神様、恋の妙薬
ファントムとテレサは跪き指示を待っていた。
「取り敢えずシトリーは階下で何かしてるっぽい…俺はキャリーの居た位置に居るからファントムは影に隠れてテレサは空間に漂って居てくんねぇ?」
「承知致しました」
「畏まりました」
2人はスっと直ぐに行動に出た。俺はキャリーの居た位置で目隠しと拘束(した振り)で座る。会話して居たらシトリーに気付かれるだろうから思念伝達でファントムとテレサと繋がっておく。
『所でファントム?あの後何も無かったか?』
『はい。メイド達はいつも通りの業務を、私も書類整理をしておりました』
『いきなり呼んでごめんな』
『いいえ、私共は旦那様に仕える事が至福で御座います』
『そうです。ファントム様の仰る通りです旦那様』
ファントムに呼応する様にテレサも応える。
『ありがと…所でアイツ俺に何すると思う?』
『旦那様に出来る事ですか…あの様な者の手の内は分かりかねます』
ファントムがそう応えるとテレサが、
『私の分身体に見てこさせましょうか?』
『そうか、魔界ならゴーストは違和感無いか…テレサ頼んだ。気配で位置はこの下の階の奥みたいだから宜しく』
『畏まりました。お行きなさい眷属』
漂う空気が一瞬冷たくなるとゴースト3体程を向かわせたらしい。向こうが手を出すまでコチラは待機…あ!サタンにも連絡しておくべきか。此処魔界だし。
『ファントム?この件サタンにも伝えてていいかな?』
『異論は御座いませんよ?』
思念伝達の枠をサタンにも広げる。
『おーい?サタン?通じてるか?』
『わ?!ロキいきなり頭に語りかけないでよー』
『すまんすまん…急用で今魔界に居る』
『なんて?』
『いや、だから今魔界に居る』
『いや、聴こえてなかったんじゃないよ?理解出来なかった』
事の経緯をサタンにも説明すると、
『要するにロキん所のメイドを救出してその身代わりにロキ本人が居ると?馬鹿なの?!』
サタンに怒鳴り付けられた。
『いや 仕方ないじゃん。相手何考えてるか分かんねぇあのシトリーよ?ルシエラも身を引いてるんだぞ今』
『まぁ、ロキがそれで良いと思ったんなら良いんだけど…暗殺部隊率いてるなら万が一も無いだろうし』
『そこはまぁ越したことはないじゃん?』
『でも、本人が釣れたってなるとそれはそれで怖いわー』
『褒めてんのか?』
『一応褒めてる』
『取り敢えず魔界だし闇の狭間連れて行きやすくなったからOKだろ?』
『そこ悩んでたけど既に魔界ならいいか…今そっち何待ちなの?』
『シトリーの動き待ち。ずっと階下で何かしてるんだよアイツ』
『薬の調合でもしてるんじゃないの?オレそっち行こうか?』
『気配分かんの?』
『いや、多分そこシトリーの隠れ屋敷でしょ…それくらいなら把握済みだしー』
『それなら連絡繋いだままにするから早めにこっち向かってくれ』
『了解ー』
サタンにも報告は終えたのでサタンの回線は別にしてテレサに問い掛ける。
『テレサそっちどう?』
『旦那様…それが、どう申し上げたら良いのか分からないのですが…』
『サタンの考えだと薬の調合でもしてるんじゃないかって話だけど…まさかの当たり?』
『はい。申し上げにくいのですが見間違えで無ければ惚れ薬の調合をしていらっしゃいますね』
成程、そう来たか。
『テレサもう分身体戻していいぞ』
『畏まりました』
『サタンー?お前の言ってた事が当たったぞ?』
『マジのま?何の薬の調合してるのあの子?』
『惚れ薬だとさ』
『…は?いやいやいや、有り得ないんだけどー?』
『てめぇも試した事あったもんな香水タイプの奴で』
『やめてー過去掘り返さないでー』
念話の先でゴロンゴロンしてるのが目に浮かぶ。
『流石欲に忠実な魔族だな』
『あの頃は若気の至りだったのオレー』
『効かないって分かってスンって顔した時正直面白かった』
『黒歴史なの!!ホントやめてー』
ロキの付けている魔装具の指輪の内3つは状態異常無効の効果があり、毒物、麻痺や痺れ、惚れ薬を無効化する物がある。サタンはそれが分からない頃に香水タイプの惚れ薬を付けて来店してきた事があった。何か店内の人の目を惹く様になったなサタンって思ってたら、
「何でロキ普通にしてるのー?!」
だったからな。手の内明かしたらスンて顔して踵を返してダッシュで逃げたもんなサタン。若気の至りって怖いね。ロキは心の中でくつくつと笑うのだった。
サタンをおちょくるのはこの辺にしておいて。惚れ薬か…本当にシトリー面倒臭い。罹った振りすべきなのかな?
