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狂った女神が歌う世界で、僕は魔女に恋をした。  作者: 絶華 望(たちばな のぞむ)
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1階攻略 仲間集め

 僕は守護者の塔を攻略する前に仲間を集める事にした。一人でも塔は登れる。だが、最上階の女神を倒すのは一人では無理だと思った。何故なら、伝承では女神を倒すのはいつも四人の英雄だった。

 一人で倒したという伝承は無かった。だから、仲間を集めていくことにした。塔に挑戦する時のメンバーは最大で四人、最低で一人だった。僕は仲間を集める為に、冒険者ギルドに入った。

 そこには、色んな冒険者が居た。剣士、戦士、騎士、魔法使いと様々なクラス、様々な服装の男女が居た。掲示板らしきものに挑戦階数と募集人員のクラスと装備が書かれた紙が無数に張り付けられていた。何気なく全体を見ると、最高でも二十階で一階とか二階の依頼もあり、全体的に塔の攻略が進んでいない様子だった。

 僕は、張り出されている募集依頼の中から一階でアタッカークラスを指定している募集を探した。何個かあったが、バランスが良いと感じたパーティに入る事しにした。募集の紙を手に取り、受付のお姉さんに渡した。お姉さんは紙をみて、僕に質問してきた。

「初めての方ですか?」

「ええ、そうです。一階を攻略したいのですが、このパーティに入れて欲しくて」

「畏まりました。では、こちらのギルドカードをお取りください」

 受付嬢が指示した場所には、手のひらサイズのガラス板の様なものが十枚ほど置かれていた。

 僕は、一枚手に取った。するとガラスに文字が浮かび上がった。


 クラス:忍者

 名 前:アラン・シェード

 階 層:零階


「それを使えばお目当てのパーティが探せますよ」

「どうやるんですか?」

「画面を触ってください」

 受付嬢に言われるがまま触ると、パーティ検索画面が表示された。階層検索とパーティ番号検索の二種類があった。

「パーティ番号検索を選んで、こちらの紙に書いてあるパーティ番号を入力してください」

 受付嬢に言われるまま操作をすると、画面に冒険者ギルド地図が表示され、赤い点が表示された。

「その赤い点にお目当てのパーティのリーダーが居ますので、交渉してみてください」

「分かりました。ありがとうございます。えっと、ギルドへの登録とかしなくても良いんですか?」

「もう、登録されていますよ。そのギルドカードを持つ事で、登録は完了しています」

「すごいですね。どういう仕組みなんですか?」

「この世界を作った神が用意したものなので仕組みは解明されていません」

「そうですか、色々教えてくれて、ありがとうございました」

「それが、仕事ですから、塔の攻略頑張ってくださいね」

 そう言って受付嬢は笑顔を見せた。

「はい、頑張ります」

 僕は、そう答えて赤い点の場所へ移動した。


 そこには、四人掛けのテーブルに三人が座っていた。

「募集依頼を見たよ」

 僕が話しかけると金髪の優男が答えた。

「ギルドカードを見せてくれ」

「どうぞ」

 ギルドカードを見せると金髪の優男は驚いた表情で言った。

「忍者だと?その歳で上級職なのか……」

「うそ、ホントに?」

 水色の髪、ストレートの長髪、落ち着いた雰囲気の清楚系の可愛い女の子が言った。

「驚くこともあるまい。今の時期に冒険者になり、塔へ挑戦する上級職の新人と言えば、ゾディアックの勇士だろう?」

 赤髪の知的な優男がそう言った。

「ゾディアックの勇士?」

 僕は聞いたことのない単語を耳にし、聞き返した。

「違うのか?」

 質問が意外だったのか、赤髪の優男が驚いていた。

「ゾディアックの勇士ってなに?」

 僕の問いに赤髪の知的な優男が答えた。

「そうか、当の本人たちが、そう呼ばれている事を知らなくてもおかしくは無いか、もともと剣闘士で世界のニュース等、知る由も無かったのだろう」

「確かに、ニュースの類は入ってこなかったな」

「なら、説明するよ。ゾディアックの勇士とは剣闘士の中から選ばれた十二人の精鋭たちの事だ。何故、黄道十二宮ゾディアックの名を冠しているかだが、十二人を選抜する時に参加者を星座毎に振り分けてトーナメントを組んだ事から、ゾディアックの勇士と呼ばれている。名前は公表されていないが、塔へ挑戦する事は報じられていた」

