神様、救出作戦
屋敷にはキャリーの気配が無い事が分かった。サタンからの情報で得たシトリーの潜在能力はは亜空間使いっていうのが面倒臭い。
「ルシエラ?アイツ俺を手に入れてどうしたいんだと思う?」
ルシエラはんー?と考えてから、
「愛でたいのでは無いでしょうか?」
うぇ…野郎に愛でられても嬉しくねぇよ。
「キャリーは無事かな?」
「無事だと思いますが…心配ですよね」
「それなー…もしキャリーが偽物ってバレて怒りを受けたらどうしよう」
ロキは悩む。するとファントムが思念伝達で連絡をしてきた。
『どうしたファントム?』
『旦那様、御報告が御座います』
『何かあったのか?』
『はい。今朝メイド達の報告ですとキャリーの行方が分からないとの事ですが…』
あ、報告忘れてた。慌ててファントムに返答する。
『あぁ、報告しようと思ってた所なんだけど…キャリー俺と間違えられて攫われた可能性がある』
『なんと?!それでは旦那様もキャリーの所在が分からないと言う事で御座いますか』
『さっきルシエラと一通り屋敷中見てみたが屋敷内には居ないっぽい』
『それでしたら旦那様の目と繋げてみてはどうでしょうか?』
『その手があったか…ちょっと待てよ』
思念伝達を一旦止めて目を繋げてみる。キャリーの視界っと…うーん。キャリーは意識を失っているのか目隠しをされているのか暗闇しか見えなかった。
『ファントム?キャリー意識を失っているのか目を塞がれているのか暗闇しか見えないわ』
『意識が繋がれたのでしたら無事なのでしょう。旦那様この後の予定はどうなさるので御座いますか?』
『キャリーが心配だからな、捜索したいと思っているが?』
『仕事は昨日粗方終えてますので支障は御座いません。捜索に専念してください。我々の方でも何か手がかりが無いか探しておきます』
『OK、頼んだ』
ファントムとの連絡が終わったのでルシエラの方を見る。ルシエラは何かを見つめてた。
「どうかしたかルシエラ?」
「あ、いえ。この部屋キャリーさんが研究に使ってたんですよね?コレなんでしょうか?」
「どれ?」
「コレです」
ルシエラはひょいと蔦の様なモノを持ち上げる。あれ?それって…
「それ中庭のガゼボに植えてた希少な植物の蔦だな…あれ?何かと繋がっ…え?」
ひょいと蔦の様なソレを摘み上げるとその先には無の空間があった。
「ロキ様ソレなんですか?」
「あー、分かった。キャリー良く思いついたな」
くつくつと笑うロキ。そしてルシエラに伝える。
「キャリーの残した手掛かりだコレは。しかも亜空間への道標にもなっている」
えっ?!と驚くルシエラ。
「キャリーさんの残した手掛かり…」
「アイツすげぇわ。この植物の特性を生かしてるもん」
この植物は魔女の手と言い、その特色に想いの届く所に繋ぐ手と言うモノがある。それは何処であろうと想うモノと繋ぐ事の可能な蔦が特性の植物だ。
「そういう訳でこの蔦を辿ればキャリーの元へ行ける」
「キャリーさんのほほんとしている様で強かな人なんですね」
ルシエラが感嘆を漏らす。
「一先ずファントムに連絡してから特攻しますか」
ファントムに事の経緯を話してキャリーの元へ行く旨を伝える。
『成程、キャリーも中々に策士ですね』
ファントムが思念伝達で安心の声を漏らす。
『キャリーじゃないとコレには気付かなかったと思うから老神龍にマーキングの移動させた相手がキャリーで本当に良かったわ。そんな訳で屋敷の事頼んだぞファントム』
『畏まりました。気を付けて行ってらっしゃいませ』
「ルシエラー?ファントムと話終えたから向かうぞ」
「はーい。その蔦の浮いてる先にキャリーさんが居るんですね?」
「十中八九な、シトリーも居ると思うから…あ、ルシエラこれ羽織ってくんねぇ?」
収納袋からマントを手渡す。
「なんですかコレ?」
「前に作ってるって言ってたローブ…試作品段階だけど今回連れて行ってもルシエラにアイツが危害を加えようとしてたのは明白だから姿隠して付いてきて欲しいなって思って…フードも被れば完全に姿が見えなくなるから」
ルシエラは受け取った外套を羽織りフードも被った。
「それじゃあキャリー救出作戦行きますか」
蔦を引っ張ってその先にある亜空間の割れ目に魔力を注ぐロキだつた。
魔力を注ぐロキを見つめているルシエラ。
『キャリーさん無事だといいなぁ…』
そう考えているとロキが魔力を注いでる空間に穴が空いてきた。
