神様、双子のゴーレム
さて黒龍も混じって解読開始。俺は部屋の真ん中に立ち羅針盤を取り出して方角を見る…やっぱりか。
「サタンー?ちょい来て」
サタンに向かって来い来いと指図する。
「何ー?解読してるのにー」
「この部屋の間取りって言うのか?今気になったから羅針盤出して見てみたんだが…見てみろよ」
サタンが手元の羅針盤を覗き込んでくる。
「あれ?これ正確なんだよね?」
「てめぇはアホか?俺は万能な道具しか持たねーよ。壊れた羅針盤持っていてどうする」
ふーんと黙り込むサタン。羅針盤は磁場さえ狂って無ければ方角が分かるのは皆も知っている事だろうが俺の羅針盤は磁場が狂っていても何故か正確な位置を示す。この建物…迷宮の方角が気になったから出してみたら正確に東西南北と部屋の壁を示していた。
「コレって何か意味あるのかなぁロキ?」
「さぁな。てめぇらが古代文字読めたら分かるんじゃね」
「それなら早く解かないとね♪」
アモンの元へ走っていくサタン。黒龍は天井にも文字が書かれていたと言う事に気付いていたらしく、其方の解読をして来ると飛んだ。サタンとアモンも分かれて解読すると言っていた。
北の壁の文字を解読したサタンが俺とルシエラの元へ来た。俺は暇なので椅子と机とティーセットを出して寛いで居た。それを見て膨れるサタン。
「悪かった悪かった、取り敢えずこれ飲め」
サタンの好きなセイロンティーにスコーンを差し出す。ルシエラが椅子を引く。
「もー…北の壁の解読済んだよ。今から言うからどういう意味か考えてくれない?」
サタンはセイロンティーを一口飲んでスコーンにブルベリージャムとクロテッドクリームを付け食べてから言う。
「んっとね…「北は王の住処也。足を向けて眠る事禁ずる。王への敬意を示して拝み進むが良い」コレってどういう意味か分かる?」
アホか?サタンはアホなのか?
「てめぇあほだろ?王はてめぇだあほ。北側…北壁の方角には王城があるだろうが」
あーっと手をポンと叩くサタン。
「てか!あほあほ言わないでよロキー!!」
「あほにあほと言って何が悪い」
そう言うとスコーンを一口サイズにしてジャムに付けて食べてから紅茶を飲むロキ。サタンも紅茶を飲んでいる。ルシエラ?ルシエラはご飯食べてるよ?
黒龍と一緒に上の天井部分に飛んでいた老神龍が此方に来る。老神龍には俺の魔石を投げ渡す。受け取りパキッと割る老神龍。金色の魔力が充満する…サタンが先に気付いたのか聞いてくる。
「ねー?ロキ?この魔力ってロキのだよね…疲れ取れて最高なんだけどー」
年寄りか此奴?いや、アモンもビックリした表情で此方を見ていた。魔族って疲れ溜まってるのか?
「この魔石疲れ取れんのか?俺疲れねぇから分かんねぇんだけど」
「かなり効果あるよー?オレもアモンも働き詰めで疲れてたからバッチリ効いてる」
「主よ?主は分からぬのに我らに渡してくれていたのか?」
老神龍が不思議そうに此方を見る。
「いや、魔力補給出来るとしか認知してなかった」
「ロキって不思議だよねー?オレもロキには敵わないケド、ロキって神龍2体も仕えてるんしょ?よく魔力持つね」
「まぁ、魔力量は半端ないと思ってる」
確かに俺は身体能力も魔力量も他を抜いてずば抜けている。何でだろうな?
サタンと先程解読した北側の壁について討論する。
「サタンが居るんだから北壁何とかなるんじゃねぇの?何か無かったか」
サタンはんーっと考えてから、そう言えばと話し始める。
「壁を一通り見たんだケドー…取っ手みたいなのがあったよ?」
「王に敬意を示し通れだったよな?王…それってサタンだろ?サタン本人だとどうなるんだ?」
「さぁ?」
机と椅子、ティーセットを収納袋にいれて北壁に向かう。サタンがこっちこっちと言うので見ると真ん中に取っ手がある。鍵穴は…無いな。
「サタン?魔力通してみろよ」
「え?ヤダ」
「何でだよ?!」
「何かありそうだからー?」
「つべこべ言わずに試しにやれ」
仕方ないなぁっといった感じで渋々サタンが取っ手に手をやり魔力を通す。
カキン。
「何か開いたよロキ?」
「やっぱり魔王本人だと簡単に開く仕様なのか?」
ギィーと扉になった壁を開けると、また四方形の部屋がある。今度の部屋には煌びやかな祭壇があり、黒と白のレースで縁取られ赤いカーペットで彩られた祭壇には【何かが】あった。遠目には分からないので近寄ろうとすると部屋の両端、右と左の壁から人型のゴーレム…しかも和装姿で角の生えた右側の人型は右の半分が白髪で左の半分が黒髪。もう1人は逆の髪の毛をした少女達が薙刀の様な物を持って現れた。
「汝は悪しき者かえ?」
右側の少女が言う。ロキはその問いに、
「悪意はないから悪しき者ではないかな?」
と応える。次は左の少女が、
「汝、王の秘宝が欲しき者かえ?」
と言う。その問いにろきは、
「欲しいと言うか魔王本人が居るから其奴に聞いてくんねぇ?」
クイッとサタンを指す。えっ?!オレ?みたいな表情のサタン。
「「魔王様…?」」
2人が顔を見合わせてからサタンへと近寄る。
「王よ…貴方は魔王サタン様なのでありんすか?」
跪く少女たち。
「オレ、一応肩書き魔王でサタンだケド、君ら知らないよー?」
少女達は顔を見合わせて「まさか」とか「何かあったのでは」と2人で言い合い結論が出たみたいだ。
「…いえ、でも幾年、幾百年待ったかいがありんす。王よわっち達と秘宝を手に入れてくだしゃんせ!何卒お願いでありんす」
困った顔でこちらを見るサタン。困ったからって俺を見るなよ…俺にも分かんねぇんだから。
和装姿の少女達が此方を見遣る。そして俺の事をジーッと見てる。なんだ?何か顔に付いてるか?
