神様、遺跡改め迷宮
ダンタリオンとザガンに別れを告げて、サタンとルシエラと玄関先まで一緒に歩く。ザガンとダンタリオンには先程貸した武器をそのまま与えてやった。ザガンがとても喜んでいたなぁ…
「てかさー?ロキ使い魔なんて居たの?オレ知らなかったんだけどー?」
「あ?てめぇに見せても仕方ねぇじゃんか?」
「そうですよサタン様ー。私も知らなかったんですから」
少し膨れっ面のルシエラ。いや、隠してたつもり無いんだけどな?
「所でダンタリオンとザガンはこの後の予定は何か言ってたのか?」
「彼等はレベルが馬鹿みたいに上がったからか魔力量も増えたみたいでポーション作りに勤しんでくれるってー」
「まぁ…あれだけ上がれば効率も良くなるし、てめぇも嬉しいわな」
くつくつと笑うロキ。そうこうしている内に玄関先に着いた。アモンが居るので今度はちゃんと告げる。
「アモン?前に飛竜に乗せてもらった手前悪いんだが俺もこの姿だとルシエラと同じ様に空を飛べるぞ?」
アモンはえっ?!と驚いて此方を見る。
「でしたら飛竜に乗って行くのは辞めましょう。私も飛びます」
アモンが獣人の姿になり背中から翼を広げる。何かグリフォンみたいだな。サタンも翼を広げる。俺は魔法の応用で浮遊してついて行くだけ。
「では行きましょう」
アモンが先頭切ってくれる。続いてサタン、俺、ルシエラと続く。
「ルシエラー?聞いてなかったんだが、お前もレベルが上がっただろ?」
「んー、多分上がってますよー?何でですか?」
「じゃあ、魔鉱糸作れるんじゃね」
「魔鉱糸?って何ですか?」
「魔力と鉱石の糸だから魔鉱糸。普通の糸よりも丈夫で絹よりも高級品だ」
「ロキ様の作る物ってその魔鉱糸で作られてるから特別なんですか?」
「まぁ、それもあるな。因みにサタンの着てる服の殆どは魔鉱糸の上物だ」
「ロキ様は見ただけで分かるんですよね…私には違いなんて分かりませんよ?」
「ルシエラ?魔力量上がったんだから俺に更に近付いたんだぞ?意味分かるか?」
「千里眼もどきの様に観察眼も出来る…ですか?」
「流石俺の最高傑作。ドンピシャだ」
「帰ったら教えてくださいよ!!」
嬉しそうなルシエラ。レベル上げして良かったな。
「勿論だ」
サタンが翼を翻して此方に来た。
「ロキー?ロキって服も作れたの?魔鉱糸の話してたけどー?」
「あ?てめぇは専門の職人居るだろ?」
「ロキのオリジナル衣装着たい♪それにロキの魔力に包み込まれるなんて…あぁ、そんな幸福感を味わいたい」
頬を赤らめるな、きめぇよ。
「面倒臭い。きめぇ。断る」
「えー?良いじゃんー」
「俺は最近はルシエラにしか作ってないから嫌だ」
「ちぇー」
そう言うとルシエラがえっ?!と驚いて此方を見る。
「ロキ様…今まで頂いていた服はもしかして…」
「ん?俺特製の魔鉱糸の服だぞ?」
サーっと血の気が引いてるルシエラ…絹より高級品て言ったからか?
「ルシエラは値段とか気にしなくて良いんだぞー?」
「そうではなくて…何度も言ってますがロキ様の感覚おかしいです!!」
いや?そんな事言われてもなぁ…まぁ、いいや。アモンに今どの辺まで来ているのか聞くかな。
「アモン?今どの辺だ?」
「そうですね…3分の2は飛んできましたよ」
そうか。楽しみだなぁ…あの文字だらけの迷宮。何があるのやら。
そうこう話したりしていると残りの3分の1も飛んでこれた。あー、此処だ此処。アモンが降下して行くので俺もルシエラもサタンも降りていく。あれ?何か雰囲気が違う?
