神様、特注品
翌日。
青々とした空でいい天気だった。老神龍を顕現し、ポセイドンのおっちゃんの所に行かせたので風牙と雷牙を待つだけだ。
チリン。
アトリエの扉の鈴が鳴る。風牙と雷牙達が来たようだ。ルナとアルテミスはアトリエ内に入ると周りをキラキラと目を輝かせて見ていた。
「ご来店ありがとうっす。本日の為に幾つかデザイン画の方用意してるんで良かったら見てくれ」
風牙と雷牙とルナとアルテミスにデザイン画を見せる。ざっと10枚ほど…するとルナが口を開く。
「どれも素敵ですわ…風牙さん本当に宜しいの?」
「勿論です。好きなのを選んで下さい」
微笑む美青年と美少女。雷牙も、
「アルテミスも好きなの選んで良いんだぜ」
「まぁ、本当に?」
此方も仲睦まじくしている。双子同士が惹かれるのって何かあるのかなぁと気になったので経緯を聞いてみた。
「お前らどうやってくっ付いたの?」
風牙と雷牙がぶはっと吹き出す。ルナとアルテミスはきょとんとしていた。
「ちょ!ロキさん!!何言うんですか?!」
「いや?単純に好奇心だよ?双子同士が惹かれるのって何かあるのかなぁって」
ルナとアルテミスはお互いに見詰めてまぁまぁと笑い出した。風牙と雷牙は照れている様に見える。そして風牙が口を開いた。
「新月の夜。月の女神である2人がゼウス神の前で神楽舞を踊るのは知っているか?」
「あー?昔は見た気はするな。それがどう繋がるんだ?」
「俺らもその時に剣舞を舞ってたんだよ」
「つまりはお互いに接点があったって事か」
ロキが頬をポリポリと掻きながら問いかける。するとルナが口を開く。
「えぇ、そうですわ。御二方共人気のある方なのに紳士的な対応でお互いに惹かれあっていったのですよ」
ねーっとアルテミスに微笑みかけるルナ。そこで雷牙が口を開く。
「いや、それはコッチのセリフだぜ?2人の人気がどんなもんか知らないだろ?」
ルナとアルテミスはまたきょとんとしていた。そしてくすくすと笑い始めアルテミスが言う。
「私達に初めて声を掛けて下さった殿方は風牙さんと雷牙さんだけですわよ?人気なんてそんな…」
俺が口を挟む。
「それって高嶺の花だから誰も声掛けれなかったんじゃねぇの?」
デザイン画を見繕いながら問いかける。するとルナとアルテミスはまたまたきょとんとしていた。前々から知ってたんだケド、ルナとアルテミスは箱入り娘なんだよねぇ。良く声掛けたな風牙と雷牙。
「その通りなんですよ!ルナさん、アルテミスさん。貴女達は知らなかっただけで僕達がどれだけ苦労したか…」
風牙が言う。多分苦労したのって、ルナとアルテミスの親御関係も入ってるんだろな。
「所でどれが気に入ったすか?」
俺は営業モードに戻る。ルナは百合のデザイン画、アルテミスは椿のデザイン画を選んだ。
「OK。俺は作業に入るけど…値段は特注品だけど、どちらも聖金貨10枚だ。風牙、雷牙?予算的にいけるか?」
「「勿論です」」
微笑む美青年2人。そして嬉しそうに笑う美少女2人。さてと、作業に入りますかね。
作業席に着いて必要なものを取り出していく。
「あ、ペアリングにしなくていいのか?」
「今回は婚約指輪なのでルナとアルテミスの分だけで良いですよ」
と風牙。
「結婚指輪は別って事か?」
風牙が答える。
「そういう事です」
んー。まぁ、手間はかかるけどそれはそれで収入になるからいいか。
では、作業開始しますかね。取り敢えず俺が作業に入る前に風牙と雷牙、ルナとアルテミスに聞いておく。
「良かったらアトリエ内を見て回って良いっすよ。ルナとアルテミスは始めてくるだろ此処?」
「えぇ…とても素敵ですわ。ね?アルテミス?」
アルテミスは頷き。
「本当に素敵ですわ。ジャンルも豊富にありますし…あら?コレ何処かで見たような?」
ショーケースの中のモノを見てアルテミスが呟く。俺は気になったので作業に入る前に4人の元へ歩いていく。
「ん?どれっすか?」
あぁ、コレか。
「それ、多分アテナさんが付けてたのを見たんじゃないすか?」
ぱぁっと微笑むルナとアルテミス。
「そうですわ!あの時に見たものですわ!ね、ルナ?」
ルナもうんうんと頷きながら、
「確かあの式典の時ですわよね?」
あの式典?何だそりゃ?そんなモノに俺参加してないぞ?
