神様、事の顛末
だからこうなる事は分かってたんだけど、いざ目の前にすると情けないよなコイツ。俺は中庭のガゼボに向かっていた。
なんで何でも自分の思い通りになるって思い込んでるんだコイツ?サタンが甘やかし過ぎたのか?
「ルシファー?お前そうなってどう思うよ?顔も爛れて身体も爛れて醜くなって…改心しようとは思うわねぇの?」
手鏡をルシファーの方に向けながらルシファーの今の姿を見せるとうぐぐぐと蹲りながらルシファーはブライト達を見る。
「美しいモノを持ちたいのが分からないのかキミ…ボクは天界一美しいと言われた天使族なんだぞ!!美しい者は美しいモノを持っていて当たり前なんだ!!クソ…クソ!!」
皮膚が爛れて見るも無惨な姿になっているルシファー。
「お前改心する気ねぇの?」
ロキは気になって問いかける。
「改心も何もボクは間違って居ないだろ!!何でこんな仕打ちされないといけないのさ!!」
「じゃあ、言っておくけどその状態30分も保たないから」
「…は?」
「爛れて爛れて爛れ落ちて最後死ぬぜ?」
「ボクが死ぬ?サタン様に寵愛された美しいボクが死ぬだって?」
「あぁ、だが救済処置はある」
「救済処置だって…?」
ルシファーは欺瞞の目を向ける。
「それはセーレに聞けよ」
ルシファーはセーレの方を向く。
「ルシファーさん…アナタが今後一切ブライトとボクに関わなければ条件付きですが…」
「それは一体なんなんだい?」
セーレの手に持つ首輪を見ているルシファー。
「解呪の首輪です…さっきの条件さえ飲んでくれれば呪いは発動しません。もしボクとブライトに関わろうと言う意思、行動があれば呪いは再発します。コレは思考を読み解く呪具なので少しでも考えたら貴方は爛れて死にます」
クソっと下唇を噛み締めるルシファー…それを見つめて応えを待つセーレ。
「それしか方法はないんだろぅ?」
ルシファーは諦めたかのように言う。セーレはこくりと頷き返す。
「爛れて死んでしまうくらいなら美しい子龍は諦めるさ…醜いのが一番嫌いなんでね」
セーレは解呪の首輪を渡す。ルシファーは受け取り首輪を付けると首輪は見えなくなってしまった。
「それで呪いの解呪は終わりです…爛れてしまった皮膚はロキ様が治してくれます」
ねっ?ロキ様?とコチラを見るセーレに頷き返す。
「てか、お前ホントに質悪くなったよな…堕天した影響か?取り敢えず『治癒』」
パーッと金色の粒子の光がルシファーを優しく包み傷を癒していく。
「キミに心配されるとはね…フン。欲望に満ちてるのは確かにあるかも知れないけど、創造主…絶対神の加護に居なくなったら思考が変わっただけさ」
何かタガが外れただけなのかね?まぁ、もうセーレの心配の種も無くなった事だし今日はお開きにしますか。
「セーレは俺が魔界に送るから泊まってけよな?ルシファーは帰るだろ?」
チッと舌打ちをしたルシファーはさっきまでと打って変わって清々しい顔をして言う。
「ボクはサタン様に慰めて貰うからもうこんな所にはいないさ。それじゃあね」
バサバサと飛び立って行くルシファー。その背中を見つめるセーレ…問題は解決したけど殆どねじ伏せる感じだったからセーレにはキツイのかもな。取り敢えず部屋に戻る様に促すロキ、それに従い部屋に戻るセーレとブライト。後で裁断室に居るであろうルシエラでも探してご飯にするか。今日はホントにご苦労様でしたね。そんなこんなで裁断室に居るであろうルシエラを探しに来たけど…あれ?居ない?
「あれ?ルシエラ此処に居ると思ったのに…『ルシエラ?今何処?』」
『あ、ロキ様?いえ、裁断室から中庭見えたので見てたんですけど…あの金と銀の子龍ってもしかして…』
『あー?そう言えば戻してなかったな。老神龍と神龍だぞ?』
『撫でに行っても良いですか?と言うかもうガゼボの近くで待機してました!』
『んじゃ、そっち戻るわ』
『はーい』
「転移魔法展開中庭」
しゅんと移動するとキラキラした目のルシエラが陰に待機していた。
「ルシエラー?そんなに遠くから見てないで近くに行けばいいだろ」
「あ!!ロキ様!!だって可愛いんだもん…」
頬を赤らめて言うルシエラ…もふもふ属性以外にも小動物属性持ちか?
「老神龍、神龍ちょっといいか?」
「何じゃ主よ」
「何ですか主?」
「ルシエラが子龍化したお前達に興味津々なんだわ…少し元に戻す前に遊んでやってくれね?」
「構わんぞ?」
「構いませんよ?」
パタパタとルシエラの周りに飛んでいく老神龍と神龍。パーッと満面の笑みを浮かべるルシエラ。
「か…可愛い…」
戯れながら撫で撫でしまくるルシエラ。
「嬢ちゃんくすぐったいぞ」
「くすぐったいですルシエラ様」
あはははって笑い転げる老神龍と神龍。
「ロキ様?どうやってミニ化してるんですか?元々20mくらいありましたよね?今じゃ40cmあるかないかくらいじゃないですか」
「魔法掛けてるからな。まだ戯れたいか?」
「あの…差し出がましい事言っても良いですか?」
「ルシエラの言う事は何でも聞くって毎回言ってんじゃん?何?どした?」
「この子龍の状態の鱗って貰えませんか?」
あー…デカい時の鱗って無駄にデカいから加工しにくいのかな?
「老神龍、神龍いいか?」
「「勿論」」
老神龍と神龍が身体を爪でポリポリと掻く。パラパラと数枚鱗が落ちる。
「ルシエラ全部回収していいぞ?何か加工品でも作りたいんだろ?」
「そうなんです。以前頂いた金の鱗と銀の鱗デカいから加工が難しくて…」
「構わないぞ?何作るのか気になるが、まぁ出来てからのお楽しみにしておくさ」
「ふふ、ロキ様にピッタリのモノを作るので期待してて下さい」
満面の笑みのルシエラ。兎に角飯にでもするかね?