「なるほど、それなら確かに僕はゾディアックの勇士だ」

「すごいな、アランと一緒なら一階を簡単に攻略できそうだ」

 金髪の男が喜びの声を上げた。

「実力は認める。だが、募集条件はアタッカーだ。上級職とはいえ武器が貧弱では、役に立たない」

「募集条件はちゃんと確認している。これが、僕の武器だ」

 僕は、懐から闇の宝珠を取り出した。

(闇の精霊、刀になってくれ)

 僕の願いで、宝珠は刀となった。漆黒の鞘に収まった漆黒の刀、それを見た三人は固まった。

「それをどこで手に入れた?」

「闘技場で師匠から譲り受けた」

「そうか、あの方の後継者か」

 赤髪の男はと納得したように言った。

「師匠を知っているのか?」

「直接、会ったことは無い。伝説の人だから知っているだけだ。彼は救国の英雄だ」

 それは、師匠から聞かされていない事実だった。

「救国の英雄?」

「知らないのか?」

「師匠は、闘技場に居る理由は、貴族から恨みを買ったからと言っていた」

「そうか、それしか聞いてなかったのか、エルダー・シェードはロール王国の国王を暗殺した英雄だ」

「王殺しが?英雄?」

「そうだ。そもそもクリシェラル帝国が、なぜロール王国に攻め入って来たのか知っているか?」

「圧政からの解放だと聞いている」

「その通り、ロール王国の暴君ネロを倒す為に攻めたのだ。だが、戦争となれば大勢の人が死ぬ。実際に多くの都市が戦争によって滅んだ。ただし、都市を滅ぼしたのはロール王国の騎士だがな」

「知っている。だが、なんで自国の民を殺したんだ?」

「実にくだらない理由さ。クリシェラル帝国が攻めて来た時、ロール王国の都市の住民が歓呼を持って帝国軍を迎え入れたからさ」

「そんな理由なのか?」

「ああ、命令を出したのは暴君ネロ。実行したのは騎士たちだった。都市を奪還し、住民は子供以外皆殺し、子供は奴隷にする。反吐が出るほど狂った命令を出した。そんな中、エルダー・シェードは国王を暗殺した。だから、戦争は終結し犠牲は最小限で済んだ」

 これは、知らされていない事実だった。そして、クリシェラル帝国を憎んでいた自分が間違いだったと気付いた。また、師匠がその事実を伝えなかったことも納得できた。

 僕はずっとクリシェラル帝国を憎んできた。戦争を仕掛けて来た悪い国だと思っていた。そんな、自分に師匠がクリシェラル帝国の味方をしたと話せば信用を失うと思ったのだろう。

「師匠……」

「だが、そんなエルダー殿を快く思わなかったのがロール王国の貴族たちだった。彼らはエルダー殿を処刑しようとしていた。エルダー殿は抵抗することなく貴族たちに囚われた」

「なんで?師匠なら誰が相手でも逃げ切れるはずなのに……」

「理由は分からないが、エルダー殿は抵抗しなかった。そして、処刑の日が公布された。それを聞いたクリシェラル帝国の皇帝マルスは、エルダー殿の処刑を止めようとしたらしいが、結局ロール王国を併呑するために貴族たちの協力が必要だったから、政治的な取引の後でエルダー殿は闘技場に送り込まれたと聞いている」

「教えてくれてありがとう」

「いいんだ。救国の英雄の後継者なら、俺に異論はない。俺は、火魔術師のマゼンダだ。よろしく頼むよ。アラン」

 マゼンダは、そう言って手を差し伸べて来た。

「ありがとう。こちらこそよろしく。マゼンダ」

 そう言って僕は赤髪のマゼンダと握手した。

「俺は、騎士のキース。一応リーダーをさせて貰っている。よろしくな」

 金髪の騎士キースは爽やかな笑顔で手を差し出した。

「こちらこそ、よろしく」

 キースとも握手した。

「私は、水魔術師のシアン。よろしくね」

 シアンも笑顔を見せて手を差し伸べた。

「こちらこそ、よろしく」

 シアンとも握手した。

「それで、みんな準備は万端なのか?」

 キースがみんなの顔を見て確認する。

「僕は、問題ない」

「俺も大丈夫だ」

「私もオッケーよ」

「じゃあ、出発だ」

 このメンバーはバランスが良かった。タンク役のキース、魔法アタッカーのマゼンダ、回復補助のシアン、そして物理アタッカーの僕。

 これで、一階の攻略は確実だと思った。


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