『ファントム…俺さ?惚れ薬に罹った振りすべき?』
『旦那様、無理はしない方が良いと思われますよ?下手打って向こうの反感を買ったらどうするんですか?』
『それもそうか…分かった。ガチで捕獲の方向に持っていこう』
『畏まりました』
サタンの回線に意識を戻す。
『サタンはどれくらいで来れそう?』
『早くても20分は掛かるよー?』
『充分。出来るだけ早くな?逃げられたら元も子もないし』
『分かってるー』
『ロキ様?』
不意にルシエラから問い掛けられてルシエラと繋げてた念話を忘れていた。
『あ、すまんルシエラ。こっちの対応で手一杯だった。現状分かるか?』
『一応『視てますから』分かりますよ?』
『サタンも来るみたいだから安心して屋敷で待ってて』
『でも、惚れ薬を飲みでも嗅がせでもしたら私がキレそうです。プチンて』
『ルシエラでもヤキモチ妬いてくれるんだな』
『そりゃそうですよ妻ですから』
『ルシエラは可愛いな。大丈夫その前に手は打つ、その為のファントムとテレサだし』
『彼等をそっちに呼んだのには牽制の意味もあったんですね。ふふ、嬉しいですロキ様』
『心配の種は詰んじゃわないといけないしな』
『ロキ様らしいです』
『てか、待つのって暇だなヤル気ないから疲れた』
『帰ってきたらお茶しましょうロキ様』
『帰ったらセーレも交えてお茶だな』
『そう言えばブライトちゃん綺麗になっていってましたよ』
『あれ?もうそんなに急成長した?』
『多分天界の神気を吸収したのかも知れません』
『前に俺の魔力注いだばかりだから成長もするか』
『可愛いから綺麗になってました…所で、式神に性別はあるんですか?』
『ブライトのか?』
『えぇ、少し気になって…』
『ブライトは雌だな』
『やっぱりですかー』
『どした?』
『いや、ブライトちゃん恋する乙女みたいなんですよ』
『それはセーレに対して?』
『えぇ、物凄く分かりやすいくらいに』
『例えば?』
『私がセーレさんに近づいて行くと威嚇されます』
『ブライトが?!』
『なんならメイドさん達にも威嚇しますよ?』
『わーお…それは知らなかった』
『帰ってきて監察してたら分かりますよロキ様にも』
『式神でも人型になれるって知ったらブライトとセーレどうなるんだろ?』
『私には分からないですけどその辺り』
『人の恋路を邪魔する奴はって言うし一言伝えて見守るか』
『そうですね。あ、シトリーさん行動に移すみたいですよ?』
『そうか、それならファントム達に指示を出すわ』
ファントム達の回線に意識を戻す。
『ファントム、テレサ、シトリーが行動に出た。ファントムはシトリーの後ろから意識を削げ。テレサは視界を削げ』
『『畏まりました』』
サタンにも連絡しておく。
『サタン今どの辺?』
『半分進んだくらいー何?もう薬の調合終えたシトリー?』
『みたい。半分進んだくらいならこっちの対応後に着くな』
『くれぐれも殺さないでね?』
『そんなヘマすると思うか?』
『思わないけど慎重にね?』
『了解』
『それならまた後で』
さてと待ち構えますか。
その頃シトリーは、
「ふんふふーん。これさえ出来上がればロキ様はサタン様もあの女も目にもくれないだろーなー♪ふふ、そうしたらボクのモノだ」
鼻歌交じりに薬の調合を進めていくシトリー。
「良し!出来上がった!後はコレをロキ様に嗅がせるだけだ」
鼻歌交じりに瓶詰めしてロキの居る上の階に向かうシトリー。この屋敷にロキ専属の暗殺部隊が潜り込んで居るとも知らずに…