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続・絶望の塔

「みなさまおかえりなさいませ。前回の中断ポイントから再開しますか?」


 タワー・オブ・デスの受付嬢、ラニーニャが聞いて来る。私たちが頷くと、目の前が暗転し、次の瞬間、私たちは昨日到達した45階の石碑の前に移動していた。


「さて、残り15階、張りきっていってみよー!」


 弓子が元気よく気勢を上げる。私たちも口々に声を上げた。螺旋階段を登り、46階に辿り着く。そこにいたのはレッサーデーモン娘だった。


「やっぱり、ここから先のフロアは悪魔のようですわね」


「ですね。僕の腕の見せ所です」


 コランドの言葉が頼もしい。実際、弓子の罠とコランドの退魔結界で、レッサーデーモン娘は楽勝だった。続く47階の悪魔の人形リリー、48階のグレーターデーモン娘、49階の悪魔の手品師アンヘル・ザ・マジシャンも蹴散らし、50階に現れたのは聖なる魔王、アンバサだ。私にとっては初めて戦う魔王だったけど、その強さは昨日のクシャナトリフに比べれば可愛いものだった。コランドが幾度となく倒して慣れていることもあり、結局5分程度で討伐に成功した。


 50階以降も似たようなものだった。いくら敵が居ようとも、悪魔である以上こちらには十分すぎる火力があるのだ。流石に各種のメイド悪魔を引き連れた55階のメイドの魔王、シャロン・オレガノンには多少苦戦したが、それもユエの賄賂を使ったという程度の苦戦に過ぎなかった。そして……。


「遂に60階ね。やっぱり最後は、レジェンド・オブ・デスよね?」


「そりゃ、タワー・オブ・デスっていうくらいなんだから、レジェンド・オブ・デスがラスボスだよね、きっとww」


 薔薇雄の言葉には説得力がある。


「それに、確か魔王も含めて全種類の敵がでるんですわよね? レジェンド・オブ・デスはまだ出てきてないんですから、レジェンド・オブ・デスで決まりですわ」


 ユエの発言に私は違和感を覚えた。


「ちょっと待って、それって……」


「僕も今同じことを考えました……」


「なに? どうしたの?」


 心配そうに弓子が尋ねる。


「まだ剣の魔王レディウスフェン・フォイエルバッハにも、吸血姫カミラ=ミラカにも会っていないってことよ」


「まさかとは思いますが、60階で3連戦ですかね……」


「3連戦ならまだしも、同時に3体でてきたら、それこそ絶望するしかないわよ?」


 憶測で語っても意味がないため、私たちは階段に登り、60階のフロアを扉の外から窺ってみた。


「うわ、ナナミン当たりだわ……これ、なんとかなるの?w」


 扉の向こうで徘徊する3体の魔王を見て、ヤケクソ気味に薔薇雄が笑った。


「でも、ここまで来て諦めて帰るなんて選択肢はないわよね?」


「当然ですわ!」


「そうそう。当たって砕けろ、だよ!」


「うん、でも、ぞくぞくするねww」


「じゃあ、とりあえず作戦を立てましょう。まず申し訳ありませんが、ユエは最初から最後まで賄賂をお願いします」


「当然ですわ。わたくしはそのためにいるんですから!」


 ユエが力強く頷く。


「次に、ナナミンは一人でレディFを完全に抑えてください。その間に僕が姫、薔薇雄がレジェンド・オブ・デスを抱えます。ナナミンのカウンターと弓子の罠でまずはレディFを瞬殺する、ここまでが第一段階です。次に、薔薇雄はナナミンと交代してレジェンド・オブ・デスにアベンジを当て、回復薬や聖域結界である程度体力を回復したのちに僕に代わって姫を抱えてください。弓子はレディFの後は姫に罠を当てます。僕も、薔薇雄に姫を渡した後は、退魔結界で援護します。ただ、姫が憤怒に入ったら退魔結界の効果が期待できないので、弓子の罠と薔薇雄のアベンジで姫を殺してください。これが第二段階。そこまでいければ後はなんとかなると思います」


