【閑話】話をしよう
俺の名前はロキ。何百柱と居る神の1柱。
ここ数ヶ月かけてある薬を造っていた…それは妻になる予定でもあるルシエラに記憶障害が有りうるかも知れない事があるかもだからだ。準備に越したことはない。
あれは数ヶ月前、ルシエラが天界以外にも行ってみたいと言うから魔界に降り立ったのが事の発端だ。
運悪くルシファーと出会した。
ルシエラが自分に似せてると思って怒りを買ったのだ…何処が似せてるだよ!俺の最高傑作をてめぇら模造品と一緒にすんな!!髪色しか似てねぇだろが!!
瞬時に放たれた砲撃を撃つルシファーに対してルシエラが咄嗟に俺の前に立ってルシファーの攻撃をもろに食らった。しかもそのまま天界迄の転移魔法を展開する間ずっと庇ってくれていたのだ。ルシファー…本当に忌々しい奴だ。
取り敢えず屋敷に戻るとルシエラを抱きかかえてすぐさま回復部屋に向かった…ルシエラの服がルシファーの攻撃を受けてボロボロだった。息はしているが意識がない…回復を掛けて外傷を治してからテレサを呼び服を着替えさせた。ファントムを呼び有りうる可能性が高い事を伝えて言った。
もしかしたら目を覚まさないかも知れない。目を覚ましても記憶障害を起こすかも知れない。自分はその対策の為に薬などを造るから引き篭る等々…
ファントムも「畏まりました。折角ルシエラ様の人体化が出来て間もないのに…悔しい限りです」とだけ言い仕事に行った。
俺は工房に向かった。回復薬はすぐ出来た…問題は記憶障害が起きた場合の対応と薬だ。起きていたら嫁殿と呼ぼう。ルシエラの記憶障害が無ければ「ロキ様?いつもの様に呼ばないなんて変ですよ」と返してくるだろう。何気無いいつもの会話が早くしたい…無反応なら確実に記憶障害だ。
薬作りは手間取った…副作用がどうしても出る。
ノイアーが奥様の為に痛覚耐性のある私が実験体になりますと申してきたのだが、痛覚耐性のあるノイアーですらどうしても痛みがあるらしい。痛覚耐性があるのに痛みが分かるって相当キツいものなんじゃないか?と頭を抱えた。
ミアが偶にノイアーの様子を見に来るが、泣きながらノイアーに抱きついていた。
これ以上は無理だなと思い、もう実験はしない事にした。
薬は未完成に近い完成品だ。何を言っているかって?そのまんまだ。未完成に近い完成品だ。
取り敢えず今日も様子を見に回復部屋に向かう。もうほぼ毎日の日課だ…起きていてくれと祈るばかりの日々になっていた。
俺の足音が廊下にコツンコツンと足音が響く。ルシエラ、今日こそは起きていてくれ…そう願いながらドアをコンコンと叩きドアノブに手をかける。
ルシエラが此方を見ていた。起きている!!いや、安心するのは早い…例の言葉を口にする。
「起きていたのか?嫁殿」
何て反応するのだろうか…神なのに神にも縋る思いで返答を待った。