表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
60/80

3月12日 対話

 初めて矢田とこうして話す。緊張して、上手く話せるか自信がなかった。しかし、このままほっといても問題は解決しない。私は、そう考えていた。どうすればいいか私なり考えたけど、いい案が浮かばない。この前の優聖の試合のように、上手くいかなくてもいいから、全力でやってみようと。それだけを胸にひめ、今日やってきたのだった。


 矢田「気にしてたんだ。フフフ。面白いね、田中さんは」


 矢田は、気にしていないのだろうか?私には理解できなかった。


 私 「気にするよ、そりゃぁ。‥‥‥」  


 その後の言葉が上手く出てこなかった。


 矢田「私たちはさ、みんなを嫌ってるわけじゃないんだ」

 私 「どういうこと?」


 嫌ってなかったら、なんでこうなるのだろうか?


 矢田「あの時のことは、悲しいけど、田中さんたちもわざとやったわけじゃないでしょ」

 私 「うん」


 その通りだ。もう、あの日のことか、約3年が過ぎようとしていた。


 矢田「しかも、私たちも多少は悪かったわけだし」


 矢田たちも感じていたんだ。


 私 「‥‥‥」  


 真っ直ぐ矢田を見つめ続けた。


 矢田「でも、そこじゃないんだ」


 次の言葉が出るのをじっと待っていた。


 私 「‥‥」


 8秒ほど間を空け、話し始めた。


 矢田「たぶん、私も真波も七海に怪我をさせたから怒ってるんじゃない。彼女が再び走れないことに対して怒っていたんだ。そういう意味では、まだ私たちも大人になりきれてないよね」


 ゆっくり頷くしかできなかった。


 私 「そうなんだ」

 矢田「私たちも、みんなに対して怒ってないんだ。でも、七海はさ、、、、、、、」


 少し目を逸らしながら、矢田は続けた。


 矢田「裏方に回るような人間じゃないんだ。もっと、もっと陽の光が浴びるような人間なんだよ」


 もう何も言えなかった。当たり前だ。彼女を1番近くで見てきたのは紛れもなく彼女たちなのだ。私たちがいくら言い訳しようが、私たちの正当性は、全く見えない。


 私 「そうだよね」  

 矢田「でも、思ったことがもう一つあったんだ。それは、田中さんにもそれがあったんだって」


 どういうことかよくわからなかった。


 私 「私にも?」

 矢田「うん。田中さんが真波たちと仲良かったこと知ってたから」

 私 「そうなんだ」

 矢田「うん」


 やっぱり、それは知っていたんだ。けど、それは誰かに聞けばわかるはずだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