神様、西側の壁画
ルシエラが暇を持て余したのか鬼姫と屍鬼を誘って遊んでいた。ん?待て。何で此奴らもノイアーとミアみたいに重力操作出来てんだ?
「待て待て待て。お前らに聞きたい…魔力量からして何となく察していたが何で重力操作出来てんだよ?」
鬼姫と屍鬼は顔を見合わせて「「?」」としていた。
「これだよこれ」
そう言いロキはルシエラの飛んでいる所まで歩いて飛んで行く。そう、鬼姫と屍鬼は翼のないゴーレムなのに飛んでいたのだ。
「飛ぶことが不思議なのでありんすか?」
鬼姫が言う。
「神とか神獣なら出来るだろうがお前らはゴーレムだろ?おかしいだろ」
「「あぁ」」と2人は言う。
「元主様から飛べる技術を組み込んで造られているのでありんす」
屍鬼が言う…そう言う事か。ファントムとかは普通に何でも出来そうだな。俺ん所のヤツで飛べないのはイヴ位かな?キャリーは翼のあるモノに変身したら飛べそうだし。
神獣はどうだろ?殆ど跳べるヤツばかりだったよな…黒鼠くらいかな跳べないのって?
うーんって感じに考えてたら天井から黒龍と老神龍が降りて来た。解読が終わったらしい。俺は椅子を出して2人から話を聞く事にする。
「天井の文字は少ししか書かれていませんでしたので早めに終わったのですが老神龍と少し話し込んでいた故、遅くなりました」
と黒龍。老神龍を見ていると此方を見ていた。
「どうした老神龍?」
ふむと顎に手をやる老神龍、そして話し始める。
「黒龍と天井を見ていたのですが…内容が主と魔王殿に関する事の様でしたので気になっておったのです」
「ん?どういう意味だ?」
黒龍が言う。
「『天の子降りし時この地の王試される』でしたよ書かれていたのは」
ん?待て。それ直訳すると魔王を試す迷宮じゃねぇの此処?天の子が俺かルシエラだとするとこの地の王は魔王サタンじゃねぇかよ。えー、何か面倒臭くなってきたんだけど…
「そんな顔をなさるな主」
「あ?顔に出てたか?すまん…だってさ、俺関係ないんだぜ此処?」
「ですがヌシも関係ないとは言いきれないのですよ?」
黒龍が言ってくる。何でだ?
「コレはヌシの魔力を持った何か、或いはヌシが関係しないと発動しない迷宮なのですよ?」
んー?そう言えば俺のアクセサリー付けた後に此処をサタンが見付けたんだよな。神の子って他にも魔界に来てるヤツ居るけど、それは発動条件に達してないと?もしかしてあれか?神童が関わってくるのか?マジで辞めてくれよ…
今度は西側の壁の解読していたアモンが戻ってきた。何か顔色が悪い?
「どうしたアモン?」
「いえ、解読はしたのですが理解が出来なくて…面目ない」
「何が書いてあったんだ?」
アモンは口にする。
「『日の沈みし道。闇を守りし者の力を誇示せよ。汝認められし者ならば道は開かん』でした。私にはさっぱりで…」
あー、分かったわコレ。本当にサタン向けの迷宮だな此処。
「アモン?俺その意味分かったからサタン呼んで来てくんねぇかな?」
アモンは「?」となりながらサタンの元へと行く。サタンは解読を一旦切り上げて此方に来た。
「何かオレ呼ばれたみたいだケド…何ー?」
「サタン?てめぇウィル・オ・ウィスプと契約しただろ?喚んでみろよ」
「墓守?何で?」
説明怠いけど、気付いたから仕方ないよな。
「アモン、西側の壁の解読もう一度頼む」
アモンはえっ?!と此方を見ていた。だが、すぐに咳払いしてからアモンは言う。
「『日の沈みし道。闇を守りし者の力を誇示せよ。汝認められし者ならば道は開かん』でしたよ?ロキ殿は分かるのですか?」
サタンはそれを聞くとあー。と手をポンと叩く。
「なるほど♪そう言う意味で墓守ね」
「あほじゃなかったんだなサタン」
くつくつと笑うロキに膨れっ面のサタン。
「それくらいオレだって分かるよー?」
どういう事なのか分かってないアモンに説明する。
「最近サタンのヤツ最近ウィル・オ・ウィスプと契約しただろ?西の方角は日の沈む方角。ソコに闇を守りし…墓守と呼ばれているウィル・オ・ウィスプの出番て訳だ」
「あぁ、力を見せろと言う事ですか…これロキ殿が居なければ無理難題だったのでは?」
ん?何か既視感。さっき似たような事を黒龍と老神龍にも言われなかったっけ?
