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オフ会のお誘い

『お疲れ~』


 とりあえず、俺はみんなを労った。本当に間に合って良かった。嬉しさがこみ上げてくる。


『疲れたけど、楽しかったー!!』


『うんうんww でも最後はほんと、まぢでダメかと思ったよww』


『弓子も薔薇雄も、泣きそうだったもんね?w』


 俺は少し意地悪に言ってやった。


『な、泣いてなんてないよ!?』


『ちょっと目から鼻水出そうになってたけどねww』


『あはは。でも、僕たちは信じてましたよ? ね、ユエ』


『ええ、もちのろん、ですわ!』


『それにしても、45階でこれだけ辛いとなると、この先が思いやられるわね』


 弓子は少し弱気になっているようだ。よほど、罠を当てられない状況が堪えたらしい。


『でも、45階までが竜族ということは、46階以上はきっと悪魔じゃないかしら?』


『ええ、僕もそう思います』


 ユエとコランドの言うとおりだろう。そもそも、この世界では、悪魔は魔王の直接的な眷属という設定である。最後のエリアの敵にふさわしい。


『そうか、つまり、コランド大活躍! なんだね!』


 弓子は元気を取り戻したようだ。確かに、コランドの退魔結界があれば、火力不足で悩む心配は格段に減るだろう。


『えぇ!? 今までは活躍していませんでしたか!?』


 コランドが少しいぢける。


『ううんw 誰も死ななかったのはコランドのお陰だよww』


『そうね。コランドがいてくれるから、私たちは命の心配をせず好きに暴れられるわけだし。感謝してるわ』


 これは俺の本音だった。俺たちがばらばらに戦ってもなんとかパーティーが破綻しないのは、ひとえにコランドの作戦とプレーヤースキルの賜物だろう。俺は心から、コランドと、そしてこのギルドの仲間と出会えてよかったと感じていた。


『そんな風に言われると、照れちゃいますね』


『いやいや、素直に褒められときなさい! お姉さんたちは本当に君に感謝しているよ!』


 女子大生のお姉さんに褒めてもらえるとか、少しコランドが羨ましい。


『ねえねえ、ところでさ、挑戦再開は、明日の夜だよね?w』


 よかった、嫉妬に狂う前に薔薇雄が話題を変えてくれた。


『ええ、みなさんさえよければ、そうしたいですね』


 コランドが頷く。それには俺も異論はなかったのだが……。


『じゃあさ、提案なんだけどさ、明日の昼、オフ会しない?w』


『えぇ!? いきなり!?』


 弓子が驚きの声をあげる。俺も驚きのあまり、薔薇雄の発言に自分の目を疑ってしまった。


『突然、どうしてですの?』


 ユエが尋ねる。当然の疑問だ。


『いや、実は私さ、東京住みなんだけど今出張で大阪にいるんだよねww ルナファンもネットカフェから接続だしw 確か弓子も関西だよね?w』


 そういえば、弓子は突っ込むときだけは関西弁になっていた。


『ええ、そうよ。そかあ、こっちにいるなら会ってもいいかも』


『でしょ!? 私も関西に来るなんて滅多にないことだしw 他のみんなも、関西方面住みなら是非参加してもらいたいかなってww』


『私は、京都ですから大阪集合でも問題ないですわよ』


 ユエがあっさりと同意する。や、やばい。俺も関西住みで大阪はそれほど遠くない。かと言って住みで嘘を吐くと地理的な知識の無い俺はすぐにボロを出しそうだ。


『コランドは?w』


『ぼ、僕は……大阪なら遠くはないのですが、その、女装しないとダメなんですよね?』


『もちろん!w じゃないとナナミン来てくれないよ?w』


『え、私はまだ行くとは言ってないんだけど……』


『ナナミンは関西住みじゃないの?』


『えっと、それは、関西住み、だけど……』


『じゃあ、コランドが女装しさえすれば大丈夫なだww』


『うわー、なんかすっごく楽しみになってきた! 何時にどこ集合?』


『時間は昼ごろかなw。そんで、コランドが女装で来るなら、違和感ないところがいいよねw やっぱ関西の秋葉原、日本橋でしょw』


『異議はないですわ。どこかいい集合場所をご存じですか?』


『そうね……駅前に竜の塒亭っていう、ファンタジーのロールプレイを楽しめる変わり種のメイド喫茶があるわよ!』


『いいねw 私たちにぴったりだww』


 どうしよう、話がどんどん進んで行く。まずい……。


『じゃあ、明日12時に竜の塒亭で! ナナミンも絶対来てよね! さて、もう12時だし、そろそろ明日に備えて寝るわ! おやすみ~』


『ちょ、ちょっと待ってよ!?』


 言うが早いか、弓子がログアウトする。


『わたしくも、露店落ちしますわ。ナナミン、明日会えるのを楽しみにしていますわね。ご機嫌よ~』


『私は、コランドの女装も楽しみだよww じゃあ、二人とも、また明日~ww』


 ユエも薔薇雄も、落ちてしまった。俺がオフ会に参加することを疑いもしていない、どうしよう、まずすぎる……。


『ねえ、コランド、本当に明日女装して行くの?』


『ええ……正直、かなり気は進みませんが、折角の今日の盛り上がりを冷ましてしまうのは、さすがに今後の付き合いを考えてもまずいですよね……』


 コランドの言うとおりだ。もし明日行かないのであれば、もうこれまでのように楽しくみんなと仲間付き合いすることはできないだろう。ギルドを抜けるしかない。


『とりあえず、私も落ちるわ』


 整理のつかない頭のままで、俺はログオフした。


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