2月23日 キャッチボール
健太郎と優聖がキャッチボールをしてくれるのを見るの始めてだった。そういえば、私も昔はこうしてよく弟とキャッチボールをしたものだった。あの頃よりは、数倍ものスピードが速くなっていた。
青い空が広がる中、二人が緑の芝生の上でキャッチボールをしているのを見ると、なんだかもったいなく感じてしまう。風は穏やかに吹き、遠くから鳥がさえずっているのが聞こえてくる。「もうちょい、下がるよ」と健太郎が言うと、優聖は頷いた。
健太郎は、段々下がっていく。距離を取ると共に、球の速度も増していく。まだ、現役の優聖の方がいいボールを投げていた。一方の健太郎は、時折、高いボールを投げて、届かせようとした。青空の下で、二人は、少しずつ暑くなってきたようだ。まだ、汗をかくような季節ではないようだが、それくらい投げているということだろう。
時間の経過を忘れ、二人はただただ思い思いのボールを投げていく。どちらも久しぶりにキャッチボールをしたせいか、相当投げ続ける。こんなにキャッチボールって長かったのか?と思うくらいだった。昔、聞いたことがある。キャッチボールは、ただ単にボールを投げ合っているだけではなく、相手との信頼関係があってこそなりたつものであるということを。
しばらく後、健太郎が少しずつ戻ってきた。それに伴いボールのスピードもゆっくりになっていった。そして、健太郎はキャッチボールを終えようとした。すると、優聖が口を開いた。「健太郎さん、もう少し続けてくれませんか?」。健太郎は、驚いていたみたいだ。それでも、後輩に言われたからか、即答で頷いたみたいだった。
そろそろ、戻らないのか?。健太郎の一言に、「気が向いたら戻りますよと返事をした。これは、どういう意味だろうか?優聖は、戻りたくないわけではない。ただ、どうやって、納得するかどうかなのだろう。「まだ、やりのことしたことがあるんだ」と健太郎が返した。健太郎がやり残したことも気になるけど、それ以上に優聖が部活に戻ってくれないか心配だった。
「見返してやれよ」。健太郎の暑い言葉が、優聖に襲いかかった。健太郎の言葉に、優聖は、胸を打たれたような表情を浮かべていた。二人は、キャッチボールを通して、何か大切なものを伝え合っているような気がした。おつかれ!!。ようやく、ここでキャッチボールが終了したみたいだった。今日のキャッチボールをきっかけに何かが変わればと思っていた。




