神様、施術
ファントム達に混じり仕事をこなしていたらキャリーがバックヤードから入って来た。
「あ、来たかキャリー。今から俺に付けられてる呪いに近いマーキングをお前に移すけど怖いか?」
キャリーはきょとんした顔を向けてからクスリと笑いこう告げた。
「アタシ達メイドは旦那様に使われてなんぼですよ?怖いなんて思いませんよ。それにあの変質者とまた相見える事が出来るなら上場!」
と意気込んでいた。それを見ていた老神龍が、
「嬢ちゃん?このマーキングを移すのに苦しみは無いが呪いが発動した時はどんな苦痛が起こるか未知数じゃぞ?それでも構わぬのか?」
目を細めながら問い掛ける老神龍、
「寧ろばっちこいです」
それでも構わないと言うキャリーを見て老神龍は俺の心臓辺りに手を翳す、
「コレを取り出して…ふむ、やはり呪いに近いマーキングですな。それじゃあ嬢ちゃん行くぞ?」
「了解です老神龍様」
スーッと黒い筋がロキの心臓からキャリーの心臓へと移る。
「終わったぞ主よ。コレでマーキングはメイドの嬢ちゃんに移ったぞ」
「何の違和感も異常も無いな…キャリーはどうだ?」
ロキは身体をパキポキ鳴らしながらキャリーに問い掛ける。
「アタシも何にも異常無しっす」
きょとんとしているキャリー。神龍がロキに声を掛ける。
「主?コレがそのマーキング…いや、呪いの根源です」
そう言いながら見せて来たのは写真…いや、念写だった。余りにも鮮明に映し出されていたので写真に見えただけだった。
「…ドス黒くて気持ち悪いなコレ。なんて言うかシトリーの邪気見てきたからアイツらしいわ」
キャリーもその念写を覗き込むとウッと口元を抑えていた。
「ソレが今アタシの中にあるんすよね?うぇ気持ち悪ーーーーー」
おぇーっとなっているキャリー。呪いのモノってまじまじと見たら持ってかれるって言うけど本当にヤバいな。
「ファントムも診てくれてありがとな。あんなモノ見てたらそりゃ苦々しい顔をする訳だな」
渋い顔をしたファントムが、
「申し訳御座いません旦那様…闇の力を持っていても取り除く事が出来ず自分の力量が不甲斐ない限りです」
と俯く。ロキは気にせず、
「そんな事ねぇって。老神龍ですら解くことが出来ない代物を扱える訳がねぇじゃん」
無理な物は無理なんだよと諭す。取り敢えずこの後の方針を決める事にする。キャリーには暫く仕事をしないで傍に仕えさせる事にした。いつ身代わりになって貰うか分からないからな。後はセーレの処遇についても要相談かな?シトリーの件が終えてから送った方が良さそうだし。
一先ず方針が決まったのでサタンに連絡する。プルルと何回か鳴った後ガチャリと電話に出るサタン。
「こっち少し前進したけどそっちどうよ?」
『ロキの方進展ありなの?コッチは余り進捗ナシだよ』
「前進てか俺さ?シトリーに呪いに近いマーキングされてたんだけど?」
『はぁ?!マジで?それどうしたのさ?』
「今メイドの1人に移して経過観察中」
『大丈夫なのその子?』
「呪い発動してないから何にも起きてないぞ?」
『いや、呪いに近いって分かってるモノ付けられて平気とか…ロキのトコってホント変わってるよねー』
「俺もびっくりだけど、肝座ってる奴が多いからな俺の屋敷」
『コッチで分かった事はひとつだけ。シトリーの屋敷ではシトリーとシシリーが入れ替わりで領主の作業してたみたいだよー?見た目の変化は別個のモノとしてのの為だってさー』
「成程。一体型では無いんだな?」
『そういうコトになるねー』
「それなら本体であるシトリーを闇の狭間に送ればもう問題なし。その前にこのマーキング解いて貰わないとだけど」
『だねー?一先ずコチラの情報は以上かな?』
「ありがとな…また連絡するわ」
『はいはーい』
プツッと切れた電話を仕舞うとアトリエないを見て回る。仕事はある程度捗ったし老神龍と神龍がずっと片付けもしてくれていたから殆ど作業は残って無さそうだった。
「うん。殆ど仕事は片付いてる。ありがとなファントム、老神龍、神龍」
「旦那様の仕事量を考えますとまだ軽い方ですがそれでも早くに終えたのは老神龍様と神龍様のお陰で御座います」
2人に深々と頭を下げるファントム。
「我は主に仕えてすべき事をしたまでじゃ」
老神龍は目を細めながら笑っている。
「ボクも老と仕事をするのは闘うのと同じくらいに楽しいことですから構いませんよ」
にこやかにはにかむ神龍。
「今日の仕事はここ迄だな。老神龍と神龍は送還するよ」
「主よそれではまた」
「ボクもまた喚ばれるの楽しみにしておきます」
ぶわっと金の風が舞い2人は戻った。俺はルシエラの所に向かう事にした。