本当に何なの此処?俺とサタンが居ないと無理な迷宮でなんだよ?
考え込んでも仕方ないのでサタンが召喚するのを待つ…が、召喚の方法をサタンのヤツ忘れてやがった!!あほだろコイツ?!
「ファントム…出て来い」
影からお辞儀しながら出てくるファントム。
「此処に。如何なされましたか?」
「このあほに闇の眷属の召喚方法教えてやってくれ」
「旦那様…召喚も何もウィル・オ・ウィスプはこの前からサタン様の影に居ますよ?」
…は?
サタンを見る。サタンは気まずそうに視線を泳がせて居た。
「おい、あほ。てめぇ気付いてなかっただけかよ?!」
「精霊と契約なんて初めてなんだから仕方ないじゃん!!あの後から墓守見てないんだもん!!」
呆れ顔のロキ。
「取り敢えず呼べよ。契約の時に名前付けなかったのか?」
「あの時酔ってたからなぁ…ウィル。出てきて」
すると、ふわっとサタンの影からウィル・オ・ウィスプが笑いながら出てきた。
「かかか。ヌシもまだまだよの」
ファントムがはぁっと溜息吐いて言う。
「主いじめは辞めなさいと申したの貴方は…」
溜息吐いてるファントムとは対称的にウィル・オ・ウィスプは爆笑していた。
「かかか…いや、すまんすまん。揶揄うと面白くてついな」
「主を舐めるような事は辞めなさいウィル・オ・ウィスプ」
ファントムがそう言うとウィル・オ・ウィスプは爆笑から戻ってきた。
「楽しませてもらったぞサタンよ。それよりも何用じゃ?」
「あー、ウィル?この迷宮の攻略に力を借りたいんだケド…」
「迷宮?ふむ…」
壁の文字を読むウィル・オ・ウィスプ。そして内容を理解したのか告げる。
「了承した。手を貸せサタンよ」
サタンは「?」となりながらウィル・オ・ウィスプに近寄る。ウィル・オ・ウィスプがサタンの手をランタンを持つ手に合わせて、手を掲げランタンの光を壁に浴びせる。すると壁はすぅーっと消えて部屋が現れた。
「何なのコレ?」
サタンは現れた部屋の壁画を見て呟く。俺も見てみたがイマイチ分からなかった。ファントムとウィル・オ・ウィスプは何か分かったみたいだから聞いてみるか。
ファントムとウィル・オ・ウィスプを見ると懐かしいモノを見ている様子だった。
「ファントム、ウィル・オ・ウィスプ…何か浸っている所悪ぃが何だコレ?」
2人は頷き此方を見る。ファントムが先ず口を開く。
「旦那様、コレはまだ光と闇が別れて間もない時に描かれた壁画ですよ」
光と闇が別れて間もない?それって描くヤツ居なくねぇ?するとウィル・オ・ウィスプが言う。
「コレはワシが影絵…念写に近いもので描いたヤツじゃ」
ウィル・オ・ウィスプはランタンを掲げながら言う。作者はウィル・オ・ウィスプ?
「この時代はまだ魔族は原初の黒とか白と言った魔族では無く悪魔しか居ない頃での、夜会をしてはその様子を描いていたものじゃ」
懐かしみながら言うウィル・オ・ウィスプ。ん?悪魔と魔族の違いって何だ?その頃サタンは居なかったのか?
サタンを見るが手を挙げ首をふるふると横に振っている。
「なぁ、サタン?悪魔が魔族と称されるのって、てめぇが纏めあげたのがきっかけだよな?」
サタンはんー?と考え込んでしまった。
「オレも原初の黒とか赤達とは面識あるんだケド、何でオレが魔王になったのか覚えてないんだよねー。その頃って派閥とか無かったんだよー?それに黒と赤の方が力強いのにおかしいよね?」
原初の黒と赤とかって相当な力を持っているって聞いた事はあるが…そう言えば見た事ないな。サタンは知ってるのかな?
