神様、罠にかかった獲物
セーレが言って来た通り常に屋敷に対聖魔結界で覆って準備は万全にしておく。
強度はかなりあると思う。魔法なり魔術なり使えるやつから見たら結構やばいと感じるだろな…見れたらの話だが。
「一通り屋敷全体は囲えたな。後は老神龍か神龍でも出してたらいいかな?セーレは手を出さないで欲しい的な感じで言ってたけど…まぁ、あの2体ならいいか。顕現せよ老神龍、神龍」
ふわりと銀の光に金の粒子が混ざった様な風が舞い老神龍と神龍が現れた。老神龍はいつも通りだけど、神龍は女の姿形だった。
「神龍…お前もうその路線に決めてるのか?」
ロキが呆れながら見てる。いや、だって女体化するのサタンで辟易してたから…
「え?ルシエラ様もこっちが可愛いと言って居たので良いかなぁって思ってますがダメでしたか?」
「いや…お前がそれでいいなら別に口は出さねぇよ…老神龍、神龍お前達なら見て分かるように今この屋敷含め俺の敷地には対聖魔結界で覆ってるんだがどうしてか分かるか?」
因みに使い魔と主には意識共有はある。だが敢えて聞いておく必要があるからな。老神龍がスっと手を挙げる。
「虫けら駆除であろう?」
ふぉっふぉっふぉと笑うロマンスグレーな紳士。いや、端折り過ぎてるけど合ってるのがなんかなぁ…
「ボク達に何をさせるんですか?」
ワクワクと見てる神龍。
「今回は本人達がやりたいって言ってたから基本補助だな…逃すな殺れとは言わないが逃すな。俺は俺でやる事やるし」
「了解です」
と、神龍。ふむと何か考え込んでる老神龍。
「どうした老神龍?」
「いや、気になった点がありましてな…何故聖魔結界で覆う必要が?主に我と神龍が居て過剰戦力にしか見えなくての…少しだけ気になっておりました」
あー、それか。確かにパッと見過剰戦力だよな。だが、相手があのルシファーでしかも大人しくしてるとこがきな臭いってのもあって守りガチガチにしておこうとしてるだけなんだよな。
「まぁ、補助のてか欲しかったんだよ普通に…ルシエラは実戦不足だからな」
成程と理解したのか追及してこない老神龍。ルシエラにはまだ力が足りない。前に魔界に降りた時で実感した…セーレは呪具とかで敵無しだがルシエラは力が足りない。もう失いたくない。
「そんな訳で宜しくなお前ら」
「了解です」
「承知しましたぞ」
これでルシファー来ても問題はないだろ。ヤダなぁ…なんか決戦前みたいで。あんなのが中ボスでも戦いたくないわ。
はい。
老神龍達を召喚してから2日目でアイツが引っかかりました。あのクソルシファーな。
書斎で本を読んで気長に待ってたら結界に微反応有り。セーレのブライトに思念伝達。ルシエラは裁断室に籠ってるみたいだから今は声を掛けない。
『セーレ、お前の感知ネックレスどんな反応してる?』
『あ、何か熱を帯びてきてますけど…まさか?!』
『そのまさかだわ。敷地内にルシファーの反応有り。どうする?お前今客間だろ?』
『はい。ブライトと遊んでました』
『なら、15分くらいしたらその足でガゼボに行ってくんねぇ?中庭の』
『裏庭では無くて中庭のガゼボですか?』
『そ、中庭の方のガゼボ。こちとらちょっと遊ばせておくから』
『遊ばせておく…とはどういう事ですか?』
『まぁ、期待してて』
『分かりました…ロキ様がそう言うなら』
『任せておけ。見せ場はちゃんと残しておくからさ』
『ふふ、頼もしいですロキ様…では、ガゼボに向かいますね』
『了解』
書斎の脇にいる老神龍と神龍に声を掛ける。
「獲物が掛かったぞ…コチラは前もって言ってた作戦に出るけど平気か?」
「「勿論」」
「そうか。それじゃあ元の姿に戻す為にガゼボに行くぞ」
そう2人に声を掛けて部屋を出る。スタスタと歩いて向かう。セーレよりガゼボに近い書斎で待機してたので2~3分くらいで着いた。
「じゃあ前もって言ってた作戦に移るけど老神龍も神龍も怖くないのか?」
「抜かりありませぬぞ主よ?多少体積が変わるぐらい怖くともなんともありませぬ」
「ボクもです」
異論は無いみたいだな…それじゃあやりますか。
「一先ず元の姿に戻ってくれねぇか?」
「「承知しました」」
ふわりと金と銀の風が舞い2人は龍に戻った。
「んじゃ行くぞ?『幻想変形』」
金の粒子が2体を変化させる。大きさはブライト(体長40cm)程になった金と銀の子龍。
「ふむ。視界が何か変な感じもしますがなんとも言えない感じですな」
「確かに小さくなると視界が広いですね老」
パタパタ飛び回る神龍。
「作戦は脳内に入ってるか?2人とも」
「勿論です」
キラキラした笑顔で応える神龍。
「セーレ殿とブライト殿が来たら会話に混ざりながらセーレ殿の周りを飛んでいたら良いんですよね?獲物が来たら罵詈雑言を吐きながら」
くすくすと楽しそうに言う神龍。
「我はどんな罵詈雑言を吐いてどんな反応をするのかが見ものですがな」
ふぉっふぉっふぉっと笑う老神龍。
「そう。精神攻撃からのセーレの呪具の出番だ…んじゃそろそろセーレも来るだろうし話しておくから適当にしててくれ」
「「了解」」
『セーレ?こっちの準備は万全に終えたからもうガゼボ向かって良いぞ?』
『え?何してたんですか?』
『ちょっとした仕込み?老神龍と神龍が子龍で居るから適当に戯れててくれ』
『…………え?』
『戯れてるだけで良いから気にすんな』
『それならいいんですけど…ガゼボに参りますね』
『OK』
「老神龍と神龍、後は頼んだぞ?」
「必ず成し遂げてみせます」
神龍は気合い充分に言う。老神龍も、
「我も神龍と同じ心構えですぞ」
「それなら任せた。俺は書斎で結界の調整と誘導するから行くわ」
踵を返して老神龍と神龍を中庭のガゼボに残し書斎に戻った。