暴かれた真実(笑)
徹夜の影響もあり、昨日は早々にゲームを切り上げる事となってしまった。
当然の事ながら、真白ちゃんのルートを終わらせる事は出来なかったので今日は集中してやろうと思った矢先、俺の携帯が鳴った。
こんな朝早くから誰だろうと思ったら……速水さんからだった。
「もしもし?」
「あ、出た……」
「いや、普通に電話かかってきたら取るだろう」
「そ、そうだよね。あのさ、質問があるんだけど修学旅行の間は学校に行ったりするの?」
唐突に質問された。
「先生からは行けと言われたけど、自習するだけだから行かない事にしたよ」
どうせ行ってもやる事が自習なら、家でゲームでもしていた方がよっぽど有意義だろう。
「そ、そうなんだ……」
俺の返答を聞いた彼女の声のトーンが下がる。
「というか集合時間過ぎてるよな?俺に電話してて大丈夫なの?」
「あ、うん。先生から頼まれて電話してるの。先生、藍原君に居残り中の課題を渡し忘れてしまった上に持ってきちゃったんだって。郵送したいけど藍原君の住所が分からないから、それで調べてくれって……」
げっ……課題とかあるのかよ。ゲーム三昧の計画がいきなり狂ってしまったが仕方ないか。
俺は速水さんに住所を伝えると電話を切った。
届くのは明日以降だろうから、とりあえず今日だけはゲームを心置きなく楽しめる。
何としても真白ちゃんだけは攻略しておこうと早速ゲームを起動する。
暫くゲームをしているとチャイムが鳴った。
俺の家を訪ねてくる人に心当たりがないので無視していると、再度チャイムが鳴った。
話が盛り上がっている所で邪魔が入ったので、舌打ちしながら玄関に向かう。
「はいはい、どなた!?」
少し強めの口調で出てしまったので、訪問者の肩がびくっと震えた。
マスクをした女性だ、見るからに怪しい。
「新聞なら間に合って……」
「勧誘じゃないよ!!」
出会って早々に怒鳴られました…ん?この声はまさか速水さん!?
「ど、どうしたの!?」
「私1人で修学旅行に行けると思ってたの?あなたのせいで私も行かなかったの。親にも言えないし行くあてもないから責任取って!!」
責任……!?ホテル代を出せって事か!?いや、先日の大盤振る舞いのせいで今月は小遣いどころか生活するのもギリギリのラインだ。
「その…俺が悪かったのは分かった上で言わせてもらうと、今月は使えるお金ないんだ…。だから宿泊費を出してあげられない。俺、親御さんに事情説明するからさ、それで勘弁してくれないか?」
「私の家、母子家庭なの。友達が居ないのお母さん知らないから心配かけたくない……」
俺は彼氏だから友達とは違うもんな。そしてこの状況に対する打開策もすぐには浮かんでこない。
「そうだったんだ……と、とりあえず立ち話もなんだから部屋に入る?」
「へっ!?」
結局なんて返したらいいか思いつかず、話も長くなりそうだったので考えなしに誘ってしまったが、いくら彼氏とは言えいきなり部屋に誘われたら引くよな……。
急いで訂正しようとしたが、その前に彼女が小さく分かったと言った。
初めて自分の部屋に女の子を招いたので落ちつかない。
何か話しかけないとと話題を探していると、彼女が鋭い視線をとある一点に向けている事に気付いた。
その視線の先を辿れば、そこはテレビ画面…画面では俺(←ゲームの主人公を脳内変換)と真白ちゃんが夕日を背景に熱いキスを交わしていた。
「…………」
「藍原君ってこういう子が好みなんだ……」
「…………」
なんとなく彼女の機嫌が悪くなってしまった様なので、誤魔化す為に先程から気になっていた事を質問する。
「ところで速水さんなんでマスクしてるの?」
「か、風邪気味なの……」
「体調悪いなら尚更帰ったがよくない!?」
「やっぱり花粉症!!だから大丈夫」
花粉症と言うが、昨日までそんな素振りは一切なかった。
たまたま今日から発症したのだろうか?そもそも風邪と花粉症って間違えるものなのだろうか?
訝しく思いながらも、何か事情があるかもしれないのでこれ以上は追求しない事にした。
部屋が沈黙に包まれる……。お互い相手の出方を伺っている、駆け引きは既に始まっていた。
暫く続けたものの、無言の駆け引きに飽きてしまった俺は彼女が何故地味な格好をしているのか気になってしまった。面倒事を避けてという理由なのだろうと決めつけていたが果たして本当にそうなのだろうか?
せっかく容姿に恵まれているのだからそれを表に出せば、もっと楽しく人生過ごせるだろうに……。
俺なんかより素敵な彼氏だって……ん?そういえばこないだ彼女がナンパされた時、待ち合わせてた男が居たよな……。
そこで俺は気付いてしまった……。
初めて出来た彼女は二股を平気で出来る子だった。




