神様、ご馳走
老神龍と神龍を元の大きさに戻してから人型に戻った2人は送還の前に散策するとの事なので放置してルシエラとセーレの部屋に寄り食堂に向かう。
「セーレ、今日は一応無事に事が終えたことだから少しだけご馳走になるが良いか?」
「構いませんよ。イヴさんの料理は美味しいですし…魔界にもあんなに美味しい料理を作れる者は居ませんよ。ふふ」
とても嬉しそうに笑うセーレ。肩の荷が降りたのがとても良いのかご機嫌だ。
「そう言えばさ…あの時の条件ってサタンの魔王城にルシファー居る時どうなるんだ?」
「コチラに害意を持たなければ発動しません…って?!そう説明してくれたのロキ様じゃないですか!!」
「いやー…一応説明ではそう言ったけどさ?実際にあれ使う日が来るとは思ってなかった訳だしどうなんだろ?って思って」
「まぁ、魔界の魔王城に行けば分かりますよ…ルシファーさんはサタン様の近くから離れる事は早々ありませんし」
アイツはアイツでサタンにぞっこんなのね…まぁ、堕天してしまうくらいにハマったんだろな…サタンて詐欺師の才能でもあるんじゃね?と、ふと考えてしまった。
取り敢えず今はご飯かな?食堂に3人で着く。すると食堂と厨房を繋ぐ扉の前でイヴが待っていた。
「本日はセーレ様が美容にも気にしている様なので和の懐石料理のフルコースでございます。先付けに赤猪の山かけ、煮物に海鮮真薯のすまし汁、5種の旬のお造り、揚げ物に季節の野菜に自然薯のかき揚げと地鶏の鶏天、蒸し物に茶碗蒸し、強肴にフィレステーキに甘めの玉ねぎのソース添えて、蛸と胡瓜の酢の物、止め椀に玉ねぎと大根のお味噌、ご飯は五穀米でございますわ」
「一度にスラスラ言えるのは凄いが量が半端ない気もするんだが?」
「そんな事ございません。メイン以外は本当に箸休めになる物ばかりですから期待を裏切りませんわ。それではお持ちしてきます」
イヴは厨房に向かっていった。ルシエラがキラキラと楽しみ全開にしてる。セーレは食べれるの今の量?って顔してるな。まぁ、イヴの料理は美味いし待ってますか。
すると直ぐに厨房からカートを押してイヴが戻ってきた。先ずは前菜その他諸々だな。ルシエラはどれから食べようか凄く悩んでるみたいだ…ん?トマト料理以外もいけるのかルシエラ。
「ルシエラの好きなトマト料理は無いけど良いのか?」
「あ!はい!!コレはコレで美味しそうなので問題ありません」
そうか…それなら頂きますか。
「いただきます」
セーレとルシエラも、
「「いただきます」」
と手を合わせてから料理に手を付けて行く。んー…やっぱりイヴの料理は美味いしな。
ホッとする味の味噌汁を食べながらルシエラを見るとフィレステーキにかぶりついてる。いや、可愛いんだけど肉から行くのか。
「ルシエラ美味しいか?」
「はい!とっても!!」
「セーレはどうだ?」
「意外と箸が進んで困ってます。どれもとても美味しいので…特に酢の物が気に入りました!後は鶏天と自然薯のかき揚げが美味しいです!」
満足そうな笑顔を浮かべてるセーレ。
イヴはカートを押して次から次へと料理を運んでくる。綺麗にお皿を並べていくイヴ。
ルシエラはまだ礼儀作法が付いてないけど、セーレは公爵家だけあってか綺麗な所作だ。ルシエラ…肉は逃げないからもう少し咀嚼して飲め、喉に詰まるぞって見てたら喉に詰めたな…イヴに水を頼んでる。
「ルシエラ…食事は逃げないからゆっくり食え。セーレを少しは見習ったらどうだ?」
いきなり話を振られたからかセーレが「え?」と言う顔をしている。そして布巾で口の汚れが付いてないか確認してからこっちに話を振ってくる。
「それでしたらボクよりロキ様の方が適任ではありませんか?そんなに優雅に食べ物を食べれる人なんて早々に居ませんよ?」
イヴがセーレにアルコールを飲めるか前もって聞いてたからかセーレはワインを口休めに呑んでいる。
「俺だと見本にならねぇんだとさ…そんなに優雅に見えんの俺って?」
「「それは勿論!!」」
セーレとルシエラがハモった。お、おう?そうなのかと尻込みしてしまいそうだった。ルシエラは、
「セーレさんも分かりますよねロキ様の優雅さ…いや、優美さ!!」
「えぇ。魔界に来られた時に食事をしていた時なんて皆惚けてしまう程でしたから」
「「ねー」」
と顔を見合わせるルシエラとセーレ。よく分からん。
「兎に角、俺とまで言わないからせめてセーレ並に礼儀作法を叩き込ませないとなぁ…」
え?!とびっくりした顔で見てくるルシエラ。そしておずおずと手を挙げる。
「ロキ様…私ってそんなに礼儀作法を付けないといけないレベルなんですか?」
「レベルってか小さな子供レベルだぞ?さっきもステーキにかぶりついてたじゃないか?セーレは切り分けて小分けに食っていってたの見てただろ?箸もそんなに使う機会無い筈なのに綺麗に持ってるぞ?」
「「あ」」
と、またハモるルシエラとセーレ。少し気まずそうにセーレが口休めに呑んでいたワイングラスをそっと置いて説明してきた。
「これはその…ルシエラさんの所作云々ではなくてボクが健康食で日本食がダイエットとかに向いているって言うのを聞いたから結構な頻度で食べてたお陰で身に付いた作法ですからね?魔界に箸が使える人はそんなに居ないと思いますから誤解しないで下さいよ?」
フォローになってるのか分からないフォローをするセーレ。それでもルシエラの礼儀作法は教えないと…イヴかテレサ辺りに教わるべきか?え?でも、メイドや侍女に近い彼女達に礼儀作法って教えたっけ?って悩んでたら食事を運んでいたイヴが会話を聞いていたのか不思議そうな顔をしていた。
「どうした?イヴ」
「いえ、旦那様?私共は最低限の礼儀作法は身に付けておりますわよ?憶測ですが…先程私共に礼儀作法が備わっているのか考えていらしたでしょう?私共は旦那様から派生した下僕なので主に恥ずかしくない程度の礼儀作法なら身に付けております。ミアやノイアーはまだ未熟ですがキャリー迄でしたらほぼ完璧な礼儀作法を熟知してあると言っても過言ではありません」
マジか?!え?俺教えてないぞ礼儀作法。誰が教えたんた?
「誰が礼儀作法について指導したんだ?」
イヴに問いかける。
「ファントム様ですわ」
あ。そうか…それなら納得出来るわ。秘書としても完璧でメイド指導員に書類検査係としても有能だもんなファントム。じゃあ、ファントムにでも頼むか。取り敢えずご飯の続きだな。