「アモン?前来た時こんな感じだったっけ?」
アモンも不思議に思ったのか、
「いいえ、何か違います」
サタンはよく分かって無いみたいで、
「どうしたのー?2人して」
「あ?いや、この前来た時と明らかに雰囲気が違うんだよ。てめぇは初めて来ただろうから分かんねぇかもだが」
ルシエラの方を見て、この前の呪符を渡すようにする。
「ロキ様ー?何か変な感じですね」
「ルシエラでも分かるか?これは何かがある」
呪符の能力を確認。うん。大丈夫かな?ルシエラに再び渡す。
「ロキー?此処開けたのロキなんだよねー?」
「まぁな、魔力通したらカキンって開いたぞ」
「多分ソレが原因じゃない?」
サタンは入り口辺りを指す。有象無象から魔物までウヨウヨと居た。えー?何で?
「迷宮ならちゃんと閉めていかないと、魔物の巣窟になるの目に見えてんじゃん…ロキって偶に抜けてるよねー?」
うっせぇー、忘れてただけじゃねぇかよ。どうするかなこれ。
「なぁ、焼き尽くしてもいいか?糞うぜぇ」
「オレは構わないよー」
サタンは飄々と言う。続けてアモンも、
「主が仰るのですから構いません」
OKが出たので一掃しますか。
「『黒炎葬』」
そう唱えて幾つか黒い炎球を出す。先ず有象無象の方に1つ投げる。ジュワっと灰化する有象無象。次に魔物の群れに大きめの炎球を投げる。魔物の阿鼻叫喚が聴こえるが無視する。暫くすると静かになって灰しか残っていない。
「取り敢えず魔物の反応はこれで消えたぞ?」
ルシエラがジト目で見てくる。ん?どうした?
「ロキ様…それさっき私が模倣させられた魔法ですよね?」
「あぁ、そうだが?」
「こんな威力あるなんて知りませんでしたけど!!」
「まぁ、炎系の上位魔法だからな。大抵のモノは消し炭になるよ?」
「何でそんな物騒な魔法教えるんですか!!」
「だって、ルシエラ基礎は出来てるんだし上位魔法使っていかないと」
親指を立ててグッとする。
「初歩からでいいんですよー!!」
ぽかぽかと叩いてくるルシエラ。可愛い。
「いざとなったら使えば良いんだから気にすんな」
「うーーー」
納得してない様子のルシエラ。まぁ、他の危険な魔法も教えるけどね?取り敢えず迷宮の入り口に手をやる。あー…やっぱり中にも居たか。炎球を放り投げて閉める。サタンとアモンが此方を見る。
「あー。中にも居たから蒸し焼きにしてる」
はぁと溜息を吐く2柱。中は四方形の部屋だったはずだからすぐ終わる筈。阿鼻叫喚は聞こえてこないので魔力探知で確認する。うん、0になったな。
「もう入れるぜ?」
「ロキー?今度からは気を付けてよ?」
溜息混じりに言うサタン。いや、前は偶忘れてただけだから良いじゃん?
「分かってるって。んじゃ、ルシエラ行くか」
ルシエラの手を取り中に進むロキ。それに続いてサタンとアモンが付いてくる。中の事は此奴らに任せるか。
中に入ると黒い消し炭…もとい、元魔物の痕。んー?中は特に変わってないな。少し離れただけで魔物の巣窟化するのは勘弁して欲しい。
サタンも中に入り周りを見渡す。若干暗いので光の魔法を使う。
「『点灯』。これで見えるよなサタン?」
光魔法で周りが明るくなる。
「あ、うん♪ありがとうー。んーっと…確かに魔族の古代文字だね♪待っててー」
サタンはアモンを呼び復唱している。俺にはさっぱりだ。ルシエラを見ると上の一点を見詰めてる。
「ルシエラどした?」
「あ、ロキ様。あの上にあんなモノありましたっけ?」
ルシエラは上を指す。あんなモノ?俺も上を見る…待て。何で龍が居る?しかも龍の息吹使おうとしてないか?
