2月6日 玄関
ここが私のマンション。エレベーターを上がってすぐに右手だった。ここを開けたら、お母さんがいるのかな?そんなことを想像しながらいつも家に帰っていた。私にとって、お母さんは、いつも優しい存在だった。昔から感情の浮き沈みが激しい私を何も言わずに見守ってくれていた。私は、思い切って玄関の扉を開けた。いつものように、玄関には、思い出の写真が飾られていた。
私 「あー、疲れた」
お母さん「お疲れ様」
お母さんは、玄関まで迎えに来てくれた。
私 「ありがとう」
お母さん「今日、試験どうだった?」
このセリフは、必ずあると思っていた。このセリフには曖昧に返すと決めていた。
私 「うん、まぁまぁかな」
お母さん「そう。それはよかった」
安堵した表情で私が靴を脱ぐ姿を見つめていた。
私 「もう、疲れた」
伸びをしながら、玄関から部屋に向かった。
お母さん「ご飯食べる?」
私を追うように話してきた。
私 「食べるー。今日、何?」
お母さん「今日は、ハンバーグよ」
私 「やったぁ。私の好きなやつー」
わざと、ハンバーグにしてくれたのかな?昔からそういうことをしてくれるお母さんだった。
お母さん「試験できなかったら、どうしようかと思ったよ」
私 「試験できなくてもかまわないよ」
今日の試験の出来はなんとも言えなかった。
お母さん「ほんとかなー?あやしいな」
私 「あやしくないよ」
私は、コートを脱いだ。
お母さん「ほんと?」
私 「あやしくないから。それより早くご飯にしてよ」
お母さんは、台所に戻りながら話してきた。
お母さん「わかったわ。だから、早く着替えてきなさい」
私 「はーい。それよりも、今日何してたの?」
今日は、お父さんも一日いなかった。
お母さん「今日?アンタが出て行った後は掃除して、買い物に行ってたよ」
買い物に行って、掃除して。どんな気持ちなんだろう?
私 「へぇー。いいなぁ」
お母さん「別に何もないよ」
つまらなそうな表情をして見せた。
私 「何もないの?」
お母さん「ただの家事よ」
たしかに、お母さんにとっては毎日の繰り返しか。
私 「なんか面白いことなかったの?」
お母さん「そんなのないわよ」
私は、階段を登り自分の部屋に向かった。




