神様、帰路に着く3人
キャリーと神狼と犬神は馬車に揺られて居た。
「此処から屋敷までどれくらいで着くんすかね?」
神狼が言う。
「確か3時間程掛かるそうっすよ」
キャリーが応える。
「それ迄向こうは何か対策練ってるんすかね?」
犬神が言う。
「そりゃー旦那様の事だから勿論すよ」
キャリーは何処か嬉しそうに言う。
「何でそんなに嬉しそうなんすかアンタ」
神狼がどうしたのこの子って目で見てくる。
「え?アレ倒せるんすよ?あの強そうな執事!楽しくないすか?!」
アレとはシトリーの事だろう。
「「楽しくないっすよあんな物騒なヤツ」」
神狼と犬神が溜め息混じりで応える。
「メンタル強くないとやってけないすよお2方?」
キャリーは素朴に思ったのかそう声を掛ける。
「「何で主は変質者に好かれるんですかね?」」
「だって旦那様だからでしょ」
何処か誇らしげなキャリー。確かに素晴らしい主なんですけども…次から次へと問題が起きるのは勘弁して欲しいっす。
「ヴィーナス様の時も凄かったからなぁ…」
キャリーが遠い目をする。その当時を知るのはファントムと屋敷のメイド達、後はアテナさん位だった。
「主が豚って呼んでるあのおばさんの事っすね」
神狼が尻尾を振りながら興味津々そうに応える。犬神も興味津々の様だ。
「そうか…神獣の方々はあの時の惨事知らないんすよね」
「「知らないんでめっちゃ気になるっす」」
ブンブン尻尾を振る2人。キャリーは思い出しながらあの時の事を語るかなと話し始めた。
「あの当時は旦那様まだ若かった頃で…あ!いや、今も若いんですけど、若いと言うより幼かった頃っすね」
天界に学院が出来た当初ロキは神童と言われ続けて辟易としてて学院に行くのは嫌だって言ってた頃のお話。
「あの頃学院には特級クラスと普通科があって旦那様は勿論特級クラスに受かったんすよ」
特級クラスは並大抵の事では入れない様なVIPクラスだった。そこに神童と呼ばれたロキが首席で入学。しかもその頃には経営者としても波に乗っていた頃。知識も資産もあったロキが他の神に興味を持たれるのには時間は掛からなかった。
「そこで常識人の塊のアテナ様と仲良くなりそれを普通科から見ていたヴィーナス様が嫉妬に狂ってアテナ様に矛先が向かおうとした所、旦那様が感知していてヴィーナス様を嵌めたんすよね」
嵌めたと言うよりも勝手に自爆したって聞いたけど、
「嵌めたんすか?ヴィーナス様を主は?」
神狼が聞く。
「そうっすよー?アテナ様に毒物感知の指輪渡してたらヴィーナス様が仲良くしましょうよ〜って入れたお茶に毒物が仕込まれててそれを観察眼で見てた旦那様が逆にヴィーナス様に飲ませて瀕死の状態にさせたんすよ」
「「主やるっすね」」
「凄いっすよね?その後殺したら後味悪いからって『回復』掛けたらヴィーナス様が粘着質な変態になったって話っす」
「その時主はどっちの姿だったんすか?」
「神様状態すよ?魔装具集まって無かったらしいすから。確か魔装具が全部揃ったのは5000年位経ってかららしいですし」
キャリーは以前ロキから貰ったカバンに入れていた飲み物を取り出して飲んでいた。ロキ達の様に優雅に出来ないから水筒に冷えた飲み物を入れてるだけだった。
「半分程進んだっすね…自分も疲れて喉乾いたっす」
神狼が零す。
「アタシのバッグにはオレンジジュースとか果実系しかないっすけど何か飲みます?」
「それならあっさり系のもの頼むっす」
「んーっと…それなら、はい!アセロラジュースが飲みやすいと思うっすよ」
そう言い水筒を投げる。
「あざっす」
「自分は喉乾いたのより腹が減ってきてるっす」
犬神がそう零すと、
「あー…アタシ達飲み物は補給しないとなんすけど、食べ物は食べなくて済むから何も食べ物入れてないっす」
すんませんとバツの悪そうな顔をするキャリー。
「いや、いいんすよ。帰ったら主付きのシェフに作って貰うんで!じゃないとあの顔が出てきそうで嫌っす」
ふるふると顔を振る犬神。
「あの顔って…あの執事さんのすか?」
キャリーがそう問い掛けると、
「あれ以外ないっすよ!!労って貰うんすよ!!」
「確かにアレはないっすね」
