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紅蛇悲歌  作者: 西戸 恵
1/1

中国の古い悲しい恋歌

昔書いた物語を備忘のため書きました。


前編

これは中国の古い歌をもとにして作った悲恋物語である。


一、

時は西暦590年、北周の外戚で権力を握ってあた楊堅が北周(北朝)を倒して隋を建国し首都を長安と定め、目の上の瘤であった難聴の陳を滅ぼして中国統一を実現させた時代であった。楊堅は自ら文帝と名乗り、中央集権樹立に力を注いだ。次々と打ち出されていく新しい社会体制は長期に渡る南北朝時代の地方分権政を強力な皇帝制へ変えるための大切な改革であった。この時、地方有力貴族たちの門閥貴族化の原因であった九品中正が科挙の学科試験に変わったのは中国史上重要なことでもあった。まさに、隋は中国における実力主義幕開けの時代といっても過言ではない。今まで高官には身分が問われていたが、この科挙により能力のある者たちにも望みが持てるようになった。にわかに国中は勉学に活気づく、そんな時代の物語である。


ニ、

首都大興(長安)より黄河を少し下ったところに大興と並ぶほどの都、洛陽があった。そこ洛陽の民家のひとつに李紅蘭と李青霖と名乗る白皙の美人姉妹が住んでいた。実はこの姉妹の正体は中国古来から恐れられる大蛇であった。名もなき人里離れた山々に囲まれる泉に住みついていた赤大蛇と青大蛇が人に変幻しているのだ。一口に変幻と言うが、簡単にどの大蛇も変幻できるわけではない。長い間の努力と修行を積んだ果ての成果であり、一朝一夕で身にできる物ではなかった。そのため千年ほど生きる紅蘭に比べ青霖はたった五百年しか生きておらず、長時間人になっていることができずにいた。気を抜くと床を這ったり、木や柱は、巻きついたりしてしまうのだ。大蛇の姿で寛ぐ青霖に度々紅蘭は注意をしていた。もともとが大蛇であるのに、人の仮初の姿になり続けることを求める紅蘭に青霖は問う。


「何故、人の姿になりたいの?」


紅蘭は独特の香りのする茶を飲みながら、優雅に首を傾げて天女を思わせる顔を喜色に染めながら言う。


「人が何のために生きているか知りたいの。人は私の知らない感情というものを持って、何かを探して生きているから、それを知ってみたいと思うのよ」


なにか宝物探しをしてきるように楽しげに笑い語る紅蘭の挿す金の蘭の簪がその心模様を表すように楽しげに音を鳴らす。


「紅蘭の言っている意味が理解できないわ」


紅蘭の言葉は青霖にとっては退屈な、理解できないものだった。青霖は柱に半身を巻きつけ、自らの薄い青色の裳の裾をいじりながら納得のいかない表情で紅蘭を見返した。青霖の感じる「人」は紅蘭が思うほど魅力的なものでも高尚なものでもなかった。「仕事」や「お金」のために何かを犠牲にして生きている「人」を理解して何が面白いのか。青霖にとってまいにが刺激的で面白ければ「人」の姿をしていなくても一向に構わなかった。





出会いから運命が狂うまでは後半に。

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