神様、突然の来客
取り敢えず神狼と犬神の尻尾と耳を除けばほぼ人体化出来ていると見極めをつけそこでお開きとなった。
ルシエラは神狼と犬神とまだ遊ぶという事なので俺はアトリエの整頓その他諸々をする事にした。まだ送還してないと老神龍と神龍とファントムにも手伝って貰うつもりだ。テレサは業務に戻らせた。お茶の必要ないし。
「老神龍と神龍はそっちのケース開けてこの紙に書かれてるものだけ取り出してくんねぇ?」
紙とショーケースのスペアキーを渡す。老神龍が紙を見て少し怪訝な顔をした。
「主よ?此処に書かれてるものはどうなされるのか聞いても宜しいか?」
あー…うん。気になるよね?だって書かれてるものが呪具か解呪のアクセサリーだもんな。
「それな呪具の方はちょい魔界の方のヤツの注文なんだわ。んで解呪の方も同じ客」
実はコレってセーレからの初発注なんだが、最近俺の渡した式神の所為かファンに付きまとわれてるらしくその撃退法を一応サタンに聞いた所…
「ロキの所に確かそんな時に良いアクセサリー見た気がするよー?」
と、聞いたそうだ。確かにあるよ?あるけど何でセーレの初注文が呪具と解呪のアクセサリーなんだって?まぁ、これニコイチじゃないと相手が確実に死ぬからセット売りなんだよな。
「その相手とは魔界の者か?主よ」
「そうだけど?」
「ふむ。ならば大丈夫であろう」
他だったら何かあったのか?と老神龍を見たが老神龍は特に気にせず防呪手袋をして紙に書いてる指定したアクセサリーをコトンとカウンターに置いた。
ひとつはセーレの式神のブライト用の首輪型呪具と解呪のアクセサリー。
もうひとつはセーレ用の対人向けの呪具と解呪のアクセサリー。
「おー、ありがとうな老神龍」
老神龍が手袋を外しながら言う。
「いや、如何せん何故に呪具等を扱っていたのか気にはなっておったのだが取引先が魔界の者であれば何かとあるのだろう…主よ、主程の者なら間違った使い方はしないであろう?」
「心配してくれてただけか…当たり前だろ?俺はそこんとこ気を付けてるよ」
「ならば良い。してそれは誰が持って行くのか?」
「ん?俺よ?」
「主自ら行くのか?」
「勿論。初注文なんだから説明含め諸々しに行かないと」
「我らは今回は出番はなさそうですの」
老神龍は神龍の方に微笑みかけながら言う。神龍も嬉しそうに、
「そうですね老」
て、応えている。おじいちゃんと孫だなぁ…って眺めてる場合じゃねぇや。他にも用事はあるんだしやる事やらないとな。カウンターの下の棚からしたひび割れた海の秘宝を取り出す。あー…これは本当に無茶したんだなおっちゃん。
「ファントムこれは後で少し手直しするから他の発注書とかは?」
「それでしたら此方に…」
お畏れた名前は載ってないな…うん、何日かあれば終わるな。
「ありがとなファントムと老神龍と神龍」
「滅相も御座いません」
とファントム。
「主は使い魔使いが荒いから承知ですぞ」
と老神龍。
「ボクは老と一緒に作業出来たら嬉しいんで」
と神龍。
うん。俺って使用人と使い魔に恵まれてるよね…良い奴しか居ない。取り敢えず、作業に掛かりますかね。一先ず何から手を付けようか云々と悩んでたらファントムが察したのか、
「旦那様…此方に優先順位を纏めたファイルを作っておきました。参考になさって下されば幸いです」
「お、サンキュー。んーっと…コレとソレとアレはこうなって…んー?あ!老神龍と神龍帰りたいならいつでも送還するぞ?」
と、問いかけると老神龍も神龍もまだ待機しておくとの事。んー?でも多分する事ないと思うぞ?
