仲間?
そして、月は二人について行き、部屋に着いた。
そして不可解な事に、部屋に着くまでの間、僕たち3人以外の人間が見当たらなかった。
街は極めて静かで、足音でさえ響く音に聞こえる気がした。
二人は東京の高級マンションで土足のまま胡座になる。そして目の前に置かれた水を飲み干す。
「お前も早く座れ、これから話すことはお前に関係深い話だ」
「いくらお前でも、立ったままじゃぁ疲れるだろうがよ」
二人はそう言い、月をカーペットの上に座らせる。
月は正座になる。
「おいおい、男が正座なんてカッコがつかねぇだろうがよ」
「え?俺、女ですよ?」
酒を飲もうとしていた帽子の男の手が止まり、勢いよくコップを地面に叩きつけ驚愕する。
さっきまで男の様な声をしていたのにも関わらずものの数分で綺麗な可愛らしい女の子の声になった。
言われた本人がいきなり顔を伏せて、顔を真っ赤にして、帽子の男の後ろに隠れる。
「えっ?どうしたんですか?俺は女ですよ?ほらっ」
月はそう言い、背中に手を伸ばし手を動かす。
男二人は次の瞬間唖然とする。
いきなり月の胸が断崖絶壁から、Eぐらいまでに跳ね上がった。
「ほら?女でしょ?姿勢崩して良いなら俺はこの座り方にしますね」
月はそう言い、女の子座りをする。
「女の子だったのか!??え!?えぇ!??」
銀髪の男は三角座りになりながら一人でお経のようなものを唱え帽子の男は慌てまくっている。
「あのー、もとに戻しましょうか?」
「戻さなくて良いから!!少し時間をくれ!」
男はそう言い、凛祢の方に体を向けた。
帽子の男と銀髪の男は小さな声で話し合う。
「あのさぁ、お前も喋ってくんねぇかな?」
「無理に決まってんだろ!?俺は女が無理なんだよ!喋れねぇんだよ!!」
「なんでだよ!いくら照れ屋のお前でも少しぐらいは喋れんだろ!?」
すると銀髪の男は頬を赤らめてもっと小さな声で言う。
「…なんだよ…」
「あ?聞こえねぇよ」
「タイプ、なんだよ…」
帽子の男の表現が一瞬にして変わる。
頬を膨らまし、口に手を当てて必死に笑いをこらえる。
「わ、笑ってんじゃねぇぞ!」
「これがっ笑えねぇ訳ねぇだろうが」
「テメェ、吹き飛ばすぞ!!」
銀髪の男はプンスカ怒りながら、帽子の男の胸ぐらを掴んで殴りかかろうとする。
「あの!!喧嘩は良くないかと…」
凛祢の拳は月の言葉で止まった。
「喧嘩は良くないってさ」
帽子の男はくすくす笑いながら言った。
凛祢は胸ぐらを掴んでる手を離して三角座りになる。
「すまんな、話外れちまって」
「いえいえ、それより…凛祢さんはどうしたんですか?」
「あー、あいつはあれだ!少しお腹の調子が悪いらしくてな」
月はそうなんですね、と言い、少し凛祢の方に視線を向けた。
「取り敢えず本題に入るぞ、まず俺らがお前に…と言うよりも、まずは自己紹介からだな、俺は黄 雷十って名前であいつが赤 凛祢って言うんだよろしく」
「月です、よろしくお願いします」
男は胡座をかいて前のめりになる。
「ほんで、話の本題に入るが、お前さんに俺らが触れることが出来ない理由はお前さんの持つ能力が原因だ」
「俺の能力ですか?」
月は今初めて自分に特殊的な何かがある事を知る。
「あぁ、気づいてないかもしれないがお前の能力は色で言うと『黒』だ。お前の能力は生きてる物の生命力を喰らい尽くす能力で、その能力は触れた物、もしくはコントロール出来るようにさえなれば視界に入った物でさえ喰らう事が出来る能力だ」
「じゃあ、あの熊はなぜ死ななかったんですか?」
「ん?お前さんあの熊に触ったのか?」
「一瞬ですが、触れたのは触れました」
確かに、月はあの巨大な熊に一瞬だけだが触れていた、崖から落ちる前に、熊からの猛襲を受けた時に、熊に殴られ体が吹き飛ばされたのは覚えている。
「まぁ、吸収したのは確かなんだろうな…そう言われれば、あのデカイ熊はあのガタイにしては攻撃速度が鈍いし威力も弱かったからな、言われてみれば納得だな」
「この能力は俺が制御出来るんですか?」