「オレー、永年魔王として君臨してるケド…君らのコトはホントに知らないよー?」
そうサタンが言い放つと少女達はまた見向かって「何が不都合でもあったのでありんすか?」とか「本当にそうかも知れないでありんす」と小声で話している。
「あ、そう言えば名乗るのを忘れてありんした。わっちは鬼姫。左に居るのが屍鬼でありんす…どうぞお見知りおきを」
サタンの前に跪く2人。サタンが「えー?これどうすんの?」って顔で見てくる。知るか…あ?待てよ。
「サタンてめぇは使い魔1体だろ?此奴らも仲間にしたらいいんじゃね?」
ポンと手を叩くサタン。
「でも、ゴーレムなんでしょ?」
「普通のゴーレムはこんなに流暢に喋れないし意思もない…希少価値だぞ?」
「だよねー?オレもこんなゴーレム見コトないよー」
「多分強ぇだろから使い魔にしろよ」
鬼姫が手を挙げて述べる。
「わっち達は王に仕える者でありんす」
屍鬼が続けて言う。
「わっち達は永き昔に東方の方から遣わされましたのでありんすが手違いか、或いは故意があってか此処に幽閉されてありんした」
「「貴方を待つ為に」」
2人揃って言う。
「サタン?ここまで忠義見せてるんだから使い魔にしろよ」
「んー…そうだね♪良いよ。鬼姫と屍鬼?契約するにはどうしたらいいの?」
鬼姫が言う。
「背中の魔回路に魔力を注いで下しゃんせ」
「OK♪鬼姫、屍鬼背中向けて」
「「はい、主様」」
そう言うと2人の背中の左の心臓側に手を当てるサタン。黒い魔力がぶわっとして吸収されていく。
「サタン平気かー?」
収納袋からスポーツドリンクを取り出しサタンに渡す。魔力を多く使いすぎたのか座り込みぐでっているサタン。
「あの子ら魔力持ち過ぎ…疲れたぁ…」
じゃあ、今日はここ迄にしておくかな。時計見ると夜だし。
「サタンこの部屋で今夜過ごすぞ?」
「ロキと寝れるの?!」
「あほか?俺はルシエラと寝るわ」
不貞腐れるサタン。
「でも、同じ部屋で休める…フフ」
きめぇなコイツ。アモンと老神龍と黒龍をルシエラに呼びに行ってもらった。俺?今からこの部屋を快適空間にするんだよ。
サタンは黒龍に色々聞いてた。うん、色々。
「黒龍って美青年だよねー?夜伽は規則外ー?」
あほだ此奴。俺はルシエラを呼び、出していたテーブルと椅子との横にベッド等を出して寝る前の準備をしていた。
「ルシエラ?ホットミルクに蜂蜜入れてみろよ?よく寝れるぜ」
「ロキ様!私が寝ないの分かって言ってるでしょ!!」
くつくつと笑うロキ。頬を膨らませるルシエラ。
サタン達は収納袋にベッドを入れて来て無かったらしく困った様子だったので予備のベッドを貸してやった。アモンは主と同じベッドは使えないと言う事らしく寝袋で寝るらしい。
そういえばサタンは黒龍を送還しないのか?
「おい、サタン。黒龍を送還しないのか?」
「…やり方わかんない」
てへっと笑うサタン。
「想像するだけで帰るべき場所に帰るぞ?」
そこで黒龍が手を挙げる。
「我は元々流浪して居た身。帰るべき場所等とうの昔にないのだが…」
あー?そういう時どうなるんだっけ?老神龍に聞いてみる。
「そういった場合は仕えてる者の亜空間に飛ばされる筈ですよ主よ」
「だ、そうだサタン。帰してやれば?」
「えー?今晩は添い寝して貰うー♪」
黒龍は少し困った顔をしてから、
「主がそう言うのであれば良いですよ。ですが此方の姿で…」
黒龍はそう言うと黒い風を纏い元の龍の姿に戻ってベッドに寄り添った。
「あー!黒龍ってば酷くないー?」
ぷんぷんと膨れっ面のサタン。貞操の危機でも感じたか黒龍?
それにしても今日は変な収穫だったな。黒龍と鬼姫と屍鬼をサタンがGETした。何なんだろこの迷宮?取り敢えずルシエラに膝枕して貰っていたら眠くなってきたので考えるのは明日にしよう。