死に紛れ
前のアカウントにログインする事が出来なくなり、初めから投稿することになりましたw
なのでこれからはこちらのアカウントで投稿させていただきます!
これからもよろしくお願いします!
人はいつだって不老不死を思い描いただろう。
その為なら犠牲を払い続けてその度に何か失い続けていたのかもしれない。
それは今は誰もわからない。
何かを得るのに犠牲が伴うのは当たり前であると、そうであると。
そして犠牲を払い、得たものがどんなものなのか、果たしてそれが、得たものが正解だったのかわからない。
誰も。
そして、誰も知ることは無い。
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不老不死が存在するか…するはず無い。
不老不死と言うのは生物の域を超えること。
長い長い時を刻むし、自身に刻まれた傷は癒えて行く、理不尽で生物の容量を大幅にオーバーする能力。
ここは平成30年の日本。
「俺は…誰だ…」
山奥の祠で白衣の者が目を覚ます。
とても声は枯れていた。
彼は長い髪を垂らしていて、目は黒くて柔らかな目をした高校生の顔つき、身長は170半ばぐらいの者が立ち上がり祠の壁に手を付けて、壁を頼りに出口を探すが、何も無い。
辺りは暗くて何も見えない、水の滴る音や素足で地面を歩く音、それと自ら出している鼻息などが耳に入ってくる。
風の音は聞こえるが出口と思える光が無い。
ひたすら壁を頼りに足を動かして行くと、光が見えた。
彼は足取りを早くし光のある方に走った。
壁から手を離し必死に見えた光を追いかけるように手を振り、足を動かし、走る。
彼は光を通り抜けると、目の前には血のついた縄が巻かれた巨石が目の前にあり、縄の巻き方はぐちゃぐちゃで彼は好奇心に身を任せ、その石に触れた。
触った途端、巨石と神経が繋がれて脳に何かが伝達した。
電流が体に走ったように体は海老反りになって、触れた手から神経を通して脳に伝達したのだ。
気がつくと片目だけが赤黒い色の目に変化していたのだ。
彼はそれに気付くはずもなく身に感じた急激なものに驚きを隠せないのと同時にもう一つ驚いた事がある。
「俺の名前は、月、名前…思い出した…」
電流が流れた衝撃なのか、それとも電流が脳に伝達した何かのおかげで思い出したのかはわからない。
だけど、この巨石には何か隠されている事が分かり、そしてこの巨石は自分とは無関係では無いと言う事。
そう思い、巨石を避けながら前に進むと、突如足の踏み場がなくなり、月は崖に当たりながら落ちて行く。
とっさに見えた太い木の枝を掴もうとすると、その木の枝が掴もうとした右腕に勢いよく突き刺さり、落ちるのはどうにかなった。
その代償として自身の右腕に大きな穴が空き、血が吹き出し月は苦しみの声を上げながら左手を上げ突き刺さった枝を掴み、強引に突き刺さった右腕を離す。
「あ"ァア"ァア"あああ"ぁ!!!」
死にたくなるような痛みが来るのは分かっていたが、その痛みに耐えられるはずもなく、枯れた声が張り裂けるぐらいに叫ぶ。
左手で生々しい血のついた枝を掴み、ぶら下がりながらも左手に力を込めたまま崖に足を付けるが、右腕を引き抜いた時の痛みが強すぎて足がガクガク震えていて崖に足をかけることさえ出来なかった。
「力が…入らな-」
月には信じられない物が、光景が目の前に見えた。
「なんで…右手が動いて…るんだ??……」
ふと視線を下にした時、垂れていた筈の血が垂れていなくて、大きい穴は完全に、まるで何もなかったかのように、月の右腕にはなかった。
月は驚きながらもつかさず右手を使い、自分の血がついた枝に右手を伸ばし、掴み、体を上げて、巨石があった一つ下の地面に上がった。
「俺は…俺は確かに…穴が空いたんだ…物凄く痛かった…」
自分の右腕を触りながら、見ながら、目の前の奇々怪界な出来事に目を丸する。
そんな時、近くにあった草むらが微かに動いた。
それに月が気づいたのに少し遅れて、大きな熊が現れた。
体長は3メートル程ある、熊の中でもキングサイズの熊で、目は理性など一切なく狂ったような目をしていた。
「でかすぎだろ…何食ってそうなったんだよ…」
月は目の前の3メートルの獣を前に、足がすくみ、熊の猛襲に少しだけ反応が遅れ、熊の剛腕が左肩に振り下ろされ肩に爪が食い込み、体が浮いて崖の下に自由落下して行く。
