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3月10日 試合

 もう、外は真っ暗だ。時刻は、20時を過ぎようとしていた。8回の裏、ツーアウトランナー3塁。緊迫した場面で、打席に立った優聖は、いつもの自信がなさそうだった。というのも、ここまで2打席2三振。守備でも、エラー2つと全く活躍できていなかった。昨日、ヒット3本打つと言っていてこの有り様。仕方ないと言えば、それまでだが、弟としてもう少し頑張ってほしかったのが本音だった。向こうのピッチャーは、ホームページにも載っていた本多のピッチングに翻弄されているみたいだった。優聖は、握りしめたバットを構え、マウンド上の本多をじっと見つめた。

 どうなるだろうか?この打席。私は、スタンドから二人の対決を見ていた。ナイターの試合ということもあり、ほとんどスタンドには人がいない。球場は息を呑むような静けさに包まれており、選手からの声のみが聞こえてくる。左バッターボックスに入った優聖の姿は、昔よりも大きく見える。ツーストライクワンボール。本多の剛速球であるストレートがミットに向かって一直線。まるで、唸りを上げているようだった。優先は、そのボールに向かってフルスイングをしたが、バットはボールにわずかに届かず、空を切り裂いたのだった。ストライク!!バッターアウト!!三振。ピッチャーの本多は、ゆっくりとマウンドから降りて行く。後ろに守っていた野手陣が声をかける。

 一方の優聖は、ヘルメットをとり、バットを地面にこすりつけながらベンチへと戻って行く。悔しさが全面に出ているみたいだ。まだ、9回がある。ベンチへと戻った優聖は、ヘルメットをとりグローブをとりショートへと走って行く。あまりにも悔しかったのか定位置についても、グローブ顔を覆っているみたいだった。おそらく、この試合で優聖に打席が回ってくることはないだろう。ファーストから転がされたボールを軽快にさばき、一塁へとボールを投げる。でも、この結果はある意味仕方ないとも思う。ほとんどの人が高校3年生まで部活動に入っていて、それが終わった人や大学生がくるチームに高校で1年間しかしたことがない人が来ても、そりゃあ打てないだろうに。もう、出番がないと思った私は、スマホに目をやり、電車の時間を調べ始めた。今日の試合が、優聖にとって、いい分岐点になればいいなと思った。たしかに、3打席全て三振に倒れてしまったが、この失敗から何か学んでくれるんじゃないかと期待して、私はスタンドから去ったのだった。

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