神様、作戦実行
書斎で結界に入ったルシファーの位置を確認する。相変わらず裏庭の方から来んのかよ。アイツ腐っても元は天使族だろうが…いや、堕天したら普通の天使族とは違うから魔素が多い所からしか来れないのか?
まぁ、どうでもいいから思考放棄した。取り敢えず作戦を実行する。アイツの事だ…美しいのは自分、美しいモノは自分が所持して当然だと思ってるんだろな。そうは行くかよ。セーレに思念伝達する。
『セーレ?老神龍と神龍と合流したか?』
『あ、はい!なんかブライトには可哀想なんだけどこの2体美し過ぎませんか?』
『それが狙いなんだよ。セーレは美しい龍に好かれてるアピールだ』
『なんでそんなアピールするんですか?』
『アイツってナルシストだろ?しかも美しいモノは自分のモノで当然みたいな感じの』
『あー、何か残念なんですけどその通りですね』
『だから美しいモノに愛されるセーレを仕立てたって訳。ここまで理解は出来たか?』
『逆にそんな大役務まるのか怖いんですけど…』
『大丈夫。老神龍にも神龍にもちゃんと説明してるから取って食われるような事は無いぞ?』
『いえ!ロキ様を疑ってる訳では無いんですけど、ダメですね…啖呵切っておきながら怖いんです。ホントに平和な日常に戻ってくれるのかなって…』
『大丈夫だって。その為に渡した呪具があるだろ?言霊を乗せたら効き目抜群だから心配するな』
『分かりました!ボク頑張ります』
『俺近くの書斎で監視してるから何かあったらブライト通じて思念伝達してくれ』
『分かりました!』
「ふぅ、一先ず舞台は整った後はアイツが何考えてんのかだよな」
セーレを殺してまでブライトを奪うか?セーレを懐柔するって言うのは無理だろな…ブライトのみを連れ去る?有り得なくもないな。てか、良く無事で居られたなセーレとブライト。
結界内のルシファーの動向に目を瞠る。お?順調に中庭のガゼボの方に向かってるぽいな。
美しい老神龍と神龍だけてなく鳳凰と麒麟とかも出してたら良かったかな?でもアイツら気紛れてか気性荒い方だからな…あ、神虎出しても良かったかな?まぁいいか。中庭のガゼボでセーレとブライト、老神龍と神龍が戯れてる。いや、戯れてる様に見せてるだけなんだが…
その頃中庭のガゼボで、
「老神龍さん?」
セーレが不思議に思い声を掛ける。
「なんじゃ?」
「いえ、どうしてこんなに面倒臭い事引き受けて下さったんですか?」
「我らは主の言う事ならば何でも遂行するぞ?」
「何でも…ですか?」
「そこのブライトとか言う子龍もヌシの為なら何でもすると言う感じだがの」
「そうなのブライト?」
当然と言うみたいにキュイーと鳴くブライト。
「ふふ、ありがとうブライト」
セーレはブライトの頭を撫でる。
「そろそろ来るかの用心せい魔界の者」
老神龍を覗いていた顔を上げる。そこにふらふらとルシファーが歩いて来るのが見えた。こちらを瞠ると何かブツブツ言い始めたルシファー。セーレの周りにはブライトと老神龍と神龍が戯れる様に飛び回っている。ルシファーが口を開く。
「何でキサマ如きがそんなに美しい龍に好かれているんだ…美しいモノはボクのモノなんだよ!!」
セーレに取っかかってくるルシファー。だがそれを阻止するブライトに子龍化した老神龍と神龍。ちょっと言葉に出しては行けない暴言が老神龍から発せられてる。ピーッて伏せないといけない単語ばかりだ。
「何でだ!!何で邪魔するんだ!!」
飛びかかってくるブライト達を手で払いながらルシファーは激怒する。
「ボクは美しいんだ!!そこに居るべきなのはお前じゃないボクなんだ!!」
セーレに近付こうとするがそれをさせまいとするブライト達。
『老神龍ー?守備はどんな感じ?現場の声を聞かせてくれねぇ?』
ロキはのほほんと思念伝達で問いかける。
『主か。魔界の者に近付こうとしてるが子龍と我らで阻止してるとこじゃが、相手さんはちょいと頭に血が上りすぎてるようだの』
『セーレはどうしてる?』
『魔界の者は少しだけ戸惑って居たようだが相手の状態を見て逆に冷静になっておるようじゃ』
『ならセーレの行動次第だな…千里眼で様子見ておくから時が来たらそっち行くわ』
『了解じゃ主よ』
「ふー、やっぱりルシファー何か可笑しくなってるな。てか、何で頭に血が上ってんだ?アイツも式神欲しいのか?」
まぁ、どうでもいいやとまたしても思考放棄するロキ。一方中庭では、
「ルシファーさん!!何で貴方がブライトに執着するのかは分かりませんがブライトはボクの式神です!!ロキ様が授けて下さった式神です!!貴方になんか渡したりしません」
「名前はブライトって言うのか白くて美しい気高い名前じゃないか…貴様ソイツを此方に寄越せ。ボクにはサタン様の後ろ盾があるんだよ?君なんか直ぐに公爵家から廃嫡して貰う様に取り図ることも出来るんだよ?だってボクはサタン様に寵愛されてるんだから」
「そう言うと思ってサタン様から言質は取ってるんですよ…貴方に向けてね」
セーレは前持ってロキから預かられた水晶玉をとりだす。すると立体映像が現れる。
「ルシファー?何か勘違いしてるかも知んないけど言っておくよー?確かに君はボクの寵愛を受けてるよ。でも、キミなんかよりロキの頼み事の方が大事なんだよね…シトリーの件を知らないキミだから言えるんだけどボクの孤高の王子はロキなの。ロキに頼まれたから後はセーレに一任してるからねー?殺られたら慰めてあげるから帰ってきなよー?じゃあね」
プツンとそこで映像が消える。
「コレで分かりましたかルシファー様?」
わなわなわと震えるルシファー。
「何でですか!!サタン様!!貴方の寵愛を受けてるのはボクじゃないか!!何であんな奴如きがボクより優先されるんだよ!!」
「ルシファー様…もう何を言っても無駄みたいですね。使いたくは無かったんですが。ブライトおいで」
キュイーと鳴きながらセーレの肩に乗るブライト。
「【我は念ずる…かの者に相応の報いを】」
セーレは呪具に唱えた。するとルシファーは肌が爛れて行く。顔も身体も…
「聞く耳を持たなかったルシファー様が悪いんですからね…」
少しだけ哀れみの目を向けるセーレ。ロキは千里眼で見ていたのでそろそろ向かうかと書斎を出た。