3月12日 対話
初めて矢田とこうして話す。緊張して、上手く話せるか自信がなかった。しかし、このままほっといても問題は解決しない。私は、そう考えていた。どうすればいいか私なり考えたけど、いい案が浮かばない。この前の優聖の試合のように、上手くいかなくてもいいから、全力でやってみようと。それだけを胸にひめ、今日やってきたのだった。
矢田「気にしてたんだ。フフフ。面白いね、田中さんは」
矢田は、気にしていないのだろうか?私には理解できなかった。
私 「気にするよ、そりゃぁ。‥‥‥」
その後の言葉が上手く出てこなかった。
矢田「私たちはさ、みんなを嫌ってるわけじゃないんだ」
私 「どういうこと?」
嫌ってなかったら、なんでこうなるのだろうか?
矢田「あの時のことは、悲しいけど、田中さんたちもわざとやったわけじゃないでしょ」
私 「うん」
その通りだ。もう、あの日のことか、約3年が過ぎようとしていた。
矢田「しかも、私たちも多少は悪かったわけだし」
矢田たちも感じていたんだ。
私 「‥‥‥」
真っ直ぐ矢田を見つめ続けた。
矢田「でも、そこじゃないんだ」
次の言葉が出るのをじっと待っていた。
私 「‥‥」
8秒ほど間を空け、話し始めた。
矢田「たぶん、私も真波も七海に怪我をさせたから怒ってるんじゃない。彼女が再び走れないことに対して怒っていたんだ。そういう意味では、まだ私たちも大人になりきれてないよね」
ゆっくり頷くしかできなかった。
私 「そうなんだ」
矢田「私たちも、みんなに対して怒ってないんだ。でも、七海はさ、、、、、、、」
少し目を逸らしながら、矢田は続けた。
矢田「裏方に回るような人間じゃないんだ。もっと、もっと陽の光が浴びるような人間なんだよ」
もう何も言えなかった。当たり前だ。彼女を1番近くで見てきたのは紛れもなく彼女たちなのだ。私たちがいくら言い訳しようが、私たちの正当性は、全く見えない。
私 「そうだよね」
矢田「でも、思ったことがもう一つあったんだ。それは、田中さんにもそれがあったんだって」
どういうことかよくわからなかった。
私 「私にも?」
矢田「うん。田中さんが真波たちと仲良かったこと知ってたから」
私 「そうなんだ」
矢田「うん」
やっぱり、それは知っていたんだ。けど、それは誰かに聞けばわかるはずだった。




