神様、ひと休憩
ルシエラに逢いに行こうと歩いていたロキは少し考えてからルシエラに逢う前に先程中庭のガゼボでお茶をしていたセーレに逢いに行く事にした。アトリエから中庭のガゼボは近いので直ぐに辿り着いた。セーレがコチラに気付いて手を振っていた。
「ブライトと戯れてるとこ悪いなセーレ」
ロキはセーレの隣に座る。
「いえ!そんな事無いですよ、ね?ブライト?」
キュイーと呼応するブライト。先程までの経緯をセーレに説明すると顔面蒼白になっていった。
「え?あのクソ野郎そんな事ロキ様にしてたんですか?しかもルシエラ様にまで手を掛けようなんて…」
「お前本当に良い奴だよな」
「いや!だって怒りたくもなりますよ?!あんな卑怯者の所為で迷惑掛かってるのに呑気にお茶をしてたんですよボク」
「セーレは悪くないだろ?」
頭をわしゃわしゃと撫で回すロキ。セーレはむすーっとしながら、
「ボクがしてる事では無いのですが同じ同郷の者の所為で…くっ」
そう言いダンと机を叩くセーレ。ロキは思念伝達でテレサにお茶の用意をして貰う事にした。テレサが来るまでセーレと他愛もない会話をする。
「所で帰る目処がシトリーの捕縛の後になるかもだけど、先に帰りたかったら老神龍辺りに届けさせる事も出来るがどうする?」
セーレは飲んでいた紅茶を一口含みそうですねと応えを探していた。
「ボクとしては早く帰るのもアリなんですけど、シトリーの件を少し見届けたいなと思います…それでも構わないでしょうかロキ様?」
「別にいいぜ?俺はどっちでも良いからさ。俺が直接送るか老神龍に送らせるかの話だし」
「ありがとうございます」
嬉しそうに微笑み掛けるセーレ。そう話し込んで居るとテレサが来たのでいつものお茶を頼む。お茶請けはクッキーとスコーンの様だ。セーレのお茶請けは甘さ控えめのパウンドケーキを食べてるみたいだった。
「あ、ココにルシエラ呼んでもいいか?ついでだし」
セーレはきょとんとしてから、
「ボクは構いませんよ?と言うか後ろのあの人何してるんですか?」
セーレの指指す方には花壇を見回るキャリーが居た。あぁ、傍で仕えさせるつもりだったけどキャリーの趣味は庭の剪定とかだから植物に関しての知識豊富で今多分珍しい植物植えた辺り見てテンション上がってるだけなんだよな…多分。
「さっき話したシトリーの呪いのマーキング移したメイドだよ。離れていても仕方ないし目の見える範囲に居させようとしてたんだ。今多分珍しい植物を見付けてテンション上がってるだけだと思うアレ」
何かクルクル踊ってるキャリー。移動する時何も言わずにスーッと付いてきてたから忘れてたわ。一先ずルシエラに連絡しておこう。
『ルシエラ?呪いの箱はどうにかなったからもう自由行動していいんだが、中庭のガゼボでセーレとお茶してるから来るか?』
『あ、ロキ様!もう待機しなくていいんですね?中庭に向かいまーす』
「ルシエラ後で来るってさ」
「分かりました。それにしても変わったメイドさんですね…あんな低姿勢で何覗き込んでるんですかね?」
「花壇に植えてる植物だな」
こくりと紅茶を飲みながら観察するロキ。
「植物だけであんなに百面相出来るのも面白いですね」
くすくす笑うセーレ。キャリーはひとつの事に集中すると他が見えなくなるのがダメな所だけど、ある意味そこが長所だから何も言えない。
それからまた他愛もない会話をしていたらルシエラが合流した。ルシエラはテレサにミルクティーを頼んでいた。モグモグとクッキーを頬張るルシエラ。
「何の話してたんですかロキ様?」
「さっき遭った事話してただけだぞ?」
「呪いの箱の話ですか?」
「あ、いやそれの延長戦」
「まぁ、良いですけど…余り無茶しないでくださいよロキ様」
ズズーっと紅茶を飲んでぐでーっとしてるルシエラ。
「ルシエラ疲れてんのか?」
「ちょっと仕事にのめり込んで疲れてはいますけど、甘い物食べてたら直ぐに治りますよ」
今度はスコーンにブルーベリージャムとクロテッドクリームを付けながら口に運ぶルシエラ。
「それなら良いけど」
ロキもスコーンを口に運びながら紅茶を飲む。
「何処まで進捗があったのか私知らないんですけどそろそろ聴いてもいいですか?」
ルシエラがジト目で見てくるのでセーレにも話した内容に付け加えてサタンと共有した情報等をルシエラ報告する。
「え?ロキ様が呪いを受けていたですか?しかも老神龍様でも解けないような呪いを?今それをキャリーさんが…何かキャリーさん元気そうなんで大丈夫そうな気がしますね」
花壇に夢中のキャリーを見たルシエラが言い淀んだ。
「でも、このマーキング解かないといけないしさキャリーに付けたままでいるのもなんだしもう暗殺部隊は活動してるから連絡待ち」
「ロキ様って用意周到ですよね」
ルシエラがガゼボの机に突っ伏しながら零す。セーレも、
「ロキ様の強さの現れって感じですね」
褒めてんのか分かんない事言われてるけど気にせずお茶を楽しむ事にした。