「ルシエラ?ぼーっとしてどうかしたか?」
「いえ?!キャリーさんが無事だといいなぁと思っていただけですよ」
ぶんぶんと頭を振るルシエラ。
「そうか、皆身を案じて居るみたいだから早く助け出さないとな」
そう魔力を篭めるロキは2人通れるだろう穴を空けた。
「ルシエラ、行こう。魔力でもうこの先にシトリーもキャリーも居るの分かった。亜空間が少し捻れているからか魔眼が少し不安定だけど大丈夫だ」
「ロキ様無理しないで下さいよ?」
「分かってるって…ルシエラ手を」
ルシエラはそっとロキの手に自分の手を乗せる。
「それじゃあ行きますか」
ひょいと入り口を潜るロキとルシエラ。着いたその先は長く続く廊下だった。
「何処ですか此処?」
ルシエラがロキに問い掛ける。ロキは少し考えてから、
「多分魔界…だと思う。神気がひとつもない瘴気塗れだし」
少し不安気に言う。ルシエラが廊下の先を見ていると人影があった。
「ロキ様あれ」
「ん?あー、やっぱり拘束されてたか」
目線の先にはロキに扮したキャリーが目隠しをされ後ろ手で拘束された状態でソファに座らされていた。シトリーの気配は…階下みたいだな。
「シトリーは階下に居るっぽいから先にキャリーを救うぞ」
「了解ですロキ様」
足音を立てずに移動するロキとひょいと飛ぶルシエラ。キャリーの元まで辿り着きシトリーの気配を察知するとまだ階下で何かしてる様子。
「ルシエラ、シトリーの気配分かるか?」
「一応『視えます』」
「監視しといて」
「了解」
キャリーの元まで辿り着いたロキはルシエラに指示を出しキャリーの意識があるか確認、意識が混濁してるみたいだから異常回復用の回復薬を飲ませる。
「キャリー?俺だ、俺の事が分かるか?」
目隠しを取り頬をぺちぺちと叩いて起こす。
「だん…な様?あれ?アタシ…」
良かった無事だ。
「キャリー…間に合って良かった。アイツに何もされてないか?」
手足の拘束も解く。
「アタシ…旦那様達の部屋の隣で研究してて…後ろに嫌な気配して研究してた奴持ったまま意識が…」
「不意打ちだったのにあの手掛かり残してくれていたのか…ナイスだキャリー」
「旦那様に迷惑かけてしまって申し訳ございません…」
「何言ってんだよ…手掛かりが無かったら今頃どうなっていたかも分かんねぇのに謝るな。お前は最善を尽くしてくれた」
「ありがとうございます」
そこに跪くキャリー。取り敢えずどうするかな…
キャリーとルシエラ帰しておくべきかな?
「ルシエラ、キャリー、今回分が悪いかもだからお前らだけでも帰してもいいか?」
キャリーは、
「旦那様の命に従う迄です」
と跪き。ルシエラは、
「確かにあの人ぶつぶつロキ様の事しか呟いてませんし、私が足手まといになっても嫌なので屋敷で『視ておきます』」
「2人共大人しく従ってくれてありがと…んじゃ帰すわ『転移魔法展開屋敷まで』」
2人は手を取りしゅんと消えた。さてとどうしますかねシトリーの事。此処魔界だと思念伝達届かないしなぁ…まぁ良いか。
「『半転移魔法展開、天界に居るファントム、テレサ』」
しゅんとルシエラとキャリーの居た位置にファントムとテレサが居る。
「旦那様…転移なさるなら一声掛ける等して頂けないでしょうか?」
「いや、此処圏外だから届かねぇんだわ」
「転移は可能なのにですか?」
「前にサタンの誕生日の時に試したけど無理だったよ?」
ファントムは少し考えて、
「今屋敷の方にルシエラ様とキャリーを戻したのですか?」
「あぁ、そうだが?」
「今ルシエラ様に連絡してみて下さい」
ロキははてなになりながらもルシエラに届くかなぁと思念伝達してみると、
『あ、ロキ様?もう終わりましたか?』
あれ?繋がった。
『いや、まだだけど…ちょっと待ってくれ』
「ファントム…普通に繋がったんだけど」
「以前障壁の様なモノが張り巡らされていてそれが障害になった所為で連絡出来なかったんだと思われます」
「どゆこと?」
「闇の力…多分サタン様の障壁で御座いますね」
「あー、空間捻じ曲げられてたのなら届かないわ」
「それで、テレサと呼ばれたと言う事でしたら詰めに入るのですね旦那様?」
ファントムかテレサと目配せして聴いてきた。
「暗殺部隊の登場って所で気付くか」
くつくつと笑うロキ。
「勿論です」
誇らし気なファントムとテレサ。んじゃ指示を出しますかね。