神様、遺跡の真実
サタンが精神体に近いモノになっている事に気付いたロキだが対処法とやらが気になっていた。
「サタンー?対処法っての俺には教えてくんねぇの?」
サタンはんー?と考え込んで、
「ロキには無理だから教えても意味ないよー?」
俺には無理?どういう意味だ?
「何で無理って言いきれるんだよ」
「だって対処法は魔素を集めて吸収する。だもん」
魔素…あー、確かに無理だわ。俺のは魔素では無くて神気だもん。
「でも何処から魔素吸収すんだよ?」
「それは黒龍とアモンに頑張って貰う」
てへ♪っと笑うサタン。ちらっと黒龍とアモンを見る。
「食あたり起こすなよ?」
「酷くないロキってば?!」
「じゃあ、言い換えるけど…アモンは慣れてるかもだが黒龍は初体験だろ?優しくしてやれよ?」
「だからそれを酷いって言ってるんじゃんか!!オレ一応コレでも王様!!」
「だから念押ししてる」
「もー!!」
ルシエラがきょとんと此方を見ていた。話が気になったのだろう。
「ルシエラにはまだ早い話だぞ?」
「どういう意味ですかロキ様?」
説明嫌だ。軽く流すか…
「俺らは軽いスキンシップで済むから良いよねー」
ルシエラはきょとんとしていた。魔素吸収…つまり食うって事なんだよな。魔族によって方法は色々あるんだが、サタンは精気を吸う。それだけ。
「あ!」っとルシエラが思い出したかの様に言う。
「鬼姫さんと屍鬼さんが東の壁に見覚えのある文字を見たと申してましたよ」
鬼姫と屍鬼を見ると2人はお互いを見て頷く。
「此方でありんす御前様よ」
鬼姫が言う。東の壁?サタンが調べてた壁じゃねぇのか?
「此処に東洋の文字で『日出神の国より誠を示す者へ力を仰がん』でありんす。意味は分からないのでありんすが…」
鬼姫と屍鬼が黙り込んでしまった。いや、充分だろ?これサタンだけだと無理ゲーじゃね?詰むんじゃね?
「鬼姫?屍鬼?充分手柄だぞ。謎解きは俺らに任せとけ」
鬼姫と屍鬼はパァーっと明るくなりきゃっきゃとしていた。
取り敢えず日出神の国ねー。東洋にそんな話あったな…誠を示す者へってのは神の子の事かなぁ?俺の力で分かるのかな?
んー?と唸っていたらサタンが近付いていた。
「どしたのロキ?」
サタンが調べていた壁について語る。サタンもんー?と唸ってしまった。
「コレって俺の番かな?」
「それっぽいよね?読みなれない古代文字だと思ったら東洋の文字だったんだねー」
ふむと顎に手をやるロキ。
「取り敢えず俺の魔力流してみるぞ?」
「OK♪オレは神の国とも関係ないしー」
「いや、閻魔大王の遣いとか居るじゃんそこに」
鬼姫と屍鬼を指差す。
「彼女達貢ぎモノなのかなー?」
サタンが言う。彼女達は芸妓みたいなんだよな…昔見た資料のまんま。仕草は綺麗だし下品ではない。舞とか詩吟とか出来そう…後で聞いてみるか。取り敢えず此処開けますか。
ルシエラに鬼姫と屍鬼に何が出来るか聞いて貰っている間に東の壁に力を込めてみる。
ガタンと音がして壁が崩れると中には遊郭があった。うん、何で遊郭?
鬼姫と屍鬼が懐かしそうにキラキラと見ていた…人は居ないんだよ。遊郭の…座敷みたいな赤い柱の付いた建物があるんだよ。それを鬼姫と屍鬼は懐かしそうに見ていた。
「鬼姫?屍鬼?此処って見慣れている景色か?」
「わっち達は芸妓の魂が元ですから…此処は晴れ舞台でありんす」
と鬼姫。屍鬼も続けて言う。
「わっち達の舞は界隈でも有名な方で…界隈では初めての双子の太夫でありんしたよ?」
へーっと相槌を打つロキ。気になった事があったので聞いてみる事にした。
「お前らって神楽舞とかも出来んの?」
「神楽舞でありんすか?」
と鬼姫。続けて屍鬼も言う。
「神楽舞は子供の頃に習いましたでありんす…双子は忌み子か神聖かで別れてた時代でありんしたから…わっち達は神聖視されたお陰で神楽舞も踊れるのでありんす」
ふーん。ん?神聖視されていた?