「その力になれれば出来る。いまの時点では無理だろうな、だからくれぐれも俺らに触らないでくれよ、6秒も触られば死んでしまうからな」
雷十は笑いながら言うが、これは冗談でも何でもない、もし、月が吸い取るという意識をして触れば、2秒程度で生物は干からびるのだから。
「あぁ、それと…」
雷十は大きな声で言う。
「お前さんは、多分だが死なねぇ」
「え?」
月は目を丸くして驚く、自分が死なない、人はいずれか時が来れば命の灯火は消え無くなるもの…それが人間で生物の決まりである。
その生物の決まり、運命から外れることは人間から外れることになる、つまり、深くとらえると人では無いと言われたのと同様だ。
「いやいや、これは憶測だけどな…ここにいる俺らは不老不死では無いが不老ではあるんだ、傷があれば悪化はするし、人と同じで大きな怪我をすれば死んでしまうが…お前はさんの場合、能力が能力だから死なねぇ可能性があるんだ」
「それはどういう…」
月は唾を飲む。
「お前さんの能力は生命力を喰らい尽くすんだ。生命力を消すわけではなく、それを自分の物にしてしまうから、もしかすると出来た傷が瞬時に回復してしまうかもしんねぇんだよ」
「俺の、その『黒』は…とても危険な力なんじゃ…」
「危険だなぁ、それも、とびっきりのだ。でもお前さんのその力が今の俺らには必要でな…必要と言うよりかは、お前さんを守らなきゃいけねぇのさ」
「俺を守る?…ですか?でもあなた達は俺が必要な訳でしょ?それは嘘の可能性だってあるわけですよね」
「そうだなぁ、それはお前さんの捉え次第だが…俺らの目的を聞いてからどうするかを決めてくれないか?」
「それも、そうですね」
一人を除いて二人の会話は着々とすんでいく。
「じゃあ、簡単に説明すっけど、俺ら二人は消えた人達を取り戻す。これが俺らの目的だ」
「その目的を果たすには俺の力が必要と?」
「大当たりだな」
「じゃあ、何故俺を守るんですか?」
「お前さんは、俺らの敵…人々が消えた原因の奴らも、お前さんを欲している」
月の目つきが微妙に変わり、雷十の声が一層深くなる。
「なんで…俺を欲してるんですか?」
「これは俺の考えだが、俺らはお前さんの力が無いと相手には太刀打ちすら出来ない…そうなる様に向こうはお前さんが欲しいのでは無いかな…」
それか…と雷十の声が続く。
「お前さんのその力を使い、向こうの計画の糧にされるかだな…」
「糧にされた俺はどうなるんですか…」
月は声を震わせながら問う。
「間違いなく死ぬだろうね。良くて生きてるとしても完璧に意識は残されてはいないと思う、だからどちらも死んだも同然だろうね」
雷十は当たり前の様にそう言い、手に持っている酒を口運ぶ。
「だから…俺を守ると?」
「そう言う事だな」
「…わかりました。協力します。ですが俺はどうしたらいいんですか?」
「そうだなぁ、まずは基礎的な戦闘が出来るかどうかテストをさせて貰うが大丈夫か?」
「は、はい」
そう言われ、月は雷十と共に体育館の様な場所に着いた。
「月、髪の毛一本貸せ」
「髪の毛ですか?」
月は自分の長い髪の内の一本を抜き、雷十に渡そうとする。
「アホか!俺の掌に置こうとするな!!俺が生命力吸い取られるわ!」
「あ、すいません」
月は、手に持っている髪の毛を雷十が差し出したケースの中に入れて雷十に渡す。雷十はそのケースを何やら怪しい機械に入れて機械の中から液体が出てきた。その液体を雷十がそばに置いてあった特殊なグローブに浸らせてそのグローブをはめた。
「今…何をしたんですか?」
「あ、これか?このグローブでお前さんを触っても行ける様に特別な薬を特別なグローブに浸らせて、お前さんに触れる様にしたのさ」
すごいだろ!と雷十は自慢げに話すが、月はその話をスルーしていく。
「あの、何をするんですか?」
「あー、まずは戦闘、その後は知恵、そして体力、その他もろもろいろいろある!準備はいいかぁ?」
「は、はい!」
そうして、雷十と月のテストが始まった。