キャリーは遠い目をした。神狼も貰った飲み物を飲みながら遠い目をしている。犬神も疲れたのか寝ようと馬車の縁に頭を預けていた。
ロキはキャリー達を送ってから屋敷の書斎で本を読んで居た、アトリエの事はファントム達に任せて。
何冊か本を読んでいたら屋敷に張ってある結界に神狼、犬神、キャリーが帰ってきたのか反応が引っかかったので玄関先に迎えに行こうと立ち上がる。キャリーの目線だけだと何処に居るのか分からなかったから結界を張ったままで居たのだ。スタスタと歩くと疲れきった様な顔をしている面子。詳細を聞くとシトリーは俺にマーキングしてるから偽物は分かる事。犬神のマーキングも難無く終えてるのでいつでも追尾出来るとの事、
「皆お疲れ様。一先ずこのままでいいよそれは」
皆に労いの言葉を掛ける。シトリーにマーキングされてんのが面倒臭いなぁ。
「主!自分めちゃくちゃお腹空いたっす」
犬神がそう言いながら尻尾をブンブン振っている。
「自分もっす」
神狼はキャリーに水筒を渡してからコチラを見て答えた。
「それならイヴに料理手配させておくから…肉料理で良いだろ2人共?」
「「勿論っす」」
イヴに思念伝達で連絡しておく。
『イヴ?神狼と犬神のご飯の準備頼む』
『畏まりました。肉料理で御座いますね?』
『あぁ、よく食う奴等だからデカ盛りでいいぞ』
『ふふ、畏まりました。直ぐにご用意致しますわ』
イヴには連絡したし後は、
「キャリーはどうするんだ?」
「アタシは一旦いつもの業務に戻りますよ?何か御指示ありますか?」
「いや、今の所はないな」
では戻りますとキャリーは屋敷の中に入っていった。
「神狼と犬神は何処でご飯にするんだ?」
「「図書館前で番達と一緒に取るっす」」
「了解。今日はお疲れ様」
そう声を掛けた後にファントムに連絡をする。
『ファントム。今アトリエに居るよな?』
『勿論で御座います』
『俺そっち行くから少し診てもらいたいんだが』
『承知致しました。お待ちしております』
歩いてアトリエに向かう。神狼と犬神はマーキングを老神龍と神龍に診て貰うべきだと言っていたが、呪いなら老神龍とか神龍だろうけど、魔族のマーキングなら元々闇の眷属のファントムに診て貰うべきだと判断した。
歩いてると中庭のガゼボでお茶をしているセーレが見えた。一応セーレにも診て貰うか?と悩んだが巻き込むのは辞めようとそっとその場を離れた。
数分してアトリエに着いた。バックヤードから入っていったのだが、ファントムは気付いていたのかコチラを見ていた。老神龍と神龍は片付けの続きをしていた。
ファントムに診て貰いたい経緯を伝えるとコチラに興味を持った老神龍と神龍。呪いじゃないのに何で興味津々なんだろ?と不思議に思いながらファントムに診て貰う。
「旦那様…少し複雑なマーキングをされている様子なので少し時間が掛かります」
ファントムは苦々しい顔をしていた。老神龍と神龍も真理眼で診ている。
「主よ、我らにも見えますぞそのマーキング」
老神龍が言う。神龍も続けて、
「然り。呪いに近いマーキングですねコレ」
と呟く。
「何それ?面倒臭い事するなよなぁシトリーの奴」
溜め息を吐くロキ。
「呪いに近いモノですので我らにも対処は可能ですぞ主よ?」
老神龍が言う。
「対処出来んの?ファントムが凄い苦々しい顔してるこのマーキングを?」
「無論、然し解くのではなく誰かに移すと言う手になりますがの」
ふーんと考え込むロキ。それならキャリーに移すか、シトリーはマーキングを手掛かりにキャリーを偽物と見抜いたんだしな。それならキャリーに連絡してアトリエに来て貰う事にしよう。思念伝達でキャリーに連絡すると直ぐにアトリエに来るとの事。
「でも何で解けないのこのマーキング?」
老神龍に問い掛ける。
「解くと呪いが発動するからですな」
老神龍は言いにくそうに応える。
「解いたら発動するタイプの呪いな訳なんだ」
ロキは感心していた。面倒臭いけど解き方が分かったからだ。真理眼持ちの始祖なる龍でも無理な呪いは掛けた本人が解くしかないのだ
「一先ずキャリーに移してからシトリーを捕縛だな」
隠密部隊の情報収集ははちゃんと役に立ったし後は暗殺部隊の2人の仕事。キャリーが来るまで仕事でもしようかなと書類と向き合うロキだった。