「サタン?俺、原初の黒とか赤とか名前は知ってるけど見た事無いんだが…何でだ?」
あぁ、とサタンは言う。
「彼等は精神体だから見た事なくて当たり前だよ」
どういう意味だ?サタンとは違うのか?サタンは言う。
「悪魔がどうやって魔族になるのか知らないんだよねロキは?受肉して実体化するんだよ?最近は受肉体が交配して魔族が増えているんだケドね?」
「じゃあ、最初に受肉したてめぇが魔王になったって事か?」
「それもあるケド、ちゃんと力を認められてなったんだからね?」
ふーん…なるほどね。サタンを見る、認められて王になったねー。視線に気付いたのかもじもじ照れているサタン。だからきめぇよ。
「サタンは話したのか原初の黒と赤とかと?」
「オレはあるよー?オレも原初の悪魔なんだから」
あ、マジか?知らなかったわ。
「てめぇ…本当はすげぇヤツだったんだな」
くつくつと笑うロキ。むーっと膨れるサタン。
「オレだってやる時はやるんだよー?」
「そう言う事にしておきますか王様?」
ウインクしてやるとキュンとしているサタン。此奴本当に俺の事好きだよな。
それはさておき…この壁画は何か意味してんのかな?サタンを見ても特に何も思っていない感じだからファントムかウィル・オ・ウィスプに聞くか…
「ファントム?この壁画意味あんの?」
「そうですね…ウィル・オ・ウィスプ、貴方は何か分かりましたか?」
「そうじゃの…此処に描かれてるのは原初の黒と白の宴じゃ」
そう言い目を細めるウィル・オ・ウィスプ。それが何か意味指してんのかなぁ?
ふーむ…壁画からは何か良いヒントは見付からなかった。悩む俺。
ルシエラは鬼姫と屍鬼と遊んでる。サタンは壁画を見て何か唸っていた。何か分かったのか?
「どうしたサタン?」
「あー、うん。何かコレ見覚えがあるってか何かあるんだよねー?」
「どういう意味だ?」
「…何だろう?この頃何かあったはずなんだよね」
どういう事だ?何かあったはず?この頃サタンも居たって事なのか?
「サタンも描かれているのか?」
ブツブツと何か思い出そうと呟いているサタン。俺は見守るかな。
んー?と唸っているサタン。何だ?何か思い出しそうなのか?
「サタン何か思い出したか?」
サタンは首をふるふると横に振る。でも、口を開くサタン。
「コレ。俺居るよ…」
「ほへ?!」
思わず変な声が出てしまった。
「何で分かったんだ?」
「コレ…この紋様」
何か絵柄が書かれていた。コレだけで分かったのか?
「コレが何だ?」
「俺の家紋」
「家紋?!魔族…いや?悪魔に家紋なんてあるのか?」
「オレは力を溜めていたから作ったんだよね♪」
「ふーん。黒と赤にも家紋があるのか?」
「彼等にはないよ」
「力は強いのにか?」
「強いんだケド…精神体から受肉体になりたがらないんだよ?」
闇を漂うのがいいのかね?アレ?魔族は戦闘狂じゃなかったっけ?
「悪魔は戦闘狂じゃねぇのか?」
「悪魔は気紛れだよー?自由気ままなんだ♪」
使い魔が増えたサタンを観察するか。魔眼と観察眼発動しながら唱える。
「『探知』」
んん?あれ?何だこの違和感?他を視る…俺らの反応は普通。黒龍と老神龍も普通。ファントムとウィル・オ・ウィスプも普通。アモンも変わらず…サタンの感覚だけがおかしい。
「神妙な顔なさってどうしたんですかロキ様?」
ルシエラが覗き込んでくる。
「あ、あぁ。ルシエラも観察眼もどき使ってみてくんねぇ?」
「観察眼ですか?分かりました」
むむっと唸ってから出来たみたいだ。
「ルシエラにはどう見える?」
「あれ?何かサタン様だけ変じゃありません?」
やっぱり気付いたか。ルシエラでも気付いたって事は…ファントム辺りも分かってるんだよな?
サタンを見る。
「サタン…てめぇ何か気が変だぞ?」
ん?って顔で此方を見るサタン。
「なんのコトー?」
「魔力量ってか存在感がおかしいんだが」
「ロキ様?コレって使い魔が増えたからじゃないですか?」
使い魔の力でレベルアップ…じゃないよな?あーだこーだ言ってても仕方ないので試してみますか。
「サタン?俺の使い魔と戦う?」
するとサタンはぶんぶんと首を横に振る。え?何で嫌なの?
「ロキの使い魔とか怖いからヤダ!!」
「怖くねぇって…試してみようぜ?」
それでも頑なに首をふるふると横に振っているサタン。
何でそんなに嫌がるんだ?此奴…何か分かってるから拒否ってるのか?
んー?と観察してある事に気付いたロキ。
「サタン…てめぇ精神体化していってないか?」
サタンはえへへと笑う。
「バレた?何か此処に来てから変なんだよね…何だろね此処」
いや!その前に!!
「いやいや…てめぇは平気なのかよ」
「何がー?」
サタンはきょとんとしている。
「その状態で居ても大丈夫なのかよって聞いてんだ」
「これ偶にあるから平気だよー?対処法もあるし♪」
何だよ…心配して損したじゃねぇかよ。てか、対処法て何なんだろ?気になるが放置しておく。