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9. 東田子の浦

 13時06分、東田子の浦駅に到着。

 なんと、降りた目の前に名所案内の看板があった。駅の北一帯に沼が広がっているのと、徒歩10分の所に古墳があるらしい。まずは沼に行ってみますかね。


 またしても、青春18きっぷを見せる相手はいない。居合わせた青春18仲間のみなさんも戸惑いを見せているが、犯罪ではないと言い聞かせ(実際、犯罪じゃない)、改札を通過。


 出口が南側にしかないので、線路を越える場所を探そう。駅舎から右に回り込むと・・・、



「富士山、近っ!」



 実際に、声に出してしまった。雪の冠をかぶっている富士山が、近くに見えた。片浜から2駅しか進んでなかったのだが、なぜさっきは気付かなかったのだろうか。

 踏切は、左の方に発見。タイミング悪く踏切が下りたので、そばの段差に座り、真っ白の頭だけが見える富士山を眺める。駿河湾と言い、富士山と言い、静岡に来た実感がすごい。


 その踏切を渡ったあと川にぶつかったので更に左に行き、沼が広がるとされる北を目指した。富士山を見ながら北へ北へ。


 大通りに着いた。標識があったのですぐに分かった、国道1号。東京を出て、今回の旅に縁の深い国道1号と、日本一の高さを誇る富士山の、夢の共演だ。

 沼の場所は分からないままなので、歩道橋を上がってみた。だが特にそれらしいものは見当たらない。とりあえず歩道橋は渡るとして、結構西に来たから東に戻ろうか。


 橋を渡っていると、町内放送のようなものが流れ始めた。「行方不明者の、捜索について、ご協力を、お願いします」とのことだった。え・・・行方不明者? 「○○にお住まいの、△△さん」、さらに年齢。今日の朝6時以降、姿がないのだそう。身長、髪型、服装などの特徴も放送された。無事に見つかるといいのだが・・・。


 歩道橋を渡り終え、1号線に沿って東へ。途中、茶色のススキ畑のような広い場所が現れた。富士山がきれいに見えるから、しゃがんでカメラを構えている人の姿もある。

 少し歩いたところで看板があり、富士市が自然公園予定地にしているのだそう。刈り取られた葦は市役所に連絡すればタダでもらえるらしい。確かに、刈り取られたものが積まれている。あと、これ、ススキじゃなくて葦だったのか。刈り取られているのは手前の部分だけで、奥では普通に葦と思われる植物が残っている。あと、草が散ってしまった木もある。富士山の緑とは対照的な茶色だが、その富士山がきれいに見えるから、整備すれば良い公園になることだろう。富士市の頑張りに期待したいところだ。


 自然公園予定地ということは、沼はここにあるのではなかろうか。この葦畑(畑というほど整備されてないけど)には桟橋が掛かっており、内側に入れる。その入口に看板があった。すっごい色あせてるけど。書いてあった文字は、「浮島ケ原自然公園」。ん・・・? 公園予定なのか、既に公園なのか・・・。とにかく、駅の観光案内にあった沼の名前は「浮島沼」だからここが確実で、この看板の地図にも沼っぽいものがあるから確実だ。入ってみよう。


 木で作られた、桟橋を進む。なぜ葦が生えてる場所に木の桟橋なのかは知らないが、これはこれで風情があっていい。途中、沼にいると思われる水生生物を紹介する看板があった。これも色あせてるけど。メダカにモクズガニ、ウナギもいるらしい。へえ。でもなんで、沼のそばじゃなくてここに?


 それから、2分か3分かぐらいは歩いただろうか。


 ・・・沼、なくないか?


 結局、葦畑の縦断しきってまった。一直線ではなく、看板の地図を見た印象で左に曲がったりもしたし、周囲には目を配っていたのに、沼が見えない。葦畑の奥には、普通に緑の整備された畑と、何かの工場。絶対もうこの一帯の敷地じゃない。後ろの一帯のどこかに、沼があるはずだ。


 今いる場所の右、この一帯の北東の角に小屋が見えたので行ってみた。管理棟のようなものと、色あせていない看板。やはりこの一帯が、沼のはず。管理人室とされる場所に、人はない。トイレのセンサーライトは作動し、水は流れた。でも、どうあっても目の前は茶色の葦や枯れた木だけで、沼はなさそうだ。


 ・・・・・・まさか!


 この葦畑が、沼だったんだ。地図での位置関係、木の桟橋、水生生物の看板。もう、そうとしか考えられない。マジかよ。駅の名所案内に書いてあった沼が、干上がっちゃってるよ。駅の案内にはフナ釣りできるみたいなことも書いてあったのに・・・。それが、水さえない。こんなことが、あるなんて・・・。富士山はすごくきれいで、整備すれば良い公園になるだけに、もったいない。


 もう結構時間が経った。古墳もどこにあるか分からないし、昨日の疲れも残ってるから、駅に戻ろう。沼がないという事態に見舞われたが、散策自体は楽しめたと思う。



 沼の跡地から線路の南側に行く道はすぐに見つかり、来たルートと合わせてぐるりと回る形で駅に戻った。

 駅のそばには、六王子神社なるものがあった。東京には(神社じゃないけど)八王子があるが、こっちは六王子のようだ。鉄の輪が妙に歪んだアーチを描く変わった形の遊具があった。


 作法を知らないので神社には入らず、駅へ。そして見つかる、「浮島ケ原自然公園」の案内図・・・。こんな緑はなかったよ・・・。サワトラノオ(白い花のようだ)なんて咲いてなかったよ・・・! ここまで実物と違う観光案内を、初めて見たぞ。あれを放置するのは構わないが、観光案内板については見直すことをお勧めする。


 でも、雪化粧の富士山と茶色の葦畑のセットは、それはそれで見応えがありました。


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