1月16日 何者
1月14日の矢田の発言によって、わかった。私には、何もないのではない。私が、何も得ることができなかったのだ。
矢田は、何もビビることなく、みんなの前で発言し、空気を変えた。それは、決して、簡単なことではない。一歩間違えれば、批判されるのを覚悟に話している。
中学生の頃は、明日花や真波がいたことで、他とは特別な存在になっているような気がしていた。しかし、私一人だけでは、ただの中学生に過ぎなかった。では、どうすれば特別な存在になれるのだろうか。
「自分は何者なのか?」これは、とても難しい問いだ。おそらく、人生かけて探すものなのだろう。この問いに答えるために、人と恋愛したり、勉強したり、働いたりしている。こんなことを考えていると、明日花にいつも「考えすぎ」と笑われる。
「自分は何者なのか?」という問いで、私は、あるエピソードを思い出す。それは、私が小学生の頃だった。麻央という子が私たちの学校に引っ越してきた。麻央は、私に興味津々の様子で、「どこに住んでいるの?」、「どんな習い事をしているの?」、「どんな友だちがいるの?」などいろんな質問をしてきた。今度は、私が麻央に質問してみた。「麻央は、どんな人なの?」と。麻央は次のように答えた。
「私は、ひねくれ者」。私は、思わず大笑いをしてしまった。当時は、麻央は、変わった人だという認識しかしていなかったが、今、思えば、麻央はあのような回答をすることで、自分を表現していたんだと思った。しかし、今の私には、表現方法がない。
矢田のような成績優秀でも美人でもない。皆川のようにスポーツもできない。湊谷のように明るくもないし、栞みたいなリーダーシップもない。彼女たちがもっているものは、何一つ持っていない。だから、彼女たちには、劣等感を感じるし、できるだけ一緒にいないように避けてしまう。
反対に、いつもいる屋久保や村上に対しては、どこかで下に見ているところがあった。屋久保は、そこそこ賢いが、友だちも少ないし可愛くない。村上は、屋久保より明るいが、頭が悪いし、一部の男子から嫌われていた。そんな二人と一緒にいふものの、本当の私を表現しようと思えなかった。
なんとなく一緒にいて、なんとなく話すぐらいだった。私は、どんな人といれば自分を表現できるのだろう。この先、明日花や真波たち以外に自分を表現できる人たちに出会えるのだろうか?そんなことを考えていると、明日花から、連絡がきたのだった。