視界はグチャグチャになって血が噴き出しながら落ちて行く。
崖は高く体が地面に叩きつけられた時、その時と同時に背骨があっけなく折れる音がしたが、声が出なく顔だけが歪んだ。
月は口から血をこぼし、熊から逃げようと這いずる。
だが、熊のスピードは恐ろしく早く、すでに10メートル先にまで接近している。
月本人も、その事には自覚があり、死が近づいてるのも分かっていた。
「狙いはオーケー…発射」
森の中には銃声音が鳴り響いた。
同時に月の後ろでは熊の木々を揺らすような咆哮が聞こえた。
熊は脳天に銃弾が食い込み、多量の血が噴き出している。
「おい!そこの奴!とっとと走れ!」
「走れないのに無茶言うんじゃ-」
気づくと月の体の傷はいつの間にか無くなっている。
月はつかさず体制を立て直し、声が聞こえた方向へ走る。
それを追うように、熊も走りだす。
月は焦りすぎて、自分の足に足を引っ掛け、死がすぐ後ろで走り出しているのにこけてしまう。
「しゃらくせぇ…」
熊が月めがけて飛びかかろうとした時、月の目にはあり得ない光景が広がる。
熊の頭が185センチ程度の男に熊が蹴り飛ばされている光景を。
男は銀髪で片目が隠れており目は鋭く、微かにだが隠れている目が白くみえた。
体格的に細身のムキムキとした感じであろう事が、わかるが、何よりも立ち姿がとても美しい。
「早く走れ…死にたくなければ」
銀髪の男は前を向きながらそう言った。
月はまたもや足を動かし声のした方に走った。
月は帽子を被った男の側まで走った。
「熊さん…俺としたら死んじゃうよ?」
熊が銀髪の男に襲いかかる。
その自慢の剛腕を銀髪の男に振るが男はひらりひらりとかわして行き、尋常じゃない速さで綺麗で強烈な蹴りを頭に何発も打ち込んだ。
「熊さん硬いねぇ…本当に何食べてきたの?」
銀髪の男は絶えず襲いかかる剛腕をかわして、そのたんびに蹴りを打ち込む。
まさに神技だ。
熊は頭が弾かれながらも剛腕を振り続ける。
「これならどうかな?」
銀髪の男は高く飛びそれを追うように熊が剛腕を振るう。
銀髪の男はその振るわれた剛腕を上からかかと落としをする。
かかと落としされた熊の腕からは血しぶきが噴き出し、銀髪が赤く染まる。
「熊さぁん?まだやんの?」
熊はこれでもかと壊れていない剛腕で、銀髪の男の顔を潰そうと、全力の一撃を振るう。
その全力の一撃のスピードは今までのとは違い、早く、気づけば男は吹き飛び、地面に横たわっていた。
熊は全力の一撃が当たり、鼓膜を潰すほどの雄叫びをあげた。
「あぁぁ…俺のせいでぇ…」
「心配すんな、見とけ」
月が頭を抱えると、帽子の男は月の頭をあげさせようとする。
月が顔をあげ目を開けた時、熊の右足には横幅10センチほどの木の棒が刺さっていた。
「終わらせんなや」
白髪の男は立ち上がり、赤く染まっている銀髪を全部上げる。
長い髪で隠れていた白色の片目があらわになった。
銀髪の男はゆっくりと歩いていく。
熊は逃げようとするが、右足に木の棒が刺さっているので歩く事も出来ない。
少しづつ近づく地を踏む音が、熊の前方からする。
熊が逃げようと、顔を前にした時にはもう遅く、熊の頭は無残にも踏み潰され、血しぶきが飛んだ。
「凛祢、早く戻れ」
「わぁーたよ」
赤く染まった髪を下げて、血まみれのままで歩いてくる。
「凛祢さん?…怪我は大丈夫なんですか?…」
「殴られたぐらいで何ともねぇよ、心配してんならその腐った脳みそ引きちぎるぞ」
「す、すみません」
凛祢は月を見下しながら、理不尽で意味のわからない脅迫をする。
別に怒るようなことではない、どちらかと言えば「あぁ、大丈夫だ」ぐらいが正常な答えだと思うが、それは彼の頭の中では違うらしい。
「まぁ、と言っても触れないんだけどな…お前には」
「え??」
突然の真実に言葉を失う。
そもそも触れないと言うのはどう言う類の『触れない』なのか、分からない。
嫌いだから触らないのか、それとも月に触る事が害なのかどちらか頭の中で考えていると。
「まだ、教えてないんだ、取り敢えず後で話すから今はここから離れよう、寒いしな」
「まぁ、そう言う訳だからついて来いや」
「あ、はい!」
月は二人の背中を見る形で二人の後を追う。
これが、語り継がれる事もない、日本で起こった最も近い伝説になると…
月は、二人を追いかけた。