「なぁ?今も踊れる神楽舞」
んーっとお互いを見てから此方を見る鬼姫と屍鬼。
「「この舞台でありんしたら…多分出来るでありんす」」
ふむ。なら見せて貰いますかな神楽舞を。鬼姫と屍鬼はきゃっきゃと舞台に向かった。
ルシエラとサタンが不思議そうに見ていた。アモン、黒龍、老神龍も此方に来た所で2人の準備が出来た模様。
しゃらんと神楽鈴を持った鬼姫と屍鬼が舞台の上に現れた。奉納の舞を踊るらしい。何処からとなく音楽が流れてきた。それに合わせて踊る鬼姫と屍鬼。
ほぅ…中々に見る価値のある物だ。
見蕩れている皆の前で舞う双子は神秘的で美しかった。
しゃらんと鈴の音が鳴るとしーんとなった…終わりのようだ。
鬼姫と屍鬼がハモって、
「「終わりでありんす」」
とぺこりとお辞儀をする。すると舞台の上空からキラキラと何かが降りてきた…オーブ?球体の様なソレは鬼姫と屍鬼の目の前にコトンと転がった。
「何でありんすか?コレは?」
鬼姫が言う。続けて屍鬼も言う。
「コレは…魔結晶でありんす」
ひょいと拾いあげる屍鬼。だが拾い上げる手をすり抜ける球体。サタンが興味深そうに見てからそれを拾い上げるとピッタリと手に収まったみたいだ。
「それが此処の宝みたいだな」
ぱちぱちと俺とルシエラは拍手する。コレで半分以上は解読出来てねぇ?サタンを見る。目が合った…サタンも理解していたのかこくりと頷き言う。
「残りは南の解読だけだよー頑張ろうね♪」
ニンマリ微笑むサタン。ロキも最後まで付き合うかと諦めながら微笑む。
東の壁の謎解きも終わったので皆で南の壁に向かう。
「此処ってマジで何なんだろうなサタン?」
「オレにもまだ分かんないんだケドー?」
「だよな…俺とてめぇが居ないとダメとかどんな無理ゲー?」
「無理ゲーって…ロキは何か楽しそうじゃん?」
「俺は謎解きは好きだからな…最初怠かったけど、最後まで付き合うさ」
「ありがとねロキ」
照れくさそうに頬をぽりぽりと掻くサタン。取り敢えず皆で南の壁に着いたのでサタンとアモンに任せる。
俺がルシエラと話しているとサタンが「あっ!!」と声をあげる。何だろうと話を聞こうとするとサタンはあたふたしてた。
「どうした?」
「ロキー…コレで終わりみたい」
「どういう意味だ?」
南の壁を指して言う。
「『汝、力を合わせた者の力を全部注がん』だもん。コレってロキと黒龍と老神龍とウィル、鬼姫とか屍鬼も数に入るのかなぁ?」
悩んでるサタン。あー…確かに悩むなそれ。でも、天井の文字を解読したのは黒龍達。東の壁の神楽舞は鬼姫達だからなぁ…
「ダメ元で全員の魔力込めてみるか?何かあるかもだしな」
サタンも「そうだねー…」と納得したみたいだ。ん?ルシエラはどうなんだろ?ルシエラ役に立ってないよな?
「サタン待ってくれ…ルシエラ何もしてねぇんだけど?」
「あー…確かに」
むむむと考え込むサタン。ルシエラを見る俺。ルシエラはきょとんとしていた。
「私以外の方の力を込めたら良いのではありませんかロキ様?」
ふむ…まぁ、物は試しだしな。そうするか。
「分かったルシエラ…サタンも良いだろ?」
「オレはイイよー?」
俺、サタン、アモン、ウィル・オ・ウィスプ、黒龍、老神龍、鬼姫、屍鬼が手を翳し魔力を込める。
すると映像の様なモノが現れた。鬼姫と屍鬼が目を見開き呟く。
「「主様…」」
え?コイツが閻魔大王?サタンを見るとあれ?って顔をしていた。
「鬼姫?屍鬼?コイツがお前らの元主?」
髭不精なオッサンを指す。サタンが口を開く。
「オレの記憶の限り彼は閻魔大王で間違いないよ…でも何で映像?」
「『良く謎を解いたお主達…鬼姫、屍鬼久しいな。お主達の力が尽きる前に見付かって良かった。大儀である』」
「あ?何かこのオッサンすんげぇムカつくんだが」
ちょっとイラッとしているロキ。それを傍目に鬼姫と屍鬼は懐かしそうに涙ぐみながら見ている。
「主様のご尊顔をまた相見えるとは思ってもなかったでありんす」
と鬼姫。屍鬼もそう思っていたのか涙ぐみながら言う。
「主様…わっち達は新しい主に従えども主様を忘れることはなかったでありんす」
「『2人には苦労をかけた。此方の情報不足で起動条件が中々揃わなかったのだ…』」
それって俺とサタンが揃わなかったら無理ゲーな事だよな?イラッとする。何か爺に似てるんだよなこの恰幅の良いオッサン。
「感動の所悪ぃんだけど…此処ってアンタが造ったのか?」
「『ワシの力で造られているのは確かだ。東洋に居るが、造ったのはワシだから情報は分かっておる』」
ふーん。聞きたい事でも聞いていくかねぇ。話を聞こうとするとサタンからストップがかかった。なんだ?
