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1.サブタイトル考えるの難しくない?

 透き通った曇りのない真っ直ぐな瞳。お日様に照らされて輝く栗色の髪。見るものを魅了させる長い脚。スタイル抜群で魅惑的なボディ。




「ぐっ! 僕は、魔女先輩といちゃいちゃしたい!」




 僕は心からの叫びを声に出していた。




「がんばれ! 鈴陽君!」


「押してけ! 押せ! 押せ! がばりといけ! 鈴陽!」




 メガネについて語るなら前に出る者はいない、超猫背の賢也と親友の恋をサポートする所謂ギャルゲーとかによくいるポジションを気取りたいらしい友亜が僕のことを応援している。


 いくぞ、僕はいくぞ!


 僕はドキドキといっている心臓の音を感じながら、魔女先輩の方へと近づいていく。




「あ、あの、あ、アリィー先輩!」


「…………? なーに?」




 言え。言うんだ、僕! 言ってしまって、すっきりとした気持ちになってしまえ! 玉砕して苦しい気持ちになるかもしれないが、というか、そうなる可能性がとても高いと思うのだが、言ってしまうんだ!


 僕は自分にそんなエールを送って、いざと覚悟を決め、ジッと先輩の目を見つめる。




「いけ、いけ、いけ!」


「がんばれ~」




 賢也と友亜が遠くで見守っている。

 いこう。いける。今日こそ僕は……!




「せ、先輩! ぼ、ぼ、ぼ……!」


「ぼ……?」




 思考が混乱してくる。




「ボタン外れてますよ!」




 ……やってしまった。今日も失敗してしまった。ダメだ。ダメダメのダメダメダメダメひよりマンだ。想いを伝えるのって、こんなにも難しい。難しすぎて、泣いてしまいそうだ。




「今日もダメだったか……先輩に初めて近づいたわけだし、今日が一番、前進してはいるんだけどなぁ」




 遠くで悔やむように友亜がボソボソと何か言っている。

 付き合わせてしまって、ごめん。申し訳ない。とても、とても、とーっても申し訳ないと思う。




「あら、本当だ。ふふっ、ありがとう『鈴陽くん』」


「…………!」




 先輩が僕の名前を呼んでいた。いや、僕の名前を知ってくれていた。


 僕はその喜びに、思わず心の中でガッツポーズをしてしまう。一世一代、もうこんなチャンスはやってこないだろう。たぶん。おそらく。やってこないだろうと思っている。




「『またね』、鈴陽くん」


「あ、はい、また……」




 僕はトボトボと友亜たちの方に帰っていく。




「惜しい! 次はいける! きっと! プロバブリィ!」


「ドンマイ、鈴陽君。まだ、チャンスはあるさ」




 慰めるようにふたりはそう言ってくれた。

 ううう。不甲斐ない自分が申し訳ない。本当に、本当に、頭を下げることしかできないでいる。


 冬の寒い空気が、まるで僕のことを邪魔してくるかのようにジワジワとジワジワと僕の身体を冷たくさせていった。




「僕は魔女先輩と付き合ってみせる!」


「その意気だ、鈴陽」




 だが、魔女先輩と付き合うためには、魔女先輩に相応しい人間にならなければいけない。

 今の僕はどうだろうか。背も小さい。格好よくもないし、どちらかというと子どもっぽい顔をしている。

 それだけではない。僕はあがり症だし、ネガティブだ。性格面でも先輩と釣り合っているところがなにひとつ存在しない。




「ぐっ……なんてことだ……」




 自分のダメダメさに気づいて、僕は唸るように言葉を吐く。落ち込んでいるのが丸わかりだと思う。




「まあ、でも。ほら、アリィー先輩にはお相手がいないそうだし、いける。お前なら、絶対にいける!」




 根拠のないことを友亜は言う。僕を元気づけてくれようとしているのだ。




「僕に、僕に、いけるかな……」


「大丈夫だ。お前は魅力的だ! お姉さま方からの評判は高い! かわいいってよく言われるだろ? 大丈夫だ!」


「かわいい、じゃなくて、僕はカッコいいね、って言われたいんだけど」




 僕が一番気にしていることを友亜に言われる。その僕らの様子を見て、賢也は隣で静かな調子のまま冷静に分析をし始めた。




「鈴陽君のお姉さまウケ度はおよそ七十五度。そして、この角度と物理的法則とエモーションの合体と分子の動きから考えて、そうすると……いけるよ、鈴陽君」




 賢也はよくわからないことを言った後、親指を突き立てて「グッド」と表現してきた。

 ちなみに余談ではあるのだけれど、賢也は頭が良さそうな見た目をしているが、意外にそんなことはないのである。賢也がしているメガネはだて眼鏡だし、だて眼鏡をしている理由は『その方が頭が良さそうに見えるし、知的に見えて、格好よさそうだから』らしい。僕と友亜にはその理論が伝わらなかったのだが、面白い人だったので高校入学初日でなかよくなることができた。たぶん、シンパシーというか、何か近しいものを感じてしまったのだろう。類は友を呼ぶ、ってね。




