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地味太、地味音にフラれる

なぜ他人から嫌われてしまうのだろうか。

妬み嫉み僻み……色々な要因が挙げられるが、僕は人に嫌われる事をした覚えはない。


休み時間は机に突っ伏して他人との会話を拒み、成績は下から数えた方が早い程度の頭脳、見た目は視界に前髪がかかり眼鏡をかけているだけ。もちろん運動で活躍する事もない。


可はなく不可はそれなりにある事は自覚があるものの、この状況になる理由が分からない。


この物語の主人公である藍原優太は今一つの苦境に立たされている。

今年2年生となった彼は、来週から行われる修学旅行のグループ分けを行なっているところである。

クラスは30人編成、仲良しで集まった結果4人の7グループが既に出来上がっていた。


どこかのグループに加えてもらおうと思って見渡してみるが、どこもお断りという雰囲気に包まれておりとても頼みにくい。


グループを既に決めているのは28人か……。既に出来上がっているグループへの参加は困難とくれば、グループに入ってない人に声をかけるしかないか。と言ってもあと一人しかいない訳で、その一人に目を向けるとちょうどあちらも俺を見ていた。


おさげ髪の黒縁眼鏡。制服はスカートを短くする事もなく校則の通りしっかりと着こなしている。

地味な容姿な上に、性格は根暗。彼女が笑ったところを見た者はいないとまで言われる始末。

まさに女版の俺と言っても過言ではない彼女の名は速水涼音。

全く涼しさを感じさせない彼女は、地味音じみねと揶揄されている。


そして俺は優太の名前に似ても似つかない地味太じみたと呼ばれていた。


俺と彼女でグループを組むのは、それはそれで問題の気もするが、背に腹はかえられない。

一人修学旅行という黒歴史だけは作ってはならない。

そう思った俺は、なけなしの勇気を振り絞り地味音もとい速水さんに声をかける。


「速水さん、まだグループに入ってないなら良かったら俺と一緒にグループにならない?」


彼女はそう言った僕を、冷たい目で見るだけで一向に返事をくれない。

業を煮やした俺は改めて同じ質問をする事にした。


「速水さん、まだグループに入って……」


「無理。何が悲しくてあなたみたいな地味な人と二人だけでグループにならないといけないの?それなら一人でいいわ」


唖然としてしまった。クラスで一番地味な女の子に地味と言われたせいで、このやり取りを見ていたクラスメイトから失笑される。


「おい、見たか?地味太が地味音に振られたぜ」


心ない事を言うクラスメイトを思わず睨みつける。


「怖っ。地味太が振られた腹いせに睨んできたよ」


そう言って全く悪びれる様子もない。

これ以上は何を言っても仕方ないだろう。


それよりも地味音のくせに、俺に恥をかかせやがって……。

絶対に詫びを入れさせてやるから覚えていろ。

小者みたいな捨て台詞を心の中で呟き俺は教室を後にした。

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