紫のアイツ
「ねえ、見てみてこの情報誌に書いてるけど。コブさん魔王倒したんだって、大勇者になったらしいって。」
「それは嬉しいな、もしかしたらこの店の客も増えるんじゃないか。」
喜ばしいことでは疑問がある。
ここ一体を支配している魔王の城はここからかなり遠い。
彼が剣を購入してからまだ1週間も経っていなかった。
敵を薙ぎ倒し、前へ進むには相当時間がかかる。
そんな力があるようには見えなかった。
まあ深く考えることはやめよう。
彼のおかげで、うちの宣伝ができた。
今日もしくは明日には忙しくなるのかなあという淡い期待を抱いた。
「ねえ、サエナギさん、みて色違いのスライム、見つけた。」
「いや、スライムも別に一色じゃないから」
「でも大体青だよ。これ真紫色だよ。」
確かにこんなに目がチカチカするようなスライムは見たことがなかった。
「飼ってもいい?」
「やめとけ、お前ちゃんと世話できないだろ。」
俺は手をバッテンにして、彼女の意見を否定する。
「ちゃんと育てるし、スライムにスラちゃんって名前つけて愛でてあげるし」
ケリーの決意は堅いように見えた。
しかも、ここは俺の家ではない。
そもそも口出しできる立場になかった。
「でもさ、スライムって何を食べるか知ってるか?」
「えっ知らない、バナナとかキャベツとか?」
俺は、首を横に振り窓の外を眺めた。
「うさぎの肉、だよ。」
「ムーーン」
ケリーの表情は一気に曇り、真紫スライムを外に返した。
「スライムって肉食なんだね、へえそうなんだあ」
棒セリフだ。
それから数日、彼女は棒セリフだった。
「キャベツ、ナマ、オイシイ」
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