そんなやり取りをしていたらアトリエのドアがチリンと鳴った。ん?今日予定の客なんて居たっけ?と、考えながら扉の方に目を遣るとセーレとペルセポネの姐さ…いや、今天界に居るって事はコレーの姐さんか?が居た。珍しい組み合わせだな。
「どうしたんすか姐さん?それにセーレも…お前天界迄飛べねぇって言ってなかったか?」
「く…苦しかった…ぜー…はー…いえ!取り敢えず逃げてきました!!」
何の事話してるんだセーレは?と思ってるとうふふふと微笑みながらコレーの姐さんが説明してくれた。
ファンの所為でサタンの城に匿って貰ってたセーレだったが相手が執拗な迄に追ってくるのでサタンがハーデスのおっちゃんにヘルプ。セーレが冥界のハーデスの元に訪れるも執拗に追ってくる変態。丁度冬の時期と言う事もありペルセポネの姐さんの術式で天界に転移魔法を展開し難を逃れて俺のアトリエに来たそうだ。
コレーの姐さんは前に渡した黒の棺に入ってたお土産のお礼も言いに行くついでとの事。そう言えばコレーの姐さんは転移魔法を使える1人だったな…忘れてた。
「へー。そう言う事か…お疲れ様だなセーレ」
結局テレサを呼びお茶の準備をして貰ってた。相当焦って急いでたんだろな、テレサの入れたカモミールティーをグイッと飲み干してた。
「コレーの姐さんもあざっす…何かお礼に要りますか?そこの辺りのなら姐さん向けっすよ?サービスします」
「あら?そうなの…うふふふ…じゃあ、この柘榴の実みたいに見えるペンダントトップとそれに合うチェーンを遠慮なく頂こうかしら?」
ふふっと妖艶な笑みを浮かべるコレーの姐さん。ハーデスのおっちゃんの嫁だけあって威圧感?魅力?があるな。
「姐さん…流石っすね。コレとコレは今回セーレの件でサービスにしておくっす!ハーデスのおっちゃんもこれ付けて戻ったら喜ぶと思うっすよ」
柘榴はハーデスのおっちゃんが天界に居たコレーの姐さんを攫って冥界に留めるために食わせた実なんだよな。最初は帰りたいと嫌がってた姐さんでも今では里帰りも出来るからか立派なハーデスのおっちゃんの嫁だ。
意外な訪問客が来たから先にこっちの用事を済ませるか…落ち着いた様子のセーレに詳細を聴く事にした。老神龍と神龍は掃除をしてくれるそうなので取り敢えずアトリエの片付けを頼んだ。ファントムは書類の整理。
「んで、その変態って誰か聴いてもいいのか?」
セーレはこくりと頷き応える。
「ルシファー様です」
「は?」
「だからルシファー様なんですってば…」
え?アイツ回復薬も効かない程の怪我してたんじゃなかったのか?
「アイツ怪我はどうしたんだよ?」
セーレが溜息混じりに応える。
「ロキ様がザガンさんとダンタリオンさんに回復薬等の作り方を指導していたじゃないですか?その時のロキ様が作った完全回復薬をサタン様が試しにルシファー様に使ったら治ったんですよ怪我…ホントにサタン様は周りの事考えてくれてるのか無いのか分からないですよ」
はー…と深い溜息を吐くセーレ。
「復活は分かったけどさ?何でブライトとセーレが執拗に追いかけられてんの?」
ブライトを撫でながら呟く。
「その神々しい式神はボクに相応しいとかなんとかぬかしやがったんですよ…ちっ」
相当ストレス溜まってんのかブライトも逆鱗がドス黒い。
「でも前にアイツ冥界に落とした時、普通に天界迄飛んできてたっぽいけど大丈夫なのかそこんとこ?」
テレサがおかわりのお茶を注いだのを受け取り一口飲んでからセーレが口を開く。
「あぁ、それならペルセポネ様が転移魔法を使ったので痕跡が残ってないとの事らしいです」
チラッとコレーの姐さんを見遣るとうふふふと妖艶に微笑むだけだった…姐さんは敵に回さないでおこう。