その腐女子、困惑。
腐女子とは、漫画・アニメ等の美少年同士の恋愛を愛好する女性の事である。
また、この嗜好をボーイズラブ(BL)・やおい(801)・腐趣味と呼ぶ。
「腐女子」という名称は「こんな趣味で興奮してる私達は腐ってる」と当人達が「婦女子」をもじって自虐的に自称したものが始まり。
ただし、あくまでも「男性同士の恋愛を妄想するのが好き」なのであって、現実のゲイに好意的だとは限らない(むしろ全くの別物として区別していることが多い)ことには注意が必要である。
私、染井由乃は、BL大好きな、いわゆる腐女子である。
「ふふっ…」
しまった。つい、声が出ちゃった
まぁ、今のは結構良かったし、しょうがないよね
今は授業中という名の妄想タイム。その妄想があまりにもよかったから…
でも、誰も気づかない。みんな、先生の話を聞いていたり眠たそうにしてる
私に誰も気づかないのは、私の座席が窓側の一番後ろだから
そして、私には、友達がいないから
だから、だぁれも気づかない。つまり、ここの席は天国!
担任の先生も席替えはしない主義。
みんなの名前が覚えられないかららしいよ(´・ω・`)
友達は昔から作るのが苦手。
自分から話しかけたりできないし、話しかけられてもコミュ障発動しちゃって…。
もちろん、好きな人もいない(むしろ、男子同士で付き合ってください)
まぁ、私はそんな感じの高校生活を送っている
そんな私に、数週間後、恋が到来するなんて思いもしなかった…
お昼休み。やることは毎日一緒。
お昼ご飯を食べて、読書。これだけ。
………今、便所飯だって思ったでしょ?
それが違うんだなー。教室なんだなー
トイレは女子が集まってメイクしてるから、落ち着いて食べられないんだよね。
それなら、教室の方がぜんぜんいい!
「ごちそうさまでした」
お弁当を食べ終わると、手を合わせ、しっかり食材に感謝をする。
昔からお母さんに言われていたことだ。
そして、すぐに本を取り出した。
今読んでる本は、不良男子と地味男子のBL本。
すんごい面白くて、また妄想が広がる♪
私はしおりが挟まっているページを開くと、目をキラキラと輝かせて続きを読み始めた。
そのときだった
何人かとふざけて遊んでいた男子が、私の机にぶつかってきたのだ。
(えっ、こわ、え?????)
私はびっくりしてその男子を見上げた。
すると、すぐに私の方を見て、
「わりぃ!」
と、両手を目の前で合わせて一言、とても申し訳なさそうに謝ってきたのだった。
しかし、人と上手に話せない私が、「ううん!大丈夫だよ!」なんて言えるわけもなく…
「え…ぁ、は、はぃ…」
と、自分にすら聞こえないような声で返事をした。
そして、私は本の続きを読み始めようとした。
けれど…
「なぁ、ごめんって…」
さっきの男子が更に謝ってきたのだった。
「え…。」
私の返事が聞こえていなかったからだろうか…。
さっきは急に話しかけられて、よく見ていなかったけれど、顔をみてみると、私でも見たことのある人だった。
名前は知らないけど、確か、クラス外でも人気がある人だった気がする。
前に図書室に行く途中で、女の子からラブレターを貰っているのを見たような見ていないような…。
顔は、すっごいかっこいいってワケじゃないけど、整った容姿で、女子ウケもよさそう
(…受けだな。「や、やめろ!」とか抵抗しつつ…)
って、そんなこと考えてないで、今は現実を見よう。
なぜ、こんなにも謝ってくるのか…?
「もしかして、怒ってるか?」
いやいやいやいや、謝ってくれた人に怒るなんてそんなことないです!マジで!
私はどうすればいいのでしょう神様仏様お助けくださいいいいいいいいいいいい
「い、いえ、そんな、怒ったりとか、ないです…」
私はとてもがんばった。とてもがんばって、返事をした。しかも男子相手に。自分を褒めてあげたい。
えらいぞぉ自分!今日は赤飯だ!!!!!!!
「ならよかった!全然返事してくれないから、ぶつかって怒ってんのかと思ったー!じゃあな!」
そう言うと、その男子は仲間のところへ帰って行った。
走り去っていった…。
こわ…。コミュ力高い人…こわ…。
でも、…久しぶりにちゃんとした会話をしたなぁ…。
クラスの人とこんな長時間(およそ3分)会話をしたのは何年ぶりだろうか…。
こんなこと、高校生活最初で最後の出来事かもしれないな。