「どうしたサタン」
「んー?いやコレ閻魔大王で合ってるんだケド…何か違う」
「どういう意味だ?」
んーっと悩み込むサタン。俺は閻魔大王を見た事が無いのでなんとも言えない。サタンは親睦会等をしているので面識はある筈なんだが…
「違和感を感じるんだよー?何だろうコレ?」
サタンが分からない事は勿論俺に分かる訳無い。
鬼姫と屍鬼は映像に向かって話し掛けていた。あれ?コレって生中継?
ふと周りを見渡す。特に変わった所はない。何で此方の情報が分かるんだ?
「なぁ?サタン。コレって生中継?」
サタンも気付いていたのかこくりと頷き、
「そうっぽいんだよねー。でも今の閻魔大王こんなに痩せてない筈だよー?」
え?結構恰幅の良いオッサンに見えるんですけど?コレで痩せてるとかどんだけ…
「じゃあ、痩せてた時の映像を表現してるとかか?」
「そうかも知んないー」
はぁ?取り敢えず疑問を抱いていた事を聞いていくか。
「おいオッサン」
「『な!ワシに向かってオッサンとは何事か!!』」
「いや?面識ねぇし実際オッサンじゃん?所で此処何な訳?」
「『こほん。此処はサタンを試すべき試練の迷宮お主達は難関を越えし者である』」
「あー、それで疑問だったんだけど…此処、俺とサタンが揃わなかったら無理ゲーだったんすけど?そこん所ちょい詳しく宜しく」
閻魔大王と思わしき人物の映像は一瞬どういう事だと此方を見ていた。
「『お主は天の子か?』」
「俺か?一応天界に住んでるぞ?サタンとは友達だ」
「『天上人が魔界の王と友達とな…ふむ、変わった巡り合わせだの』」
「いや、そういうのいいから早く要点を言えよ」
「『む…お主の神気は只者では無いな。本当に只の天の子か?』」
「生まれも育ちも天界の普通の神だよオッサン」
「『ワシの思惑通りにいっているのは嬉しいが…お主は規格外だ!何だその力は!!』」
「まぁ、普段は魔力を抑えてるし引きこもりだしな…神でもマイナーだぞ俺?」
「『そんな神気を纏ってマイナーだと?笑わせるな!覇王以上の力量ではないか!』」
「なるつもりもそんな予定もねぇよ…んで、此処本当にサタンを試すだけに造ったのか?」
ロキは核心をつく。おかしい事だらけの迷宮だったからだ。
「『ふん。分かって言っておるだろお主…此処はサタンと最上の神の子が居らねば攻略は不可能、サタンも成長しないと言う迷宮だ』」
ふーん…なるほどね。んじゃ、次はサタンに聞いてみるか。
「サタン?さっきのオーブ?魔結晶?持って何か変わった事は?」
「あー、形態を保てるようになったよ?」
「それ、閻魔大王からの誕生日プレゼントみたいだぞ。良かったな」
くつくつと笑うロキ。その発言にサタンは豆鉄砲を食らった様な顔をしていた。
「え?オレの誕生日…え、えぇ?!忘れてたんだケドー!!」
「俺はちゃんと祝いの品持ってきてるぜ?ルシエラも一応用意してくれたみたいだしな」
ぽかんとしてるサタン。アモンが申し訳無さそうに言う。
「主様が嬉々として迷宮に行くと仰っていたので申し上げにくかったのです…すみません。帰ったらすぐに宴の準備が出来る様になっております」
「そういう事だろ閻魔大王さんよ?」
「『まさか見破られるとはな…お主とは一戦も交えたくないわ。左様、サタンは形状不安定になる時が多々ある。いつ悪魔に戻ってもおかしくないくらいにな。折角魔界も安定してきたのに王が精神体になってはダメだと思いいつかの誕生日迄にその魔結晶と鬼姫と屍鬼を遣わせれば良いと思っていたのだよ』」
途中から何かおかしいとは思ってたけどまさかこんな事になるとはな。