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人生初の彼女が出来ました……

教室に入るといつもと違う光景が目に飛び込んできた。

なぜか人だかりが出来ていたのだ。

どういう事だ?と少しだけ気になったが、俺には関係ない事と割り切り机に伏せる。


「速水さん、修学旅行のグループまだ決まってないんだよね?良かったら僕達の所に来ない?」


「おい、抜けがけするなよ。速水さん俺達のグループに入ってよ。絶対楽しいからさ」


別に聞きたくないが否が応でも耳に飛び込んでくる。

昨日まで地味音とか言って馬鹿にしていたクラスの連中の豹変ぶりが気になり、件の人だかりを見やる。


あれ?どっかで見た事あるぞ……あ、あれだ!!こないだガラの悪い奴らに絡まれてた美少女だ。

あれ、速水さんだったのか…しまったな。よりにもよって喧嘩してる所を見せてしまった。

はぁ……まぁ口止めしておけばいいか。起きてしまった事は仕方ないしな。


「速水さん、こいつらのとこよりも俺達のグループに入ってよ」


よく見てみると彼女の周りに群がるのは男子生徒ばかりで、その様子を周りで女子生徒が苦虫を噛み潰したような顔で見ていた。


速水さんこのままだと女子との溝はますます深まりそうだな。

別に俺には関係ない事だけど……。と言うかそもそもなぜイメチェン?したのだろうか。


「せっかく誘ってくれたのにごめんなさい。私もうグループに入ってしまったの」


「「「え…!?」」」


男子からも女子からも同じ様に驚きの声が上がった。


「前に藍原君から誘ってもらってたのは皆知っていると思うけど、昨日宜しくって返事したんだ。だからごめんなさい」


待て待て。俺は修学旅行には行かないからと昨日お断りしたはずだ。

そして男子からは刺さる様な視線を向けられているがそれはお門違いもいいとこだ。


ここは皆の前で否定しなければと思い席を立ち彼女の元まで詰め寄る。


「ちょっと待ってくれ。俺昨日、修学旅行に……」


「藍原君は黙ってて」


向けられているのは笑顔なのに、何故か有無を言わせないといった迫力を感じ口を噤んでしまった。


「でも、二人って寂しくない?なんなら藍原君も一緒に俺達のグループに入れば?」


おお、それは名案だ。当日にいきなり体調が悪くなったとかもっともらしい理由をつけて行かなければいいだけだしな。


「そうしたらお言葉に甘……」


「ごめんなさい、折角だけど修学旅行は誰にも邪魔されず彼と二人で楽しみたいの」


「「「え゛……」」」


この驚きにはもちろん俺も含まれる。

自分で言っておきながら、何故か速水さんは頬をほんのり赤く染めてもじもじしている。

普通ならそんな仕草を可愛いとか言う奴もいるかもしれないが、あいにく俺には通用しない。


「ちょっと待ってくれ。速水さん俺昨日」


「藍原君、待って。それは私の口から言うわ」


また最後まで喋らせてもらえなかった。

というか、俺達意思の疎通出来てないよね?また何か変な事を言われるかもしれないと思った俺は即座に昨日のやり取りを公表しようとしたが、彼女に先手を打たれてしまう。


「私達昨日から付き合い始めたの(←友達として)だから私達の邪魔はしないで、お願い!!」


はぁぁぁぁぁぁあ………!?

本気で意味分からないんですが!?というか捏造し過ぎだろ。俺達いつから恋人になってんだよ(←勘違い)

流石に我慢の限界に達したオレは彼女の耳元で声を低くして囁く。


「おい、お前どういうつもりだ?いい加減にしろよ」


「な、何よ。可愛い子は甘やかすんでしょ?だったら私も甘やかしなさいよ」


そう言って小さく頬を膨らませる速水さん。大抵の男はこれで落ちるだろう。だが、これも俺には通用しない。この程度なら見慣れている。


「可愛いから甘やかすのは妹限定だ馬鹿」


そう言ってバッサリ切り捨てる。


「そんな……」


俺の言葉にショックを受けた様で目に涙を溜めている。

こ、ここで泣くのは卑怯だぞ。俺が一瞬怯んでしまったのを彼女は見逃さなかった。

その瞳から一筋の涙が溢れた。


「ああ、くそ。分かったよ、修学旅行には行くから。だから泣くなって」


その言葉を聞いた彼女が俺から顔を背ける。振り向いた時、彼女の瞳から涙は消えていた。


「優太君、改めて宜しくね!!」


そう言って惚れ惚れする様な笑みを浮かべる彼女。

俺は知らない、彼女が顔を背けた時に舌を出しながら涙を拭っていた事を…。

そしてこれから先、この破天荒な美少女に振り回される事になる事を……。


俺初めての彼女が出来ました(←勘違い)

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