「その式典ていつあったんすか?」
ルナが言う。
「3日ほど前ですわよ?そういえばロキ様は見かけませんでしたわね?」
そりゃそうだよ…その時ちょうど魔界に行ってましたからね俺とルシエラ。爺、手紙くらい寄越せよな。
「俺その時、魔界で魔王の宴に付き合ってたわ…生誕祭に」
まぁまぁと驚くルナとアルテミス。風牙と雷牙も驚いていた。
「え?ロキさん普通に魔界に行けるんですか?」
風牙が聞いてくる。何でだ?他の神達も行ってるだろ?
「迎えがあったからな…普通に行ったよ?帰りは転移魔法使って帰って来たけどさ」
ルナとアルテミスがお互いに見合って言う。
「私達には無理ですわ…瘴気が強くて2時間も持たないと思われますの」
とルナが言う。え?確かに空気悪いってか重いけど…俺3日間居たぞ?しかも訓練とかしたりして。
「そこで何してたんですかロキさんは?」
雷牙が聞いてくる。
「んー?回復薬作ったり魔王を試す迷宮踏破に魔王の部下を魔王並のレベルに上げたりしたかな?最後に生誕祭だな」
皆が固まる。ん?何か変な事言ったか?
「何してるんですかロキさん…」
風牙が呆れて言う。続けて雷牙も、
「魔王の部下を魔王並のレベルに上げたりするって何なんですか…」
ルナとアルテミスは、
「「そんなに簡単に迷宮ってクリア出来るものなのですの?」」
ときょとんとしていた。そういえば半日も掛けて無いもんな迷宮踏破。
「多分俺が特殊なんじゃね?」
笑って誤魔化すロキ。その時、アトリエの扉のベルがチリンと鳴った。誰だろうと見るとロマンスグレーなおじ様…もとい老神龍だった。髪の毛が濡れてる。雨…じゃない、ポセイドンのおっちゃんの所に行ったからか。
「老神龍待ってろ、タオル取ってくるわ」
バックヤードからバスタオルを持って老神龍に渡す。風牙と雷牙とルナとアルテミスが誰?って顔をしていた。
「あれ?皆も知らなかったんだっけ?俺の使い魔である神獣の一角。ポセイドンのおっちゃんからも依頼があったから遣いに出してたんだわ」
「「「「え?彼が神獣?!」」」」
何で皆驚くの?まじまじと見始めた皆。風牙が、
「彼の本来の姿は何なんですか?」
「金色の神龍だよ?その孫も仕えてるぜ?」
その言葉を聞いた風牙と雷牙はゴクリと喉を鳴らし、
「神龍が2体も…」
と愕然としていた。他にも仕えてるのは今は言わない方がいいかな?
「作業前だし…本来の姿見たいか?」
皆がこくこくと頷いたので外に出る事にする。
老神龍はその前にとコソッと箱を渡してきた。多分海の秘宝でも入ってるのかな?受け取りカウンターの下に置く。老神龍を連れて皆と外に出る。
「老神龍元の姿に戻ってくれないか?」
「主も使い魔使いが荒い…まぁ、構いませぬよ。でも此処では少し狭かろう、裏庭に参ろう」
そう言う老神龍の提案に乗り裏庭に行く俺と風牙達4人。裏庭に着くなりふわりと金色の風を纏い神龍の姿に戻った老神龍。わぁと盛り上がる4人。
ルナとアルテミスはキラキラとしていて、
「とても美しいですわ!ね、アルテミス?」
アルテミスもうんうんと頷き、
「本当に素敵ですわ」
と言っていた。風牙と雷牙はぽかんとしていた。ついでに神龍も出してみるか。
「顕現せよ神獣神龍」
と、ロキが唱えるとふわりと銀色の風と共に銀色の神龍が現れた。
『主よ何用ですか…あっ!老も!!』
『神龍こないだ振り。老神龍とお前が揃えば圧巻だから喚んだんだわ』
『成程…納得です。ボク達見栄えは良いの分かってますから』
周りはぽかんとしていた。巨大な神龍2体揃えば圧巻だからかなぁ…そこでとある事を思い付いたロキ。
「あ、結婚祝い要る?」
突然の提案に付いていけていない風牙と雷牙とルナとアルテミス。
「此奴等の鱗…綺麗だと思わねぇ?」
そう、魔界でダンタリオンとザガンに褒美で渡した事を思い出したのだ。4人は顔を見合わせてこくこくと頷いたので、老神龍と神龍を見る。もう分かっていたのか身体を屈ませてくれていた。掌サイズの鱗を4枚ずつ貰い人型になって貰った。
まぁと黄色い声を上げるルナとアルテミス。ロマンスグレーな恰好良いおじ様ととても可愛い美少年になったからかな?
「コレ4人の各ペアずつお揃いの形にするな?何か象徴…あ、すまん。ちょいアイデア降りてきたわ」
ロキは風神雷神と月の象徴を合わせるのは無理だと判断したのでオリジナルを作る方向にした。さてと老神龍と神龍には接客でもして貰おうかな。