神様、意見交換
モテ期云々の話は辞めにした。考えても埒が明かない。
「所でファントムは…あー、お前らには恋愛感情が沸くことは無いのかそういえば」
ファントムは少し考え込んでから応える。
「そうで御座いますね…恋愛感情が芽生えると言ったものは持ち合わせておりません。旦那様がそういう風に作り上げた身体ですので生殖機能も御座いません」
だったよなぁ…恋愛感情の機微に聡かったらメデューサの姐さんがポセイドンのおっちゃんに贈る物とかも一緒に考えれたのになぁと考え込む。するとファントムが何か察したのかこう言ってきた。
「旦那様…考えてる所すみませんが恋愛感情がなくとも感情の機微に関しては鋭いかと思われますよ?自分が相手に贈るでは無く…他人が誰に何を贈るかと言う情報なら交換し合えれます」
あぁ…そういう風に考える事も有りなのか?それなら考えようか物は。
「それならファントムならどういう物をどういう風に贈る?」
ふむ…と顎に手を当て考え込むファントム。その時バックヤードからテレサがお茶を持って現れた。こちらの様子をテレサが伺っている。そして口を開く。
「旦那様…それにファントム様?どうされましたか?」
ロキはテレサにさっきの事を説明する。
「それでしたら私もファントム様と一緒に考えても宜しいでしょうか?」
一応父親と母親の存在として作り上げた2人だ。恋愛感情がなくとも情があるのかな?カウンターの作業机の前に置いてる椅子に腰掛けながらながら眺める。
「ならメデューサの姐さんの件は2人に任せてもいいか?」
「畏まりました」
「承りました」
後の書類に目を通す。風牙と雷牙の書類はOK…メデューサの姐さんの要件もファントム達に任せておくからOK。ポセイドンのおっちゃんの海の秘宝もサイズ調整すれば三叉槍に付けて完了するし天候も操れたから大丈夫。後17枚程の書類に目を通す。
「あれ?珍しい…爺じゃなくて爺の第一夫人から依頼が来てる」
書類をひょいとつまみ上げる。書類にはデカデカと【感情を抑えるアクセサリーをイヤリング、ネックレス、ブレスレットの3点程求む】と書いていた。どしたの?第一夫人さん。
「なぁファントム?この書類どういう事?」
テレサと談義している所だが気になったので声をかける。
「どれで御座いますか?」
「コレ」
はらひらと書類を見せる。ファントムはあーと言う様な顔をした。
「それはですね…旦那様が魔界に居た際の式典でゼウス様が誑し込んでしまった方が何名か居らっしゃるのでそれを見ていた第一夫人様がヒステリックを起こしたのが原因かと思われます」
おい、爺何してんだよ。あの人が女心を分かってるとは思ってないけど誑し込む才能はすげぇからなぁ…第一夫人さん心労で倒れないかな?
「コレ早目に手を打つべきか?その式典からもう2週間程経つと思うけど?俺参加してないしその式典」
「今第一夫人様は部屋に籠りきりで食事もまともに取ってないそうですから早目にお贈りするべきかと…」
「つーか、その前に爺の性格どうにかした方が早いと思うんだけど?」
「全知全能の神に逆らえるものもご兄弟様くらいかと思うので難しい問題ですね」
頭が痛くなってきた。爺ホントに何してんの?取り敢えず第一夫人さんの件は後回しにしようか考えても頭が痛くなるだけだ。
「ファントム…バックヤードから青の小瓶取ってきてくれ」
「畏まりました」
ファントムがバックヤードに向かった。テレサはまだメデューサの姐さんの贈り物について考えてるみたいだな。そんな様子を見ていたらファントムが戻ってきた。
「これで御座いますか?」
「それそれ」
ファントムの持ってきた小瓶の蓋を開けて飲み干す。精神回復、疲労回復、頭痛止めの効果のある3種配合の回復薬だ。
「ありがとうファントム。頭が痛かったのが多少マシになった」
「左様で御座いますか…確かにゼウス様が誑かした人は数え切れないですけどそれでも寄り添う第一夫人様は凄い方で御座いますね」
神の国は一夫一妻制って訳では無いから仕方ないんだけど愛妻家の神が大半で爺みたいなのは稀な存在なんだよな。既婚者でも言い寄られてるハーデスのおっちゃんやポセイドンのおっちゃんとか居るけどあの人らは愛妻家の鑑だから何とも言えない。爺が特殊なんだよ…あの人はホントにどうにかした方がいいと思うんだけど。
「取り敢えず精神安定、感情起伏抑制、冷静になれるアクセサリーを所望してるから…ファントム、majolica series 007のアクセサリー取ってくんねぇ?」
またマスターキーをファントムに放り投げる。これは巷で言うなれば魔女が素となってるseriesでその作用も反作用も沢山ある。
「ファントム。007のネックレスとイヤリングとブレスレット取って持ってきて」
「畏まりました」
カチャカチャとショーウィンドウを開けてこれとそれとこれと確認してから持ってくるファントム。
「揃ってるな。ネックレスを安定剤仕様にしてイヤリングに鎮静作用を複合、ブレスレットには感情起伏の抑制を魔法で掛けるとして成功品になるか誰か試作に試したいんだが…」
ファントムはそれを聞くと、
「それでしたらミアとノイアーの2人で試してみたら宜しいかと思われますが?」
もしかしてとファントムに聞き返す。
「また情緒不安定期に入ったかあの2人」
幼い少女と少年のミアとノイアーは偶に不安定な時期が来る。厨二病とかなら分かるけど幼いのに情緒不安定になるの何でなの?
「今Lv幾らくらいの状態だ?」
「Lv4で御座います」
「ほぼ末期じゃねーかよ…その状態だと不眠幻覚幻聴が来てるな」
「そうで御座いますね…寝れない声がする何あれと怯えきっておりましたからもう少し上がっていたら発狂する手前でした」
はーっと溜息を吐く。
「ファントム…部下の情緒不安定期に入ってるなら報告してくれって言ったよな?」
「申し訳御座いません…監督不届きは認めます。ただあの2人は精神不安定期に入ると空元気になるので判断が難しいので御座います」
まぁ、心配かけたくないのは分かるけどさぁ。主人をもう少し頼ってくれても良いのに。
「明日2人に同じモノを付けて精神チェックするから頼んだ」
ファントムはお辞儀をして、
「畏まりました」
と言いテレサと談義に戻った。俺はテレサの持ってきたお茶を勝手に注ぐ…ん?ハーブティーか今日はローズヒップかな?ゴクリと飲みながら書類に目を通していく。何か殆どの書類婚約指輪関係なんだけど…何?今結婚ブームか何かか?
「ファントム?他の書類見たんだけど、今結婚ブームか何かか?」
「それは風牙様と雷牙様の婚約指輪の件が周りを囃し立ててる模様で御座います」
「げ?!アレそんなに効果あったのか?!」
「勿論です。旦那様特注品となれば話題沸騰になるのは必須で御座いますから。それに加えて高嶺の花を見事に落としたと触れ込みが回ってますからで御座いますね」
「わーお。アレそんなに宣伝効果あるとは思わなかったわ。アテナさんだったら広告塔になるのは分かるんだけどさ」
「アテナ様はアテナ様です。清廉で高貴な方で御座いますから勿論宣伝効果も抜群です」
さよですかとハーブティーを飲みながら他の書類にも目を通す事にした。