「サタン!アモン伏せろ!!『魔法反射』」
サタンとアモン。俺とルシエラの周りに防護壁を掛けて龍の息吹も相殺する魔法を唱える。
「『息吹解除』」
いきなり声を掛けられたサタンとアモンが此方を見る。
「ロキー?中には魔物居ないって言ってなかったー?」
サタンが膨れて言う。いや、コイツ…気配遮断してたんだから気付かねぇよ。
「探知魔法に引っかからない様に隠れてたんだよコイツ…どうするかなぁ」
あ、目には目を歯には歯を龍には龍をって事で老神龍出すか。人型で送還したし。
「顕現せよ神獣老神龍」
老神龍が人型で現れた。老神龍は何事かと此方を見てから上を見る。ふむふむと考え込んで龍語で話しかけている。
『何をしている黒龍?』
え?知り合い?しかも名持ち?
『老こそ何故此処に居る?ヌシは天上に住んでいたのではあるまいか?』
『我が主が召喚したから居るだけだ…お主よ、主に何かしたのか?』
片眉を上げて言う老神龍。黒龍と呼ばれた龍は此方を見てから言う。
『住処に良さそうな所に入ってきた者が居たから威嚇しただけだ…老の主なのか?その神々しい者は』
『あぁ、我と神龍も仕えておるぞ』
『あの小僧もか…老よ、変わったな』
黒龍は天井から降り立ち老神龍の前に立つ。黒い光を放ち人型になる黒龍。黒髪金眼の美青年が立っている。
「先程は済まなかった老神龍の主よ」
そう言い頭を下げる黒龍。
「あー?別にいいぜ?てか、龍語でも分かるよ俺?」
「その他の者は分からぬだろう?」
サタンとアモンの方を見ると「?」って感じで居た。ルシエラは分かっていたみたいだな。
「ロキー?その人?龍?誰ー?」
サタンが問い掛ける。
「老神龍の知り合いみたいだぞ?そこん所は詳しく老神龍」
急に話を振るが特に気にもせず話をしてくれる老神龍。
「此奴は我等と同じ神龍ですが我らとは逆に位置する龍族で闇の化身みたいなモノですな」
ふーんと考える。闇の化身ねー。んー…ん?サタンって使い魔って居たっけ?サタンに聞くか。
「サタン?お前使い魔居る?配下じゃなくて」
「配下じゃなくて使い魔?居ないよー?」
黒龍に向き合う。
「お前誰かに仕えてたりする?」
「いいえ?我は独りで流浪しておりましたよ」
「ならそこに居る魔王に仕えてやってくれねぇ?」
「魔王?此奴が?」
黒龍はまじまじとサタンの周りを回りながら見ている。
「どうだ?ダメか?」
「いいえ、魔力の質、量共に申し分は無いのですが…其方よりは劣りますね」
「俺と比べたら可哀想だ」
くつくつと笑うロキ。黒龍は察したのか頷き、
「使役の契約をしますか。流浪の旅も楽しかったのですが誰かに仕えるも一興。其方手を貸せ」
サタンに向けて黒龍は言う。サタンは手を出すと、黒龍はサタンの掌に印を書き何かを唱える。するとぶわっと黒い風が舞う。
「サタン初使い魔おめでとう」
パチパチと手を叩くロキ。えっ?!て顔で此方を見るサタン。
「今ので出来たのー?」
「そうだぜ?てめぇも龍族仕えれて格が上がったんじゃね?」
「どういう事ー?」
「龍種は上位種の使い魔なんだよ。しかも名持ち。希少な上に仕えるのは珍しい…俺は2体って異例なんだが1体でも希少価値なんだよ」
「ふーん…まぁ、美青年が仕えてるって何か良いね♪」
「てめぇはそこで選ぶのか?」
呆れて聞き返してしまうロキ。
「違うよー!!イケてないよりもイケてる方が良いじゃん!!」
そんなものかね?まぁ、いいや。取り敢えず解読してもらわねぇと…ん?黒龍って魔族の言葉分かるのかな?
「黒龍?お前古代文字読める?」
「読めますよ?何か御座いましたか?」
「この部屋の解読手伝ってくんねぇ?」
「暇潰しには良いですね。構わないですよ」
協力者ゲット!!