神様、不安を過ぎる朝
日差しがカーテンから覗くと同時に雲雀の様な声でルシエラが、
「ロキ様?おはようございます。何かこの感じ久しぶりで照れますね」
とロキの顔にギューッと抱き着くルシエラ。
「タップタップ…少し苦しいルシエラ」
と腕を解かせる。
「先程テレサに思念伝達致しましたので朝食は直ぐに出来るそうですよ」
そう言い微笑むルシエラ。
「流石だな…俺の全てを捧げた最高傑作は。ファントムとも連絡したのか?」
ロキはルシエラを見つめる。
「えぇ…ただ何か感涙されてしまいました。今日する事はここに纏めてますよ」
そう聞くとロキは起き上がり身支度をする。ルシエラも自分の服が此処にある事を思い出しているので一応カーテンで仕切り着替える。
馬鹿が付く程のカップルの2人だが一線は超えてはいない。夫婦になってからと決めていたからだ。
触れ合うくらいで満足してるとお互いにも分かってるからかもしれない。でも、馬鹿が付く程のカップルなので周りから見たら恥ずかしい限りなのだが…2人の知らない事である。
その日の夕方頃。
ルシエラが居ないタイミングを見計らったかの様にテレサがドアをノックをした。
「旦那様…宜しいでしょうか?」
ロキはなんだろうと思いながらドアに向かう。テレサが、
「ルシエラ様の様子が以前と若干違いましたので参りました」
と言う。どういう事だと思い話を聞くと、
「思念伝達は以前通りなのですが、ノイズと言うか何か違和感の様な…第3者が干渉するかのようなそんな感じでした…ファントムもそう申してましたので重要なお仕事は私から伝える様にと言付かって参りました」
どういう事だ?第3者が覗くと言うのが無理なのが思念伝達なのだが…そこでハッとする。
「テレサ…ルシエラは何処に居るか分かるか?」
嫌な気配がする。とても嫌な気配が…
「ルシエラ様でしたら先程裏庭のガゼボでお茶を…旦那様?!」
ロキは瞬時に転移魔法を使い裏庭のガゼボに向かった。予感が当たった。
「ルシファー…お前なんで此処に居やがる!!」
ギリッと唇を噛み締め睨んだ先に居たのは椅子にもたれ掛かり項垂れているルシエラとその前に居るルシフェル…いや、黒い翼のルシファーの姿だった。
「なんだい?その言いがかりは?ボクは『まだ』何もしてないよ?」
沸騰するかの様に頭に血が昇りそうだった。
「じゃあ、なんで魔界に居ねぇで天界の外れの此処に居んだよ!!」
ルシファーはケラケラ笑う。
「なんだい?そんなにこの姫さんにお熱なのかい?ボクに似せかけた出来損ないに?」
キレると思った。
いや、キレて逆に冷静になった。
「はっ?お前に似せかけた出来損ないだって?冗談はお前の存在だけにしとけよ。そいつは俺なんだよ?そんなのも分かんねぇのか?」
馬鹿にする様に言い放った。いや、本気で馬鹿にして言ったのがルシファーにも分かったらしく、
「キミ如きに馬鹿にされたくないなぁ〜…何処がキミなんだい?」
ルシファーは笑う。
そう、天使であった彼には分からないのだ。天使随一の美しい者でも神の御身を知らない…と言う事に。
「はったりじゃねぇ事見せてやるよ…」
ロキは付けていたアクセサリーを雑に外していき本来の神様状態になった。
黒髪で蒼い眼の整った顔ではなく白金の髪でヘテロクロミアの端正な顔の神々しい神本来の姿へ。
ルシファーがわなわなと声を震わせながら言う。
「な…なんでキミ如きがそんなに神々しいのさ!!」
ルシファーの矛先はロキに向かった。ロキの計算通り。
「だがら言ったろ?そいつは俺自身なんだよ、脳足りてんのか?高々神の模造品の天使族とは違うんだよ。そんなことも分からねぇのか?この前お前が襲ってきた時、健気にも俺の盾になるために庇ってくれてたんだわ。誰かさんと違って美しい限りだよな」
そう言い放つと漆黒の天使のルシファーはプルプルと震えている。
ルシファーがルシエラに手を伸ばそうとするがその手はロキに掴まれた。
「なっ?!あの距離をいつの間に!!」
ルシファーは驚いている。
「本来の魔力封じる魔装具はずしたんだからてめぇなんてハエより遅せぇよ」
片手でルシファーを抑えもう片手でルシエラに掛かってた邪気を取り払う。ただ寝てるだけだ…良かった。
「んで?てめぇはなんでこんな所に来たんだ?まさか自分の写し鏡が妬ましくて来たとかほざくんじゃねぇよな?勘違いにも甚だしい。どう見ても違うじゃねぇか…あほじゃねぇの」
ルシファーは怒り震える。
「貴様…キサマ!!殺し…?!」
ロキはルシファーに反転術式と全反撃をお見舞してやる。
「もう2度と来んな…そして堕ちろ!!」
術式に放り投げた。取り敢えず一安心。冥界か魔界の方に堕ちただろ。ルシエラが無事なのを見て安堵する。