 魔王3体同時撃破という絶望的な難題ながら、コランドの立てた作戦は十分に実現可能であるように思われた。


「流石コランドね。その作戦ならなんとかなる気がしてきたわ」


「だねww 女装させとくには惜しいくらいの策士なだwww」


「わたくしもナナミン直伝の2ボタン賄賂で頑張りますわ!」


「ねぇ、ちょっと待って、カミラ=ミラカを見て思ったんだけどさ……」


 みんなやる気になって、そろそろ突撃、といった場面で弓子が制止をかける。


「どうしたんですか、一体?」


 コランドが心配そうに尋ねる。コランドの作戦に何か欠陥があるのだろうか? 私たちも一斉に弓子を見た。


「あの裸マント、恋をして超一流のマジシャンに早変わりした女の子って感じだよね!?」


「だから古いってww」


 相変わらず何を言いたいのかはよくわからないが、どうやら弓子の心には十分な余裕があるようだった。


「じゃあ、行くわよ」


 魔王たちができるだけ扉から離れているタイミングを計って、私達は60階に足を踏み入れた。


 幸い、真っ先に私たちを見つけたのはレディFだった。私は作戦通り、単騎でそれを迎え撃つ。


「ソードダンス・カウンター!」


 レディFのリズムは、既に覚えている。私は確実に秒速八閃の斬撃から後の先を取っていく。そこに弓子が罠を当てる。


 続いてこちらへ向かってきた取り巻き達に向けてユエが賄賂をばら撒き、コランドと薔薇雄がそれぞれ吸血姫とレジェンド・オブ・デスを引き受けるように立ち回る。


 ここが勝負どころだ。コランドは絶対領域、魔力障壁を駆使して自分と薔薇雄のダメージを抑えているが、それでも当然、聖域結界による回復分よりも受けるダメージの方が大きい。こちらが手間取ればおそらくは薔薇雄が持たない。私は放たれる連撃も、雷の刺突エクレル・フォントも、逃さずカウンターを当てていく。弓子の罠のおかげもあって、あっという間にレディFが憤怒に入る。


「はやっww」


 薔薇雄が嬉しそうな声を上げる。こっちにそんな余裕はなかったが、気持ちは同じだ。カウンターを完璧に当てられるのであれば、憤怒はカウンターのダメージを上げてレディFの寿命を縮めるだけなのだから。結局、薔薇雄の体力にかなりの余裕があるうちに、私と弓子はレディF撃破に成功した。これで後2体!


「薔薇雄、代わるわ!」


 私は作戦通り、薔薇雄に代わってレジェンド・オブ・デスを引き受ける。薔薇雄はレジェンド・オブ・デス にアベンジを当てた後姫を引き受け、弓子も姫を狙う。フリーになって少し手の空いたコランドが姫に退魔結界を当て始める。ここまでは見事に作戦通りだ。


 今日の私は絶好調だった。相手がレディFからレジェンド・オブ・デスに変わっても、ただの一撃も外すことなく完璧にカウンターを当てている。また、幸運にも、今回はレジェンド・オブ・デス の攻撃が魔法より物理に偏っている。結果、カミラ=ミラカとレジェンド・オブ・デスは、ほぼ同じタイミングで憤怒に入った。


「よし、あともう少しww」


 比較的余裕があるのだろう、薔薇男が歓声を上げた。そして……予想外の事態が起こった。


「魔力崩壊!」


 レジェンド・オブ・デスの後衛殺しが炸裂する。この技はコランドにはほとんど効果がないのだが……。


「え、嘘、なんで? なんで!?」


 レジェンド・オブ・デスの魔力崩壊が弓子に直撃したのだ。弓子は、即死した。


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