「そうだなぁ。あそこのイベントはもう絶対いける流れだったぜ。たぶん、相手の好感度も既にマックスだ」


「アリィー先輩とは、今日初めて話したんだよ? それはさすがにないのでは」




 友亜は見ての通り、残念なイケメンだ。顔はイケている人なのだが、なんでもギャルゲー換算で考えていく。

 おまけに、アホだ。優しいアホなのだ。例えば、ゲームのイベントがあるからといって駅まで行くも、財布の中身が全然ないことに気づき、仕方なく徒歩で百キロ以上もの道のりを歩いたらしい。当然、辿り着いたときにはイベントは終了していた……どころか、日が変わって翌日にようやく着いたのである。しかも、その日は月曜日だったので、実質……というか、実質でも全然ないが、友亜は学校を意図せずサボったということになるのだ。友亜のそういう行動は日常茶飯事らしく「まっ、いつか帰ってくるだろ」理論で友亜の親は警察や学校なんかに連絡しなかったという。




「友亜の顔と交換できたら……」


「フッ、よせやい。照れるぜ……」


「遠回しに貶したんだよ」


「えっ、オレ、貶されてんのぉ!?」


「ちくせう……ちくせう……!」




 僕はポロポロとその場で涙を溢した。




「鈴陽。仕方ない、今日はお前ん家で作戦会議だ! いくぞ、同胞たちよ!」


「いきましょうか、友亜君、鈴陽君。ボクの計算によれば、積分定数と物理的なアレと2,4,6-トリニトロトルエンの爆発力と16進法の力によって、ボクのシックスセンスがいける、と言っていますから」


「み、みんなぁ……!」




 僕はジワーッと涙を流して、ふたりの方を見た。




「で、本音は?」


「作戦会議……か。フッ、良い響きだ」


「なんか格好良いことを言ってみたかっただけです」


「み、みんなぁ……」




 僕のテンションはコロコロと変わっていた。




「急げ急げ! 作戦は逃げなくても、恋は逃げてしまうぞ!」


「ええ、そうですね。参りましょうか」


「あっ、うん」




 みんなはめちゃくちゃ乗り気なのだけれど、僕がなんとなく置いてきぼりを食らっているような気がするのは、気のせいだろうか。




「誰が一番最初に着くか、競争な!」


「定義はどうしましょう」


「家の前……玄関の前に先に着く、にしよう」


「了解です」




 僕をひとり蚊帳の外にして、ふたりはお互いに謎めいたことを話し合っている。




「よーい、スター……フッ、バーカ。スタートの『ス』の時点で始まってんだよ!」


「なっ!? ズルいですよ! しかし、相手は友亜君。恐るるに足らず。ボクの知識を持ってすれば、効率よくゴールすることなど朝飯前……いや、寝起き前! 笑止! このモールス信号理論によると、この道を往けとゼウス神が言っているような気がします!」


「うん、普通に行こうよ。僕が到着しないと、たぶん玄関開かないから、寒いまま待ってることになるよ」




 ふたりのペースについていけず、僕は冷静な様子で言っていた。




「それもたしかに一理ある、といったところでしょうか。これは賢い選択かもしれません。鈴陽君、よく気がつきましたね」


「えぇ……」




 僕は呆然とした目で見ていた。友亜の姿はもうない。どうやら、全速力で僕の家まで駆けているようだ。




「あれが動く点Pだとするならば、ボクたちは動く点Q。彼は自滅したも同然です」


「うん、意味が全然わかんない」




 僕は賢也の言うことをなにひとつ理解できず、ついそんなことを言ってしまっていた。




「わかりやすく言ってしまいましょう。これは、背理法によると、物理原則に則って行われる、謂わば前座。未知なるエネルギーを秘めし、冬の到来。木枯らしがしくしくと泣いている、ということですよ」


「意味がさっぱりわからないけど、つまり、冬は寒いと」


「ほう……君はこの領域についていけるというのですね」


「いや、全然。期待してもらって悪いけど、本当に一ミリもわからない」




 僕はぶんぶんと頭を振って、否定していた。




「わからない、と申しますか。またまた、ご冗談を。鈴陽君ともあろう者が、冗談を言われるなんて、これは今日は雪が降るかもしれませんねぇ」


「天気予報、雪だって言ってたよ」


「フッ、やはり予想は的中致しました。ボクの勝利でございます」




 言い終えて、賢也はまるで知的そうにメガネをクイッと人差し指で動かして、得意気な顔をしていた。

 漫画やアニメなんかではよく見かけるけど、メガネをクイクイする人、初めて見たよ……。




「なんです? 悔しいですか? 当てられてしまって」


「えっ、ごめん。これっぽっちもそんなこと思ってないから安心して」


「そうですか……」




 僕が冷たく扱うと、賢也はシュンとして項垂れていた。




「まあ、良いでしょう。これも、ノストラダムスの大予言によるもの。やはり、ボクには未来が見えていた。そういうことです」


「いや、ちがうよ? ノストラダムスの大予言はまず関係ないし、賢也はたぶん、天気予報を見て当てたんでしょ?」


「……お見事。君を試したのです。鈴陽君」




 賢也は図星をつかれて、メガネをクイクイとすばやく動かして動揺の気持ちを表しながら、言い訳めいたことを言ってくる。僕は何を試されたというのだろうか。




「おい、おせーぞ、お前ら!」




 そんなこんな話していたら家に着いていたらしく、一足早く待っていた友亜がじれったそうに僕たちを急かした。




「クシュン。こりゃ、風邪を引いちまうぞ……ったく、競争なんだから、走りなさーい!」


「ププッ。やはり、友亜君、僕の勝ちのようですね……これも作戦のうちなんですよ」


「もうゴールしてるんだから、競争関係ないだろ」




 ふたりはそんなこんな言い合いながら、家に上がり込んだ。

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