1月17日 廊下
今日は、放課後に卒業式に行う企画について話しあっていった。だいたい、14人ぐらいが集まった。この前の、卒業制作同様、いくつかの案を出し合い、その中からどれがいいかを決める作業を行っていた。
進路が決まっていない生徒は、ほとんど帰っていたが、矢田は、進路が決まっていないにもかかわらず、私たちと話し合いをするために残ってくれていた。職員室に行く係として、たまたま、私と矢田は二人になった。そして、職員室に向かう途中、矢田は、私に話かけてきた。
矢田「田中さんって、進路決まってるの?」
私 「決まってないけど、私は、簡単なところ受けるから」
矢田「そうなのー?」
私と矢田は、教室を出て行き、階段を降りていった。
私 「うん。矢田さんは?」
矢田「私は、どうかな。受かるかわかんないよ」
私 「矢田さんってスゴイよね」
矢田「そうかなぁ。スゴくないと思うけどな」
矢田は、いつもと変わらず笑顔で話をしていた。
私 「いやいや、そんなことないよ。可愛くて、性格よくて、勉強もできて‥‥」
矢田「えぇ。私ってそんなにできるの?」
おどけながら、私の方を見ていた。
私 「できるよー」
矢田「私は、真波の方がスゴイと思うけどね」
私 「真波?」
矢田「うん。田中さんって、知り合いなんだよね?」
私 「そうだけど」
矢田「高校2年の時、よく田中さんのこと聞いてたよ」
私 「そうなの?」
真波が、私の話をしていたなんて、しらなかった。
矢田「うん。真波とケンカしてたこととか」
私 「へぇ。真波って、そんなこと話すんだ」
矢田「話すよ」
私 「真波、私のこと怒ってなかった?」
矢田「怒ってなかったよ。田中さんがどんな人なのか、いろいろ教えてくれたよ」
私 「そうなんだ‥‥。私って、近くにいるだけで、真波のこと全然知らなかったなぁ」
中学校の時、あれだけたくさんの時間を過ごしていたのに、何も真波のことをしらなかったことが情けなかった。
矢田「真波は、あんまり自分をさらけ出すタイプじゃないからねぇ」
私 「だよねぇ。中学の時は、いつも友だちに、私が真波に怒った時に注意されてたもん」
矢田「あの5人でいた時のこと?」
私 「うん、そうだよ」
矢田「田中さんとか真波って、陸上競技大会の時もモメてなかった?」
矢田も、あの陸上競技大会にいたことを、初めて知った。
私 「モメてたね。矢田さんも、あの時いたんだ」
矢田「いたよ。あの時は、みんなと一緒になるなんて思いもしなかったけどね」
私 「あの時、モメてたの見てたの?」
矢田「見てたよ」
私 「ホント?」
矢田「うん。栞がめっちゃ怒ってたでしょ?」
私 「そうなの。栞が怒るから、こっちも大変で」
矢田「栞が怒っていた相手って誰だったの?」
私 「満生っていう子なんだけど、めちゃくちゃヤンチャで大変なんよ」
久しぶりに、満生のことを思い出した。満生は、あの日をきっかけに、大きく変わっていった。
矢田「そうなんだ。どこの高校いったの?」
私 「淮南高校。でも、途中でやめちゃったみたい」
矢田「そっかぁ。今は、何してるの?」
私 「今は、働いてるって聞いてるけど、よくわからないかな」
そんな話をしていると、職員室に辿り着いた。私と矢田は、職員室の先生から頼まれていた段ボールを受け取った。