取り返しはつかない
「やあ」
「元気にしてる?」
「あの、さ」
「その、」
「辛いってことはさ、わかったからさ」
「外に、出てきて、くれない…かな」
「…悪かったと思ってる」
「ちょっとした悪ふざけだったんだ」
「君がそんなに苦しんでるとは思わなかったんだ」
「謝りたいんだ」
「僕のしてきたことをさ」
「だから、さ」
「出てきてくれないかな」
「お願いだから」
少年は、しばらくドアの前で返事を待っていたが、やがてしびれを切らしてドアノブに手をかけた
「…そうだよね、入れてくれないよね」
「…プリント、ポストに入れとくから」
「戻って、きてよ」
「待ってるから」
少年が去り、問いかける声のなくなった部屋には、重いものをぶら下げた縄の軋む音だけが響いていた




