢かぁ。でも、話しかけれるほど勇気はなかった。まぁ、ちゃんと入学してからこれからのことを考えようと思ったのだった。




